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短編集 恋の卵

雨の神様にお願い 後編

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 全然理由は違うけれど、仲間だと思ってしまった。
 遠い人だとずっと思っていた太田君を、急に身近な存在に感じて戸惑ってしまう。
 返す言葉が思いつかなくて、そのまま会話が途切れてしまう。
 内心焦っていたら、ポツン、と太田君がつぶやいた。

「受験終わったらさ、フリースロー対決しようぜ」
 え? いきなりすぎて、私は目を見開くしかない。
 パチクリと瞬きしながらその意味を飲み込めないでいると、へへっと悪戯っぽく太田君は笑った。
「負けたら佐上屋の豆大福3個をおごるってことで決まり。負けね~ぞ」

「えっと……受験って、来年だよね?」
 しかもなぜ豆大福?
 確かに佐上屋さんの豆大福は、塩味がキュッときいた餡子の甘味が絶妙で美味しいけど。
 勝手に決められても、その根拠がよくわからない。
 それ以前に、万年その他大勢の私が太田君に勝てるわけがないし。
 ものすごく不公平だと思う。

「山根さ。今、俺に勝つこと、考えただろ?」
 アハハッと太田君が笑いだすから、カァッと頬が熱くなった。
「生意気、俺に勝てると思ってんの?」

 なにそれ?
 イラッとして思わず手に持っていたバスケットボールを投げつけようとしたら、それより早く太田君が私に向かってパスしてくる。
 ゆるやかなパスだったけど急だったから片手で受け止められず、二つともボールを取りおとしてしまう。テンテンと音をたてて床に転がっていく。

 そりゃ私もぶつけようとしたけどさ。
 にらみつけて急にひどい! と言いかけたけれど、太田君が真顔になっていたので、思わず口をつぐんでしまう。
 私を見る目が真剣すぎて、先ほどまでの笑顔も消えていて、少し怖かった。

 何かを言いかけては言い淀む、透けて見える迷いに心臓が跳ねてしまう。
 胸がドキドキする。
 窓から忍び込んでくる、雨の音がやけに耳についた。

 不自然な沈黙だった。
 どうしたの? と聞きたくても聞けない。
 甘いような、苦しいような、不思議な沈黙。
 もしかしてこれって……うん、でもありえないよね。
 落ち着かなくて逃げ出したいのに、太田君の、眼差しから目を離せない。
 挙動不審な私をじっと見ていたけれど、スウッと息を吸い込んでから太田君はニヤッといつもの調子で笑った。

「なぁ。卒業しても、また会おうな」
「うん、部長が3月にバスケの同期会するって、今から張り切ってるから、すぐに会えるよ」

「いや、そうじゃなくて……ほんと、山根っておもしろいよな」
 それってどういうこと? と聞き返す前に「なんなら今からでも豆大福食べに行こうぜ」と屈託なく続けられて、ようやくほっとした。
 ちょっとだけ勘違いしそうだったから、少しだけ照れくさかった。

「和菓子を買うぐらいなら、いつでも付き合うよ」
 そうか、そんなに男の人が甘味を買うってそんなに抵抗があるんだ。
 勝負だなんて言わず、素直に買い物に付き合ってくれって言えばいいのに。
 大変だねぇ、と憐みの目を向けたら、太田君は傷ついた顔になった。
 横を向いて「なんでそうなる?」と小さくつぶやく。
 あれ? なにを間違えたんだろう? と内心で焦っていたら、太田君が「だから」と言った。

「だからさ、特別な意味で俺と付き合わないか?」
 部活、一生懸命やってるところをずっと見ていたと太田君は言った。
 レギュラーにも補欠にも入れないのに、バカみたいに楽しそうだったから俺まで嬉しくて仕方なかったんだ、とはにかむように笑う。
「今日ここで会えただけでも、すごいことだと思うしさ。俺たちは縁があるんだよ、きっと」

 そんな風にまっすぐに見つめられてしまい、目が離せなくなって息が詰まる。
 急すぎて、どう返事をすればいいかわからなかった。
 雨の神様が後押ししてくれてるって言われても、素直にうなずけない。
 だって太田君とまともに話したのも、私、今が初めてだし。
 感じのいい人だとは思っていたけれど、彼のことをなにも知らないから、好きだとも嫌いだとも言えない。
 そんな私の戸惑いを置いてけぼりにして、心臓が勝手にドキドキしている。

 いいのかな?
 こんな気持ちでうなずいても?
 特別な好きって、どんな気持ち?

 わからない。
 だけど太田君のキラキラした笑顔は無条件に好きだと思う。
 今、目の前にあるのは、試合に勝った時と同じ笑顔だ。

 雨の神様っているのかな?
 もしも本当にいるのなら、もう少し太田君と一緒にいたいです。

 このまましばらく雨が降り続けばいいと、私は強く願った。


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~ Comment ~

キュン 

女の子の戸惑いと、鈍感にしてるところよく伝わってきました。

共感いたす…

Re: キュン 

Maryam F D様、こんにちは(*^^*)

共感してくださって嬉しいです♡
久しぶりに可愛い恋を書きたくなって、恋の始まりにチャレンジしたけどドキドキしていました。
高校時代、もう少しちゃんと恋をしておけばよかったです(//-//)
管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

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