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短編集 ちょっぴり異世界

毛づくろいは突然に!

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 俺はいったい、どうすればいいのだ?

 ダンガーは身を固くすることしかできない。
 腹の上に乗っている少女を突き放すこともできず、内心は動揺しまくっていた。
 少女としか思えない小さな体格なのに、ガタイのいい成人獣人(♂)を吹き飛ばすほどの恐るべき怪力をしていたので、脳内が盛大に混乱中なのだ。
 いきなり体当たりを食らってひっくり返り、床に押し倒されたままの背中が冷たい。
 後頭部をしたたかに打ちつけたので、目の前に星が飛んでいた。

 いったい、どうしてこうなった?

 チカチカする意識の中で、何とか出来事を振り返る。
 星雲から星雲を渡る宇宙航行の途中、救難信号を出している脱出ポットを発見して救助した。
 長年、運び屋として生計を立てていたが、この辺りではあまり見たことのない形状をしているので、頭を悩ませたのは確かだ。
 宇宙嵐で空間が歪み、異なる星雲とつながるスポットができる偶然もあるから、そこから流れてきたのかもしれない。
 光沢があり光が当たるとシルバーに輝く卵型のカプセルから、製造星と登録番号から出所を調べる必要があった。

 しかし、すぐに思いなおした。
 詮索はとにかく後だ。
 船乗りとして救助したのだから、まずは生存確認の義務がある。
 そう思って脱出ポットに近づき、手をかけようとした途端。
 パカリと卵型カプセルが左右に割れて、中から少女が飛び出してきたのだ。
 弾丸の勢いでズドンと腹に体当たりを食らい、あっけなく吹き飛ばされたダンガーはガツンと後頭部を強打する。
 目の前を無数の星がまたたき、身動きがとれなくなってしまった。
 そして今に至る。

 ダンガーは獣人である。
 ジャッカル族の獣頭が雄々しい。
 つり上がった三白眼と鋭い牙がのぞく大きな口が特徴的で、全身を豊かな毛が覆っていた。
 人族と同じく衣服をまとい二足歩行をしているが、ジャッカル族は見た目が凶悪なので、せめて衣服で親近感を持ってもらいたかったりする。
 平和な生活をしている婦女子から怖がられる凶悪な面構えであると、ジャッカル族の男ならば自覚を持っているのだ。

 しかし体当たりをしてきた少女は怖がりもせず、ダンガーの腹の上でくつろぎながら、不思議そうに周囲を観察していた。
 おうとつの少ないツルンとした顔立ちながら目鼻立ちは整い、長い銀髪がふわふわと背中で揺れている。
 体温が低いのか触れ合った肌がひんやりとしていた。
 フリルやレースがふんだんに使われた淡い色のドレスはやわらかく、身じろぎするたびに甘い花の香りがした。

 赤いルビーのような瞳にうつる自分の顔から、ダンガーは目をそらす。
 我ながら怖い顔だ。自覚はあるが我ながら見たくない顔だ。
 しかし口の大きく裂けた毛深い顔なので、幸いなことに動揺は表情に出にくい。

「俺の上からどけろ」と少女に言ってやりたいが、大きな声を出して怯えられるのも、急に泣かれるのもごめんだった。
 同族の婦女子にすら遠巻きにされ、そっと目をそらされるのが日常だから、未知数すぎて触るもの初めてだ。
 こんなに小さくて、かわいらしくて、くりくりした目の生き物に、いまだかつて近づいたことがない。
 そう、見た目通りというべきか似合わないというべきか微妙な話だが、ダンカーは男女交際すらしたことのないヘタレだった。

 助けを求めて近くにいる部下を見たが、内心狼狽しまくっているダンガーを遠巻きに見ているだけだ。
 部下たちもダンガーと同じくもてないジャッカル族の男たちだから、女子供に怖がられることに慣れ過ぎている。
 未知数の美少女は危険物。
 心の中はエマージェンシー。
 挙動不審のまま壁際までじりじりと下がっていた。

 畜生、誰かどうにかしてくれ!
 声にならない悲鳴をあげかけたとき、少女がふわりと小首をかしげた。

「そなたは人間か? ずいぶんフカフカしておるが、名はなんと申す?」

 こいつ、いいところのお嬢か?
 ヤバイ、よけいにどう対応すればいいのかわからない。
 ヘルプ・ミー!!

