Making Twilight

ジジプラス 第3話

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 大きな手がポンと私の頭をなでて、行くかと身を翻す。
 さっそうと歩く政さんは足が速いから、少し小走りで付いていくことになったけど、角を回ったところで、ドン! とその背中にぶつかった。
 いきなり立ち止まった政さんに、どうしたの? と問いかけようとしたけれど、すぐに理由はわかった。

 観覧車へと続く道の途中に、初老の男が立っていた。
 黒いロングジャケットに白い手袋。
 正統派の英国風バトラーの出で立ちは、私にとってなじみ深いものだった。

「セバスチャン」
 思わず名前を呼んでしまい、チラリと向けられたその冷ややかな眼差しに、キュッと気持ちが萎縮して熊のぬいぐるみを強く抱きしめる。
 私専属の執事で普段は護衛も兼ねているから、セバスチャンから離れるのは学校にいる間ぐらいだ。
 学校をさぼった上に不意に消えて、連絡もいれずに遊園地で遊ぶなんてもってのほかだろう。
 表情を変えることはほとんどないけれど、今も相当怒っているに違いない。

「相変わらず、気の利かねぇ野郎だな」
 チッと政さんが舌打ちする。
 今日の仕上げまで後もうちょっとだったのにと観覧車を見上げるので、私はキュッと胸が苦しくなった。
 泣きたいのか、笑いたいのかわからない。
 セバスチャンにごめんなさいを言うよりも、政さんの気持ちが嬉しいと言いたかった。
 さすがに今ここで口にする勇気はなかったけれど。
 そんな私の葛藤も知らずに、二人は嫌みの応酬をしていた。

「貴方も相変わらず、傍若無人な振る舞いをする。お嬢様を白昼堂々と誘拐するとはいい度胸ですね」
「へっ誘拐なんぞ知ったことか。遊び一つ知らなくて、まともな大人にはなれねぇからな。こりゃ社会勉強って言うんだぜ」

 二人の言葉のやり取りが知り合い同士のものだったから、私は思わず目を瞬いた。
 気安い間柄なのだろうか?
 鋼鉄の意思で仕事は遂行するセバスチャンがこれほど饒舌なのは珍しいし、どこか楽しそうに見える。

「あなた、おいくつです? 恥を知りなさい」
「約束一つ守れねぇようなら、恥だろうよ」
 男の沽券にかかわるんだと全く悪びれない政さんに、成り行きを知らないセバスチャンはさすがにあきれたようだった。

「誘拐は犯罪です。その歳になっても、まったく成長が見られない」
「ほぅ? 何ならこのまま誘拐犯になってもいいんだぜ」
 お嬢にはお嬢の意思があるんだよ、と政さんは一歩前に出て、私の前に仁王立ちで立つ。
 セバスチャンは薄く口元に微笑みをのせて、銀縁の眼鏡をクイと右手の中指で押し上げる。
 一触即発の危うさが膨らむと同時に、二人の身体が一回り大きくなった気がした。

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