短編集 恋の卵

ケーキ彼女 2

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もう普通の恋はできない。
ケーキ彼女との衝撃体験から、俺は沈鬱な毎日を過ごしていた。
他のケーキなら大丈夫かもしれないとタルトやチーズケーキを買った日には、ほかならぬ彼女たちから浮気者ねと嘲笑をあびた。

浮気ってなんだ。
他の甘味を食べることを俺は許されないのか?

これなら普通にデザートタイムを楽しめるだろうと、コーヒーゼリーを手に取った日。
「それはやめたほうがいいわ」
背後から、そんな声がかかった。
「ケーキとは仲が悪いから、きっと不興を買うわ」

このコンビニでバイトしている女性だった。
就活に失敗しちゃったからね~と明るく笑う気さくな子だ。
だけど、ケーキの不興を買うって?
顔馴染みの彼女はスッと近づいてきて、動揺する俺の耳元でそっとささやいた。

「あのね、私の彼はゼリーなの」

なんと彼女は数少ない仲間だったのだ。
俺たちはその日から二人で、沈黙のスイーツを探し求めた。

一喜一憂するうちに、俺たちの間に甘い空気が流れ始めたのも当然かもしれない。
他に理解者が存在しないのだ。
デザートたちも俺たちの愛を邪魔することはできなかった。

そして迎えた結婚式の日。
青空に白い鳩が舞い飛ぶ。
正真正銘の妻を俺は手に入れるのだ。

感動に打ち震える中、調子っぱずれの祝いの歌が突然聞こえ始める。
参列者も声の元を探し、きょろきょろと周りを見回したが、それらしい聖歌隊はどこにもいない。

しかし、俺と妻は青ざめた。
歓喜に震えながら歌っているのは、巨大なウェディングケーキだった。
こんなことになると、誰が予想できただろう?

何がハッピーだ?
いや、確かにハッピーウェディングなのだが。
参列すべての人にケーキの歌声が届く日が来るなんて……小さな悪夢と同じだ。
みなが余興だと思ってくれたのは不幸中の幸いだった。

俺たちとスイーツとの付き合いはまだまだ続くのだろう。
そして歌うウェディングケーキは、伝説として語り継がれるのであった。
【終】

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