 仰々しい物言いに、ダンガーの怯えが強まった。
 心の中で救助を求めたけれど応えてくれるものはなく、部下たちは遠巻きのまま手を合わせていた。
 声なき声が聞こえた。
 自助努力奨励。
 女の子を泣かせるぐらいなら、ボスが泣いてくださいと。
 顔つきは怖くても、心の繊細な男たちであった。
 薄情者! などと罵詈雑言を思い浮かべながら、ダンガーは心の中で涙を流す。

「面白い顔じゃの♪ かぶり物ではないのか?」
 少女が手を伸ばしてペタペタと顔を珍しそうに触るので、脳が爆発しそうになる。
 ヒンヤリやわらかな手が耳からほほ、頬から喉へと、ふかふかした毛並みをなで続ける。
 本物のようだと触りまくり、その流れのまま襟元に手をかける。
 ふぉぉぉぉぉ~っと心の中で叫びまわってされるがままだったダンガーも、さすがに危ない気配を感じて細い手首をつかんだ。

「やいやい! お嬢! 調子に乗ってると、全身を毛づくろいしちまうぜ!」
 うがぁ! と吠える勢いで恫喝し、これでもかと口を大きく開けて威嚇する。
「想像できないような恥ずかしいことも俺は平気だからな! 泣いたってやめてやらないぞ!」

 どうだ怖いだろう、ちくしょうめ!
 内心では泣かれた図を想像してビビりまくっていたが、毛深い顔は想定以上に凶悪な面構えになり、部下たちは心の中で拍手を送る。
 ボス、顔が本当に怖いっすよ、最高にがんばってるっすよ、と。

 しかし、少女はぽうっと頬を染めた。
「……毛づくろい、とな……? なんと情熱的な……」
 ダンガーの襟もとから手を離し、もじもじと身を震わせ恥じらっている。
「恥ずかしいことといえば愛の交わりであろう? なんとも気が早いことだが、いずれ父上に紹介せねば。毛づくろいは毛皮族の最高の愛情表現のはず」
 少女はブツブツつぶやきながら、妄想が脳内で爆発的にふくれあがっているらしい。
 ダンガーと目が合うと頬をリンゴのように紅潮させ、可憐とも思えるか細い声で、ポソリと漏らした。

「わらわにはつくろえる毛が少ないけれど、それでもよいか?」

 は? とダンガーは再び凍りついた。
 なにやら自分が大きな間違いを犯したことに気づく。
 オイ、なぜドレスのすそを念入りになでつけ、俺の目線を気にしながら角度を変えて持ち上げ、チラチラ足首を見せつけるんだ?
 いやいや、想像したくないが、どういう勘違いがあったか予想がついてしまった。

「いきなり生涯唯一の告白を受ける日がこようとは……これが一目惚れなのじゃな」

 ちがーう!! と言いたくても言えない。
 巳族は華奢に見えても強靭な肉体を持っている。
 片手で3トンの塊を平気で持ち上げることだってできる。
 ダンガーは否定したくて全力で焦っていたが、目の前をいったりきたりする足首が凶悪だった。
 身の安全を確保するには肯定するしかない気がした。「かわいらしいハイヒールですね」などとぼけたふりをしてごまかしたら、目の前にあるとがったかかとで蹴とばされ、一瞬にして大往生できるだろう。
 眉間にヒールが突き刺さる未来なんて欲しくない。
 ふさふさした毛の獣面ではわからないが、ダンガーは青ざめていた。

「い、いやいや、落ち着け……まずは落ち着こう。そもそもお嬢は幾つだ?」
 このままではロリ確定!
 未成年は犯罪だといいつのる淡い希望は、すぐに砕け散る。
「うむ、気にするでない。巳族のわらわは幼く見えてもれっきとした大人。伴侶を探せと送りだされてすぐに遭難したが、旦那様の想いを受け入れる準備はできておった。これは運命の導きかもしれぬ」
 神に感謝を、などと祈りのポーズをとって盛り上がっている。
 口もとからチロリと一瞬のぞいた舌先が二つに割れていて、ダンガーの目が泳いでしまう。

