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短編集 恋の卵

SKY ~狂おしいほど、君に~ 2話

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 空があんまり青いから、今日はやけに高梨君を思い出す。
 居酒屋にでも立ち寄りたい気分の金曜なのに飲むなら家に帰るしか選択肢がない。
 車で市内に出るにも一時間以上かかるので、代行運転を頼む気にもならない。
 山のふもとにあるコンビニまで車で片道二〇分かけて行き、山道の運転にもずいぶん慣れたなぁと思いながら自宅に帰る。
 ここに赴任するまではほとんどペーパードライバーだったことを思い出し、クスリと笑ってしまう。

 教員用の住宅が茅葺きの古民家だったことは、最初の驚きだった。
 それまでの六畳二間の暮らしから一転して、一軒家はあまりに大きくて、一人でいることにずいぶん戸惑ったし心細い思いもした。
 もう大丈夫。そう思うまでに、一年はかかった気がする。
 田舎の暮らしにもずいぶん慣れた。

 なんてことを思いながら自宅に帰りつき、車から降りたけど足が止まる。
 玄関前に人が座っていた。
 抱えた両ひざに顔を埋めるようにしているが、真新しいスーツの男性。
 黒髪が夕日に照らされて艶々と輝き、黄昏色に染まった姿は不審者のはずなのに絵になる。
 訪問販売にしては小さなナップサック一つで、スーツ姿には不似合いだ。

 ジャリ、と私の踏んだ庭石の音に、彼は顔をあげた。
 思わず息をのむ。

 漆黒の髪は見慣れなかったけれど。
 スッキリ通った鼻梁も、まっすぐな眼差しも、笑ったときに軽く口角をあげる生意気な感じも。
 その全てが懐かしかった。

「高梨君」

 思わず名前を呼ぶと、高梨君はクシャリと顔をゆがめた。
 立ち上がり、ゆっくりと歩み寄ってくる。
 私の知っている学生服姿ではなくて、真新しいスーツにネクタイ姿なのが戸惑いを深めた。
 間近で見つめ合う。

「美鈴ちゃん」
 懐かしいその声に、呼び方に、胸の奥が震えた。
 本物だ。本物の高梨君だ。

 どうしてここに? と問いかける前に、高梨君は両手を伸ばして、私を抱きしめた。
 耳の側で「やっと見つけた」とつぶやかれ、むせび泣くようなその声に私も手を伸ばす。
 ゆっくりと彼の身体に腕を回す。
 確かめあうように、お互いのぬくもりを感じる。
 こんなに近付いたのは初めてだ。
 いけないことをしているとは思わなかった。
 初めて見るスーツ姿が似合っていて、ネクタイが大人びていたからかもしれない。

「今夜、泊めて」

 不意にささやかれ、私は現実に引き戻された。
 元気でいてくれたことは嬉しいけど、教え子を簡単に泊めるわけにはいかない。
 抱き返していた手を離し、グッと突き放す。

「君の自己満足に、私を突き合わせないで」

 高梨君はムッと口を引き結び、その後でヘニョリと肩を落とした。
 またそれかよ、とぼやきながら右手で髪の毛をぐちゃぐちゃにかき混ぜた後、玄関横にとめてあったスクーターを忌々しそうに指さす。

「壊れちゃって帰れないの。野宿しろなんて言わないよね?」
 なるほど、と私は納得した。
 都市部ならオシャレなスクーターも役立つけど、高低差数百メートルが延々続く山道の連続に、エンジンがオーバーヒートしたのだ。
 私が乗っている軽乗用車もターボ付きである。
 ターボがないと登り道の負荷が大きくて、エンストまではいかないけれど必ず失速してしまう。

「なんなの? この殺人山道。行けども行けども山しかないってどんなとこだよ!」
 高梨君は半泣きである。
「俺のべスパが……」
「ちゃんと事前に調べないからでしょう?」
 バカね、と言いながら玄関を開ける。
 数少ない修理業者に電話をして、修理のために持ちかえってもらう。
 日曜までにはなんとか直りそうだと聞いて、ひとまずほっとする。
 四tトラックに積まれて遠ざかっていく愛車に、高梨君はひどく落ち込んでいた。


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