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短編集 恋の卵

透き通る青 2

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 週末、飛行機に乗る。
 ホテルに予約を入れる。
 急に予約した旅行だったけれど、神様は僕に味方した。
 かといって、彼女はすぐに見つからない。
 むしろ現地にたどりついてから、僕は困惑した。
 有名な観光地なので彼女の行き先を絞れないし、キャンセルしていたら僕自身が失恋旅行をしているみたいだ。
 適当にふらふらと観光して歩き、こんな遠くまで来たのにバカみたいだなぁって笑いたくなって、それなりに美味しいものを食べてホテルに戻った。
 シャワーを浴びてふて寝をするつもりが、寝る時間が早すぎて全く睡魔がやってこない。
 結局は寝つけず、服を着直してラウンジ・バーに向かった。
 一杯飲んでから寝よう。
 そう思ったのだ。

 夜景は綺麗だった。
 旅先の解放感も手伝って灯りに見惚れてしまう。
 窓から外が見える席で、ゆったりとカクテルを飲む。
 口の中にパッと広がるアルコールの熱が、ほのかに喉を焼いた。
 小さな光がもれてくるあの窓の一つ一つに、誰か知らない人の生活があるのだと思うと、失恋したばかりの彼女に見せてあげたくなった。

 笑っている人もいるだろう。
 泣いている人もいるだろう。
 それでもあの明かりが灯った部屋で、名前も知らない誰かが生きている。
 そのことが彼女の心を慰めてくれそうな気がした。
 僕も酔っているのだろう。
 そんな感傷に浸って、少し泣きたくなった。

 その時、隣に人が座った。
 不意に目の前に置かれたブルーハワイの鮮やかな青が、僕を一気に現実に引き戻す。
 驚いて横を見ると、彼女だった。
 すっかり酔っているらしく、目元も手元も紅に色づいている。
「一杯おごるから、少し付き合ってよ」 
 今まで遠くから見つめるだけだった彼女が、僕に向かって微笑んでいた。

 これは夢なのだろうか?
 憧れていた彼女が、隣に座って僕だけを見ている。

 ふわふわした甘ったるい口調だった。
 好きな色、好きな食べ物、好きな本。
 少しろれつの回らない話し方で、好きなものばかり並べる。
 意外に僕と好きなものが重なっていて、話の途切れはなかったけれど、彼女は僕を通して自分の悲しみを見ていた。
 悲しいとか辛いとかそう言った気持ちを埋めるために、思いつく限りの逃避をしているようだ。
 アレも好き、コレも好き、そんな風に言いながらも、だけど男を見る目はないんだよねって。
 今までの自分自身を否定するような言葉をポツンと漏らすから、僕は次第に寂しくなっていく。
 数えきれないぐらい好きなものの話をしているのに、一番好きなものを聞いたらきっと、彼女は泣きだしてしまうだろう。
 ここにいるのは僕で、彼女の愛していた彼ではないから、ごめんしか言葉が浮かばなくて、そのごめんをアルコールと一緒に飲みこんだ。

 すっかり出来上がった彼女を部屋まで送っていった。
 おやすみと言って扉の前で別れようとしたら、服の袖をつかまれた。
 一人にしないで、なんて言われると、断り方を忘れた。
 ここで僕が背中を向ければ、彼女はきっと泣いてしまうだろう。
 彼女を一人残してしまうと、僕自身もきっと泣きたくなる。
 旅先で、酔った勢いで、別れた彼氏の代わりで、それでいいのかもしれない。

 そこから先は夢も現も混ざり合う、朧のような時間だった。
 なめらかな肌を手のひらでなぞる。
 すがりつく腕に、その身体を抱きしめた。
 キスをされて、キスを返した。
 ねだられて、それに応えた。

 名前を聞いたら、キスで封じられた。
 愛称は知っている。
 あの喫茶店で彼氏が呼んでいたから。
 でも、それを彼女には言えない。
 ただの怪しいストーカーになってしまう。
 違うの? と問いかけられても、こんなところまで追いかけてきた僕に否定する言葉はない。
 通りすがりの僕には呼び名も与えられなくて、当然ながら僕の名前も聞かれなくて。
 それが悔しくて、今はいない彼氏を思いだし、ひどく妬けてしかたなかった。

 もっとちょうだい。激しく愛して。
 そんな言葉で僕をあおり立てる彼女を、僕は無心で突き上げる。
 言葉を奪うように舌をからめあえば、触れ合う肌が火傷しそうに熱い。
 淫靡に濡れた音が響く。
 白い肌は欲情に色づいて、乱れた髪も綺麗だった。
 今の僕に望まれているのは、一夜の夢のように消えることだけ。

 好きだとか愛してるとか抱きたいとか、今の彼女には何を言っても届かない。
 彼女が求めるままに、ただ、激しく抱いた。
 せつな的に壊れた関係を結ぶというより、かたくなな彼女の心の壁を壊したかった。
 怪しいス行動をしてる僕だけど、君を一人になんてしないから。
 一夜限りの夢にしたがる彼女の願いを消し去りたくて、僕の気持ちを彼女の中に吐き出した。

 いつの間に眠っていたのだろう。
 気がつくと朝が来ていた。
 ボーっとした頭で、隣にいる彼女を見る。
 昨日の今日だ。
 一夜限りの関係を強く望んでいたから、置き去りにされるのを覚悟していたけれど、迷子の子供のような顔で僕を見ていた。

 思わず微笑む。
 カーテンの隙間から差し込む光はまぶしいほどで、彼女の裸身を照らしていた。
 昨夜の名残が肌を彩り、無数の花びらが散ったように見える。
 うるむ瞳は今にも泣きだしそうで、こぼれ落ちる寸前の朝露みたいに綺麗だ。

「おはようがいいかな? これからよろしくがいいかな?」

 右手をのばして触れると、彼女は手のひらにそっと頬を寄せてきた。
 言葉なんていらないぐらい、優しいぬくもりだった。
 そのやわらかな手触りに、僕は泣かないでほしいと思う。

 ため息に自分の心をなぞらえて、昨夜は泣きそうに見えたけれど。
 彼女は見つめるたびに、生まれたての朝の空気を感じる。

 そう。
 彼女の色はいつも、透明な青。

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