 神よ、これはなんの試練ですか?
 そんな運命はいらない。

 巳族の住む星雲は非常に遠い。
 通常航行だと二年以上かかる距離だ。
 どうしてこんなところに流れ着いたかわからないが、恐るべき宇宙嵐としか言いようがない。
 近距離の荷物を専門に扱うダンガーたちが、遠方で暮らす巳族に実際お目にかかることは少なかったけれど、その特性も少しは知っていた。
 巳族は美系ばかりで愛情深いが少々度が過ぎていて、思い込んだら命がけである。
 つまり、一生離してもらえない。

 メディーと名乗った少女が巳族の長の娘だと追い打ちのように聞いて、ダンガーは心の中で血の涙を流した。
 いまだかつて女性と付き合ったこともないのに、異民族の長の娘なんてハードルが高すぎる。
 せめて犬族とか狼族の女性のモフモフした耳に、一度でいいから顔をうずめてみたかった。

「それにしても心地よい毛並みじゃの♪ 全身に生えておるのか?」
 襟元に再び手がかかり、巳族特有の怪力を発揮する。
 一瞬のうちにバリーンとばかりに布が裂けて、ボタンがブチブチとちぎれ飛ぶ。
 あ、やめろ! と叫ぶ間もなかった。
 モフモフとした豊かな胸毛が現れ、嬉しそうにメディーは頬をすりつけた。

「うむ、良い毛触りじゃ♪」

 神よー! と心の中でダンガーが叫んだとき、無数の足音が遠ざかるのを聞いた。
 ギャラリーと化していた部下たちが、そそくさと逃げだしたのだ。
 他人の痴態など見たくもないから、当たり前の行動とも言える。
 呼び戻そうと伸ばした毛むくじゃらの手はむなしく空を切るばかりで、なんたる薄情者たち……と嘆かずにはいられない。
 ダンガーにとっての助け手は、一瞬のうちに姿を消してしまった。

「わらわのすべてはそなたのものじゃ」
 やわらかな毛に顔を埋めたメディーの微笑みは、真珠よりも清らかに輝いたのだった。

 そのすぐ後、ダンガーの身になにが起こったか、誰も語ることはない。
 あんなことやこんなことがあっても、そもそもダンガーは不器用なヘタレ代表である。
 睦まじく過ごすまで、山あり谷あり、非常に大変だったことは推し量ってほしい。

 しかし、二年半もの宇宙航海が終わるころには、仲睦まじい異族夫婦の伝説が生まれていた。
 ダンカーとメディーは想いを通じさせてからはイチャイチャと過ごしていた。
 もっとも平たんな道のりではなく、巳族の長に認められるため一年ほどの旅も追加で待っているけれど、それはまた別の冒険譚になるだろう。

「終わりよければすべてよしって言うはずだよな」
 うんうんとうなずき語り合う部下たちは、胸やけしそうなほど甘い様子を見つめていた。
 別の星雲まで二人の愛の航行につきそう人の良い彼らは、いまだ出会いに恵まれないロンリーな男たちでもあった。
 やっかみ半分の冷やかしを受けながらも、ダンガーはまんざらではない顔になっている。
 強面のジャッカル族は伴侶を得るだけで苦労するのが常道。

 少々嫉妬深いものの、メディーの愛情は本物だった。
 目移りもせずダンガー一筋。
 小柄でもパワーがあふれているし、影に日向にかいがいしくダンガーをサポートしている。
 出会った時はどうなる事かと思ったけれど、素晴らしい伴侶を得たと感謝するばかりで、運命の神を信じていいとさえ思う。

 だから夜になると。
 怖い顔のジャッカルは、愛しい妻の耳元にささやくのだ。

「今夜も綺麗に毛づくろいをしてやるぜ」と。

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妄想設定協力:中原ゆえ様♡

あかし瑞穂様主催の「もふもふは正義だ企画」の参加作品
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