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短編集 恋の卵

「僕もう大人だよ」

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「僕もう大人だよ」

 切なくなるような甘い声。
 至近距離から見つめられて、私は息を飲んだ。

「ちょっと、ちょっと、なに? 離れて」

 逃げようにもソファーに押し倒されていて、身動きが取れない。
 どこからどう見ても、これは私が襲われている状態だ。
 驚きが先に立って現状が理解できないけれど、私は手足を突っ張ることでかろうじて和人の侵攻を食い止めていた。

「ちょっと、なんの冗談?」
「冗談って、何が? 僕はずっと朱里ちゃんのお嫁さんになるっていってたよね?」
「ぶ、物理的に和人がお嫁さんはムリだと思う」
 和人は男で、私が女で……などと混乱したままゴニョゴニョと言いつつ、どうしてこんなことになっているのか、ありったけの理性を総動員して考える。

 ここは私のアパートだ。
 それは間違いない事実だ。
 そして和人は遥か年下だけど、実家の隣に住んでいる幼馴染だ。
 しかし、付き合っている訳ではない。

 だいたい、私が成人式をむかえたとき、和人は小学六年生でランドセルを背負っていたのだ。
 幼馴染という言葉がいくつまでの年齢差で通用するのかわからないけれど、和人の赤ちゃん時代も知っている。
 仕事で家を出た私を追いかけてくるように家を出て、調理師学校に通いながら私の隣の部屋に住んでいる。
 炊事・洗濯・調理といった家事全般が苦手な私を心配した母が、和人に合鍵を渡したのだ。
 いくら私が人知を越えた奇怪料理しか作れなくても、今の世の中、お惣菜だってお弁当だってお金さえあれば飢えずに済むのに。
 学生さんだからって暇ではないはずなのに、せっせと私の食事を作りに和人は通ってくれている。
 人の良さを発揮して毎日のように一緒に食べようと言って、私の部屋で朝・夕の賄いはしてくれるけど。

 年の差、八歳? 九歳?
 どっちでもそんなに差はないけど。
 和人にときめくだけで、ただのショタ。
 犯罪よ、犯罪。
 これだけ年齢が離れていたら、恋だの愛だのが入りこむ隙間がない。

「落ち着いて、和人。酔ってる? 初めてお酒なんて飲んだから酔ってるでしょう? 正気に戻ったら、うわーないわーって叫ぶようなことは止めよ? ね?」
 そんな私の動揺とパニックを考えもせず、和人はグイグイと迫ってくる。
「酔ってない。確かにワインはさっき飲んだけど、酔ってないから」

 いかん、完全に目が据わっている。
 お酒初心者にワインは無謀だったかも。

 それにしても、和人、いつの間にこんなに大きくなったんだろう?
 力いっぱい跳ね返そうとしているのに、さっきからびくともしない。
 まるで大人の男みたいだ、と思ったとたん、ドキリとした。
 いつまでも子供でかわいいと思っていたけど、私が働く大人になったように、和人もランドセルの少年でいるわけがない。

「僕、二十歳になったんだよ」
「そ、そうね、おめでとう」

 そう、今日は和人の誕生日だ。
 会社から帰ってきたら和人特製の豪華なフルコースとケーキが用意されていて、私もワインなんて買ってきてお祝いした。
 それから一緒に和人の借りてきたDVDをいつものように見ていた。
 砂糖菓子みたいに甘い甘い恋愛映画なんて珍しいなぁって思いながら、私が冗談交じりに「さっさと彼女を作って、ちゃんとお祝いしてもらいなさいよ」と言ったとたん、こうなったのだ。

「ちゃんと今の僕を見て。朱里ちゃん、好きだ」
 
 ふわっとおでこに和人の息がかかる。
 やわらかな口づけに、私の思考は停止気味だ。
 だめだ。体温が近くてクラクラしてきた。
 毎日御飯を一緒に食べるぐらい馴染んでいるから、きっぱり拒絶できるほど嫌いじゃない。
 むしろ、こういう生活が続くのもいいなぁなんて思っていたから、流されるのも悪くないと思っている私が顔を出した。

「僕、もう大人だよ」

 耳元から首筋へ「ちゃんと教えてあげる」なんて甘いささやきが滑り落ちた。
 うん、手も足も身体も私を包み込んで、本当に大人になっている。
 大きな手が私の身体をなぞり、輪郭を確かめていくので、やわらかく息を吐いた。

 流されたら後が大変よ、と理性が告げているのに抵抗できない。
 侵入してくる和人の体温が熱くて、思考なんてあっという間に溶けて消える。

 甘く長い夜が、始まろうとしていた。


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