Making Twilight

花粉症クオリティで遊んでみた? 後編

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「ようこそ、我が楽園へ!」
 満面の笑顔と同時に、巨大なクラッカーがパンと鳴った。
 応接室らしき場所で待ち構えていた白衣の男たち。
 歓迎されていることは理解したけれど、室内に足を踏み入れた五人は一斉に思った。

 もう、帰っていいですか?

 だけどそれは、きっと言うだけ無駄だろうな~という空気が流れている。
 中心に立っているひげのおっさんがたぶん、ここの責任者だろうとあたりをつける。
 他の白衣数人は助手といった感じだ。
 ひらひらと降り注ぐ紙吹雪とキラキラテープの中、聞いた話との誤差を埋めようと思考を巡らせつつ沈黙するしかない。
 座り給え、と五人は促されるまま椅子に座り、最初の予想通り所長だとひげの男から自己紹介をうける。
 そして、長い長い演説が始まった。
 熱意はこもっているけれど無駄に長く所長の主観だらけなので、ここでは割愛しておく。

「と、いうわけで、急遽、特殊戦隊の結成が決断されたのだ」
 そんな言葉で締めくくられた一時間にも及ぶ熱弁の概要はこうだ。
 未知の敵が現れると預言者が一斉に予知した。
 対策本部を立ち上げることが急務。
 しかし、敵はまだ存在しない。
 予知した預言者は世界各国にいるから素通りするには落ち着かない状態でいるよりは、なにが起こっても対応できる状態にしておこうぜ、ということらしい。
 艱難辛苦を乗り越えて秘密基地の政策を実現したなどと熱を入れて語られても、なんだそれは? としか思えなかった。
 こういってはなんだが、実に理解不能である。

「なぜ、選ばれたのが我々なのでしょうか?」
 勇気ある一人が手をあげた。
 さっさと帰りたいという欲求を押さえての冷静な口調に、碧は思わず尊敬の視線を送った。
 分厚いゴーグルで隠れていても、連れこまれた他の人間も同じ眼差しで彼を見ているのがわかる。

「それは君たちが特殊な体質だからだよ!」

 答えは単純だった。
 日常に支障があるほど強い花粉やハウスダストなどの過剰アレルギー反応はあり、食物アレルギー皆無・他の疾患無し・運動神経のよい体力気力の充実した若者。
 厳しい条件ハードルを見事通過して合格したのが、我々五人だったらしい。

「君たちが超人に慣れる装備を作ってしまえば、同じシステムを使う常人はさらなるミラクルを起こせるはずだ!」

 などとさらなる熱弁が続いたけれど。
 おい、と心の中で突っ込んでしまう。
 それって私たちが研究のための踏み台だと公言しているのと同じだ。
 捨て駒ってことはないだろうけど人体実験と変わらない気がする。
 怪しいと思わなかったわけではないが、こうあけすけに言われるとは思ってもいなかった。
 なにをされるか、とてつもなく不安になるのも仕方ない。

「手始めにそのマスクとゴーグルを外したまえ。建物内はクリーンに保たれている」
 君たちのアレルギー源のない場所を考慮してこの場所を選んだしな♪ などと妙にご機嫌な所長を、手放しで信じられる者がいるだろうか?
 いや、いない。
 誰一人としてマスクを外さなかったのがその証拠だ。
 湧き上がる不穏な空気を打ち払うように、オトちゃんが横から明るく宣言する。

「もしもの時でも、皆様の健康は免疫学のエキスパートの所長と私が全力でお守りします♡」

 自分は医療に特化したオートマータだとオトちゃんが胸を張る。
 ずいぶんと安直な名前のつけ方だが、当人は気にしていないらしい。
「アナフィラキシーを起こしても大丈夫」と証明しようとしてか、左手の人差し指を引っ張ると第一関節から外れて注射針が現れる。
 プスッと一撃で復活なの♪ なんて言われて、さらに空気が冷えたのは当然だろう。
 帰りたい、という要求が発現される前に、所長がグッと握り拳を作った。

「君たちにはこの特殊戦隊に名前を決める栄誉を与えよう!」
 自分が所属する場所の名付けは愛着にもつながると言われて、連れ込まれた全員がつま先を意味もなく見る。
 意味不明の戦隊への参加が義務付けられて喜べる人間はいないということだ。
「心のままに!」とさらに強く促され、投げやりな調子で最初に発言した青年がポツリといった。

「タオレルンジャーとか?」
 あ~わかるわかるといった空気が連れ込まれた五人の間に流れる。
 基本、春は寝ても起きてもゼーハーしてギリギリ命をつないでいた
 戦隊だの戦いだの、そんなものに関わる以前の問題が大きいから、気分爽快でハツラツいこうぜ! なんて言われても気が滅入るだけだ。
「クルシムンジャーとかね」
「ポジティブに、イキシタインジャ―とか?」
「カフンキライナンジャーとかね」

 陽気だった所長がちょっぴり眉根を寄せて「ちゃんと全身防御のスーツを作るからね」と確約したが、誰ひとりとして信じなかった。
 そもそも戦隊になど入りたくもないし。
 できることならアレルゲンと切り離された密室で、細々とでいいから健康的にすごしたかった。
 それでなくともここにくるまでの長旅で疲れているのに、理解できない事態に付き合わされて休息出来ないなんて不条理だ。
 嫌がってるアピールではなく、本気で思考が投げやりになってしまうのも当然だろう。
 とにかく一秒でも早く、横になって休みたかった。
「決め台詞はあれだよね」と一人が腕を組みながらポツリと漏らすと、全員同時に同じセリフを吐きだした。

「「「「「戦う前に死んでいる」」」」」

 アレルギーに苦しんでいる最中の、嘘偽りのない心のままの発言なんてこんなものだ。
 シーンと重苦しい沈黙が室内に満ちたけれど。

「そろった!」
歓声をあげて、オトちゃんだけは両手を叩いて喜んでいた。

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はじまったばかりでぶつ切りだけど続きはないにゃ~遊ぶつもりがひどい話になった気がする(冷汗)
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