Making Twilight

ジジプラス 第2話

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 約束だとからめた小指の温かさはすぐに離れてしまい、私も午後の授業があるから政さんと別れるしかなくて、それが少し悲しかった。
 初めての約束まで消えてしまいそうで、ひとりぼっちになった小指がさみしかった。
 もちろん、消えた温かさと同じで、その約束が嘘でもよかった。
 お父様もお母様も忙しくて約束なんて守られたことがないから、あの一瞬だけの温もりだと勝手に思っていた。

 だけど翌日の昼に、政さんは公園で待っていた。
 黒のリムジンの前に立っていて、いつもの着流し姿で「乗りな」と言って、驚く私を車の中に押し込むと、当然のようにそこから連れ去ってくれた。
「どこに行くの?」と聞くと「俺は気が短けぇんだよ」なんて当たり前に言うから、思わず自分の小指を見つめてしまった。

 そう。約束したのは昨日。だけど夢じゃない。
 昼休みに学園を抜け出していたからあとの事がさすがに気になったけれど、連れていかれたカジュアルなお店で制服を脱ぐとどうでもよくなった。
 だってこれから始まるのは政さんと私だけの時間で、キラキラ輝く宝石に等しい。

 政さんはあたりまえの顔で、そのまま遊園地に入った。
 リムジンから降りるときに、付き添いはいらねぇと運転手さんたちを残していた。
 行くぞと肩で風を切って歩く政さんを、最初は追いかけるのに精いっぱいだったけど。
 物珍しさも手伝ってあれこれ話しかけながら横道にそれていたら、政さんは「ネコの気まぐれにゃかなわねぇな」と苦笑して私の後を付いてきてくれた。
 そして今に至る。

 楽しかった。
 息をするだけでも、純粋に楽しかった。
 回る遊具も、高速で走るジェットコースターも、すべて。
 ゲームセンターの射撃では政さんが大きな熊のぬいぐるみを捕ってくれた。
 嬉しいと喜ぶ私に、政さんは「手軽だなぁ」とあきれていた。
 それもまた嬉しかったけれど、やっぱり不思議でもあった。

 孫を相手にするような気やすさで話しているけれど、そんなお手軽な人ではないと感じるのに、ちょっと袖すりあうような他人の私に構うなんてどうしてだろう?

 ギュッと熊のぬいぐるみを抱きしめていたら、いつの間にか歩調が緩やかになっていたみたいだ。
 いつの間にか先を進んでいた政さんが、遅れてしまった私を振り返った。

「疲れたか?」
 夕日の中で、鋭い眼差しが刺し貫くように、私を見る。
 いいえ、と首を横に振ったけれど、政さんはふむと少し考えていた。
 大丈夫ですわと口にしたら、スウッと視線を上に流した。
 つられて私も視線を同じ方向に向けたら、大きな観覧車が緩やかに回っていた。

「乗ってみるか?」
 あたりまえに聞かれて、はい、と私はうなずいた。
 嬉しかった。
 本当は身体が疲れているのかもしれないけれど、気持ちが人と気も休まずこの夢の世界を走り回りたいと叫んでいた。
 だから座ったままで、キラキラ光る宝石みたいな場所を一望できる観覧車は、今の私にとって最高の贈り物だと思う。

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