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短編集 恋の卵

透明な青

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「ため息って何色かしら?」

 きっと濁った灰色に違いない。
 だから返事は封じる。
 絵筆でなぞるみたいに、そっと、唇で唇に触れる。

 探るようなやわらかさで、忍び込んでくる舌先。
 心の奥底まで探るような動きはどこか戸惑いがちで、かといってつかみ損ねてしまいそうな弱々しさはなく、私の中に踏み込む一瞬を探しているようだった。
 触れ合った肌が暖かくて、少し泣きたくなる。

 本当は、別の人とくるはずだった。
 半年付き合った人が、まさか既婚者だったなんて。
 あっさり別れることはできたけれど、計画していた旅行はキャンセルできない時期になっていた。

 初めて訪れる場所だから、楽しみにしていたのだ。
 違約金だけ払うのも悔しかったから、勢いで飛行機に乗った。
 失恋旅行だからって自分に言い訳して、ホテルのラウンジで飲んだ。
 たまたま隣にいた人と話がはずんで、部屋に送ってちょうだいとからんだのは私。
 扉の前で「おやすみ」なんて紳士な態度をとるから、思わずその服の袖をつかんだ。

 もちろん、彼は戸惑っていたけれど。
 一人にしないでって言ってみた。
 独りきりで泣きたくなかった。
 帰さないための言葉を探したけど、他には何も言えなくなってしまってうつ向いたら、そっと頭を優しくなでてくれた。

 セミスウィートの部屋に、彼は足を踏み入れた。
 いい人かどうかだなんて本当はわからない。
 どうせ私には男を見る目はないのだ。
 バカみたいだけど、酔った弾みにしてしまいたかった。
 キスをしたら、キスを返してくれる優しさに、そのまますがりつく。
 
 このまま抱きしめて。

 言葉にださなかった願いが聞こえたように、男の腕が私を抱いた。
 最初は戸惑っているようだったけれど、次第に力がこもってくる。
 触れる手のひらが熱い。

 もつれるようにして、二人してベッドに倒れ込んだ。
 奥まで入り込み突き上げる固さは、別れた彼とは違ってやけどしそうな熱を持っていた。
 別れた彼はいつも性急で、滑らかに動く手はいつもひんやりとしていた。
 だから、別れた彼に愛されていると思っていたのは、勘違いだったと身体で理解してしまう。

 もっとちょうだい。激しく愛して。
 想い出ごとバラバラに壊れたい。
 恥ずかしい言葉を、酔った振りしてたくさん吐き出す。
 だって、いきずりのこの人の熱は、身体の芯から溶けそうに熱い。
 どこか無心に似た一途さがあったから、胸に愛しさがわき上がる。
 酔っているせいかもしれないけれど、愛されていると勘違いしてしまいそうだった。

 名前を聞かれたけれど、キスでごまかした。
 どこに住んでいるかなんて、旅先だから必要ない。
 朝が来る前に、さよならしましょう。
 どうせ、一夜限りの夢だから。

 目を覚ますと、男はまだいた。
 いつの間に眠っていたのか、それすらも定かではなかった。
 すやすやと子供のように健やかに眠っていて、思わず見いってしまう。
 昨夜の痴態が嘘のように、無垢な寝顔だった。
 身体の芯に熱が残っていて動きたくないのもあったけれど、このまま置き去りにしたらまた泣いてしまいそうだった。
 脱ぎ散らかしたままの服も、乱れきった髪も、この人には似合わない。

 すうっと男の目が開いた。
 目覚めたばかりだと言うのに、透き通った瞳をしていた。
 生まれたばかりの太陽の光をあびて、輝いていた。
 どこにいるのかわからなかったのだろう。
 ほんの少し戸惑ったようなまなざしが、私を見つけるとすぐにキラキラとした笑顔に変わった。

「おはようがいいかな? これからよろしくがいいかな?」

 右手がそっと伸びてきて、私の頬に触れる。
 胸が震えて、言葉がうまく出てこない。
 黙ることしかできなくて、もどかしかった。
 泣き虫の子供に戻ったみたいだ。
 優しくなでる手のぬくもりに、涙がこぼれそうになってぐっと唇を引き結ぶ。
 ため息に色はないけど……そう言って彼は微笑んだ。

「君の色は、透明な青」


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