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Making Twilight

破滅の姫 ~ mother 1 ~ 

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 急がなくてはいけない。
 私は産褥の疲れた身体を奮い立たせて、寝床をそっと抜け出した。
 ともすればふらりと床に倒れそうになる。
 心を裏切り力が入らない脚がふがいない。
 唇をかみしめながらグッと床を踏みしめると、小さなかごの中からそっと赤子を抱きあげる。

 生まれたばかりの小さな命に思わず顔がほころぶ。
 ときどきピクリと動くものの、すやすやと眠っていた。
 ふにゃふにゃとした頼りない存在だけど、確かに伝わってくる温もりが愛しかった。

 似ているところが少しはあるかしら?
 髪の色は私とは違う亜麻色。
 瞳の色は私と同じ緑だと女官たちが言っていた。
 それが本当なのか、まだ確かめていない。
 つぶらな瞳が開いたところを見たかったけれど、赤子の泣き声は耳につくものだ。
 だから、お願いだからこのまま眠っていてと祈った。
 
 少しの間、私はそのままでいたけれど、フッと息をひとつ吐いて眼差しをあげる。
 いつまでもぼんやりしているわけにはいかなかった。
 出産後は気が立って仕方ないと理由をつけて人払いはしているけれど、いつ何時侍女がのぞきに来るかわからない。

 赤子をそっと優しく布でくるむと、別れを惜しみながら抱きしめる。
 どれだけ愛でても足りることはないのに、乳をふくませる時間もないなんて。
 おそらくこれが最初で最後の抱擁になるだろう。
 信頼できる者に託すのだ。
 運よく逃げおおせても、生き延びる可能性は限りなく低いのはわかっている。

 なにしろこの子は破滅の子。
 古くから王家に伝わる預言書に、そう記されている。
 双子が王家に生まれたときは、後から生まれた子がこの王国や世界を滅ぼす存在になると。
 王家の双子は凶兆だと、破滅の子はすぐに殺されるしきたりだった。

 せめて一晩だけでもと王に願い出て情けをいただいたけど、夜明けとともにこの世から消されてしまうのだ。

 同じ時に生まれた双子の子供なのに。
 ひとりは神の御使いで、ひとりは破滅の元凶だなんて。

 そんなこと許さない。
 運命なんて信じるものか。
 古くからの伝承に振り回されるなんて馬鹿げているわ。

 私は寝室の奥にかけられたたピストリーを押し上げ、壁の一部を押した。
 音もたてずにしかけが動き、壁にぽっかりと穴が開いた。
 存在を知ってはいたけれど、足を踏み入れるのは初めての事。
 ひるみそうな暗さだったけれど、腕の中のぬくもりが前に進む勇気をくれた。
 胸に湧く強い思いに突き動かされて、私は秘密の打ち合わせどおりに、そっと部屋を抜け出した。
 
 たとえ予言が真実で、この国が将来滅びようと、この命を奪われてなるものか。
 誰が何を言おうと、この子は可愛い私の子。

 壁が迫ってくるようで、息がつまりそうだった。
 成人男子がやっと通れるぐらい壁の迫ってくる細い階段はグルグルと螺旋を描いている。
 目の前に続くのは暗闇だけど、積み上げられた岩そのものに古い魔力が宿っているのか、踏みしめた場所を中心に数メートルは青白く発光する。
 
 急がなくては。
 秘密の通路を知っている者は王族以外にいないはずだけれど、しょせんは異国から嫁いで数年しか経たない身。
 信じられる者が城の中にはほとんどいない。
 正妻の立場など傾国の伝承よりも軽いだろう。
 なにより頼るべき王が、最大の脅威なのだ。
  
 急ぐと足がもつれそうになるから、一歩一歩踏みしめて前へと進む。
 下へと続いていた階段は、弧を描くような平らな通路に変わり、そして上へと続く。
 先が見えなくて永遠に続くかと思えるほど長い通路は、将来この子が歩む道のりのようだ。

 やっとたどり着いた先は、行き止まりだった。
 壁が目の前をふさいでいるけれど、一部分だけ緑の光を放っている。
 そっと手のひらで触れると同時に壁が消えた。


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