スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←第一話 双剣の使徒・1 →第三話 双剣の使徒3
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 短編集 恋の卵
もくじ  3kaku_s_L.png Making Twilight
もくじ  3kaku_s_L.png 詩集 kurayami
総もくじ  3kaku_s_L.png 交換詩・贈答物語 七色の海
もくじ  3kaku_s_L.png 潮騒の詩
総もくじ  3kaku_s_L.png 英雄のしつけかた
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編集 ちょっぴり異世界
総もくじ  3kaku_s_L.png ミルキィ☆ロール
総もくじ  3kaku_s_L.png 喫茶ペロリストシリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【第一話 双剣の使徒・1】へ
  • 【第三話 双剣の使徒3】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「英雄のしつけかた」
第一章 王都で暮らしましょう

第二話 双剣の使徒2

 ←第一話 双剣の使徒・1 →第三話 双剣の使徒3
 走り来たとは思えぬほど、すみやかな登場だった。
「どうでもいいが、ちょっとは手加減をしようとは思わないのか? 誰が道を直すんだい?」
 こちらも傭兵のようないでたちをしていたが、にこやかな表情や物腰がどこか商家に通じるものがあり、娘は少しホッとした。
 武人とは日常でかかわることが少なく、慣れていない。
 双剣持ちでも人らしく会話ができそうだった。

「街道は国の管轄だ。ジャスティにでも言っておく。俺が動けばその程度の不具合は覚悟しているはずだしな。気にするな」
 そう言ってスタスタと去っていく。

「バカ野郎、少しは気にしろよ。工事は国王の手駒でも、今の応急処置は俺たちだ」
 聞こえないぐらい軽くぼやいて、デュランと呼ばれていた青年は肩をすくめた。
 そして、ふと視線に気付いたように娘に近づくと、側に膝を落とした。

「お嬢さん、よく一人で耐えたね。私はデュラン。東流派の使徒だ。国王からの依頼を受けてきたのだが、一足遅かった。申し訳ない」
 いいえ、と答えながら娘は居住まいを正した。

 つい先ほど聞いた名前に覚えがあった。
「ジャスティ王の依頼で、流派の方が?」
 この東のカナルディアの国王を当たり前に呼ぶなんて、この人たちは東流派の中でもかなり上位の人たちではないのかと首をかしげる。
「王様と我らの長殿がお友達なんでね。お嬢さん、安全な場所へと送ろう。あてはあるかな?」
 まぁねとどうでも良さ気に返事をすると、デュランは立ち上がった。

 せっかく生き残った娘なのだ。
 ピンピンしているならそれでいい。

 国王は国と国民の暮らしを考える。
 四流派は世界と生命の成り立ちを考える。
 双剣をはじめとする、流派は退魔の技を担う。
 流派の誓いは、国とはまったく関係ない特別なもので、一般市民には理解しがたい。
 人の命にかかわる危険がある限り依頼がなくても動く。

 今回はたまたま王からもたらされた情報で、確認しに来たが一足遅かったのだ。
 娘は自然に差しのべられた手を取った。
 そして助け起こしてくれた、デュランの皮手袋をはめた武人らしい手を見つめる。
 この人も魔物と戦っていただろうに、返り血の一つもなかった。
 笑顔の似合う人のよさそうな顔をしていても、剣士としてかなり強い人らしい。

「当てと言われましても……旦那様の弟君が、この近くの村にいらっしゃいますが……あの、旦那様は?」
 夢中だったのでよくは覚えていない。
 それでも魔物の襲撃でひどい有様だったと思い出しながら恐る恐る聞くと、想像通りの返事が返ってきた。
「残念ながら、助かったのは君たち三人だけだ。では、弟君に弔ってもらうことにしよう」

 そうですよねと娘は肩を落として、気を失っている婦人と子供を痛ましげに見た。
 目が覚めたら辛い現実が待っている。
 帰る家はあっても、そこで暮らす人がいない。
 命が助かっただけでも僥倖だが、たくさんの物を失くしてしまったのだ。

 娘がぼんやりと考えているうちに、えぐれた大地の上にいくつもの遺体が並べられていた。
 損傷が激しくて、思わず目をそらしてしまう。
 ほんの四年ばかりだったが。
 一緒にすごしてきた人たちなのに、面影を残している遺体はほんのわずかしかなかった。

