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Making Twilight

ジジプラス 最終話

 ←ジジプラス 第3話 →コスモス
「今頃、おまえと拳を交える日が来るとはな」
「それはこちらのセリフです。お嬢様を返していただきましょうか」
「お嬢は物じゃねぇ。いい加減、気が付きやがれ」

 自分の意思があるから大人の勝手を押し付けるんじゃねぇよ、と右の拳を突き出した政さんの背中を、私は思わず見つめてしまった。
「いいか、お嬢の人生はお嬢のものだ。子供のうちしかできねぇことは、子供のころにやらなきゃいけねぇんだよ。な~にがお稽古に家庭教師だ。ふざけんなよ」

 それが今日、遊園地に連れてきた理由なのだと理解したけれど。
 私は声もなく政さんの背中を見つめることしかできなかった。
 本当に不思議な人だ。
 私の生い立ちもすべてを知っているのに、何も知らないふりをして今まで付き合ってくれていたのだ。

 でも、嫌じゃない。
 見守ってくれていたんだと、素直にそう感じた。
 赤の他人なのに、身内以上に親しい感慨がわきあがる。
 からめた小指の暑さが、まだ胸に残っていた。

 相手がセバスチャンではなくて、たとえ私の親でも政さんは引かないだろう。
 遊園地なんてただの娯楽で、子供だましに似た遊びだ。
 政さん自身にとってはどうでもいい場所のはずなのに。
 今日の約束を守るためだけに、私の側にいる。
 ほんのひと時の自由をくれただけではなくて、私の将来まで解き放とうとしている気がした。
 だから、大きく息を吸って、クルリと二人に背を向ける。

「セバスチャン、急ぎで車を用意してくださる? 帰りますわよ」
 思った以上に意志のある、強い声になった。
 うん、これでいい。
 私の気持ちも、今日はここまでだと認めている。

 そのままスタスタと歩き出した私に、は? と二人はまぬけな声を出した。
 キリキリと鋭くとがっていた空気が、一瞬で霧散している。

 互いの間合いを計っていた二人が驚愕もあらわにして、あわてたように私を追ってくる。
 今まで殴り合おうとしていたのが嘘みたいなあわてぶりなのがおかしかった。
 立ち止まるとゆっくりと振り向いて、私は政さんの顔を見つめた。
 精いっぱいの敬意をこめて、笑顔を見せる。

「とても楽しかったですわ。私は私自身の意思で、今日は帰ります」

 ほう? と面くらったように、政さんは私を見た。
 自分の意思を示すように背を伸ばして、できるだけ穏やかな口調で告げる。
「私が許可を得ずここに来たことで、セバスチャンだけでなくたくさんの人を混乱させました。探し出すのも大変だったはずなの。その責任を取らなくては! でも、後悔はしていません。本当に楽しくて、こんなに楽しかった時間は初めてでしたの」

 だから、と右手の小指をそっと差しのべた。
 今度はちゃんと周りの人の理解も得てから、政さんと遊園地に来たい。
 どこかにあった後ろめたさからも解き放たれた状態で、自由に遊べたらどんなに幸せだろう。
 そのためにも、今は家に帰ることを私は選ぶ。

「観覧車はまた今度。約束してくださる?」

 フッと笑うと政さんは肩をすくめた。
 返事のかわりに無骨なしぐさで手を伸ばすと、しっかりと小指をからめてくれた。
 強く上下に振られるこの約束は、いつかきっと守られるだろう。
 私は、政さんを信じている。
 そして私を迎えに来てくれたセバスチャンの事も、強く信じている。

「お嬢のそういうとこ、気にいってるぜ。案外、俺が思ってるより御当主さまにも向いてんのかもな」

 ニヤリと笑った政さんに、ぼそっとセバスチャンがつぶやいた。
「相変わらず女に鼻の下を伸ばし、ずいぶんと弱いようですね」
 いつの間にか気安い調子で横に並んで、肩が触れ合いそうな距離にいる。
 この二人、つんけんしているようで実は仲がいいのかもしれない。
 だって即座にクワッと眉毛を釣り上げた政さんが、素知らぬ顔で横を向いたセバスチャンにからんでいるから。
 セバスチャンは銀の細工物みたいな印象なので、親しい様子を見せる人は初めてだった。

「二人は親友同士みたいですわね」
 つい率直な感想を述べたら同時に顔をゆがめて「ありえませんね」と「腐れ縁ってやつかもな」と嫌そうにそろって肩をすくめた。

「腐った縁など一つも持っていませんよ。失礼な人だ」
「お互いさまだろうが、それは。てめぇこそちったぁいい歳のとり方をしやがれ」
「貴方にだけは言われたくありませんよ。私が甘い顔をするのはお嬢様だけです」
 きっぱりと言い切ったセバスチャンに、政さんは目に見えて顔をしかめ、うへぇとうめいた。
 やっぱりてめぇを理解するのはムリだ、と小さくつぶやく。

 その様子があまりにおかしくて、私は声を立ててと笑ってしまった。
 やっぱりこの二人は仲がいい。
 どういう関係かは分からないけれど、そんな小さなことを飛び越えた部分で、心がつながっている気がする。
 それが少しうらやましかった。

「今日はありがとうございました。政さん、ごきげんよう」

 丁寧に頭を下げて、私は出口に向かって歩き出す。
 このまま別れを惜しんでズルズルと話をしていたら、よけいに別れがたくなりそうだ。

 政さんの声が追ってきて、短く「あばよ」と私の胸を叩いた。
 芯のある声だった。
 あばよの持つ意味合いを無視して、その言葉は胸に温かく響いた。
 私にとっては、またなと同じだから。

 大丈夫。
 今の私は、昨日までの私とは違う。
 ドレスやヒールがなくとも、小指の約束があるもの。

 スニーカーに守られた足は軽やかで、翼が羽ばたくように私を前へと運ぶ。
 止まったりしない。迷ったりしない。
 私は私の脚で、歩き続ける。

 いつか、観覧車に乗る日まで。

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