 壊れた馬車の破片の中から荷物を拾い、青年たちは片付けに動いていた。
 今日の惨事を想定していたように、馬と小さな荷車が用意されている。
 驚くほどの手際の良さで荷車の上に遺体を積むと、隠すように布で覆う。

「いつでも出れるぞ。そっちは?」
「この親子も乗せてくれ」
「まぁな。死体と同じ荷車なのは気の毒だが、一番まともだろう」
 恐ろしすぎて意識を飛ばしているようだから、目覚めるには時間がかかるだろう。
 幸いこの親子も大きなケガもなかった。

 ふと、娘は顔を上げた。
 自分はただの雇われ人なので、村に行っても仕方がないほど赤の他人だった。

「ここから王都までは遠いのでしょうか?」
 気を失っている婦人と子供を安全に運べるように体を固定させていたデュランは、手を休めずに聞き返した。
「お嬢さんは、王都の人間なのかい?」
「祖母がおりますの。旦那様の商売が王都でしたから……賄いと子守りも失業ですわ。生きているなら、この先のことを心配しなくては」
 とりあえず、祖母の顔を早く見たかった。

「おや、祖母殿がいるのか?」
「へぇ……娘さん、今から先の心配かい?」
 娘に興味を持ったのか、口ぐちに声をかける。
「ええ、できるだけ早く明日からの職を確保しなくては!」
 両手のこぶしを握りしめる様子に、青年たちははじけるように笑いだした。
 デュランはどこか控えめでも、事後処理を終え集まっていた他の四人は遠慮がなかった。

「いろんな現場に行ったが、あんたみたいに失業の話を持ちだした女は初めてだ!」
「さすがに木の棒なんかで戦うお嬢さんは一味違うなぁ」
「これはいい! 大したもんだ」
「まったくだ、ドレスの御婦人にしておくのがおしい」
 腹を抱えて爆笑していた。
 そのうえ、褒めているのだかけなしているのだかわからない評価を口ぐちに述べている。

 別に夢中だっただけだものと口の中で呟いて、娘は少しふくれた。
 正面切って反論しなかったが、魔物自体よりも混乱の場が恐ろしかった気もする。
 正確には、恐ろしすぎて気を失えなかった。

「これはこれは、気丈な方だ。あんなモノを見て、怖くはありませんでしたか?」
「普通ならばこうだ」と荷車の上で気を失っている婦人と子供を一人が指差した。
「助けていただいてなんですけど、不謹慎ですわよ」
 娘は少し眉根を寄せた。

 まだ実感がないだけかもしれない。
 だけど、怖かったとシクシク泣くのは祖母の待つ家に帰って無事を知らせ、一人になってからで充分だと思っていた。
「恐ろしいけど、とりあえず後にします。皆さまには心を砕いて頂いて、感謝いたしますわ。わたくし、ミレーヌと申しますの」

 気が張っているその顔に、それがいいと皆が口をそろえた。
 男たちは必死で笑いを噛み殺そうとしている。
 言葉にはしなかったが、立派だと眼差しが褒めていた。


にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ

関連記事
スポンサーサイト
総もくじ 3kaku_s_L.png 交換詩・贈答物語 七色の海
総もくじ 3kaku_s_L.png 英雄のしつけかた
総もくじ 3kaku_s_L.png 短編集 ちょっぴり異世界
総もくじ 3kaku_s_L.png ミルキィ☆ロール
総もくじ 3kaku_s_L.png 喫茶ペロリストシリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 短編集 恋の卵
もくじ  3kaku_s_L.png Making Twilight
もくじ  3kaku_s_L.png 詩集 kurayami
総もくじ  3kaku_s_L.png 交換詩・贈答物語 七色の海
もくじ  3kaku_s_L.png 潮騒の詩
総もくじ  3kaku_s_L.png 英雄のしつけかた
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編集 ちょっぴり異世界
総もくじ  3kaku_s_L.png ミルキィ☆ロール
総もくじ  3kaku_s_L.png 喫茶ペロリストシリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【第一話 双剣の使徒・1】へ
  • 【第三話 双剣の使徒3】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【第一話 双剣の使徒・1】へ
  • 【第三話 双剣の使徒3】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。