Making Twilight

ジジプラス 第1話

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 回る回るメリーゴーランド。
 風を感じるコーヒーカップ。
 クルクルと移り変わる夢の世界。
 夕暮れ時の風が長い髪をさらって頬をくすぐるから、私は思わず声をたてて笑ってしまった。

 一度でいいから来てみたかったのだ。
 同級生の子が楽しそうに語っていた遊園地に。
 彼女たちからキラキラした瞳で教えてもらった夢の世界。
 現実とは違う空気の中、私は今、自分の足で立っている。

 打ち震えるぐらい嬉しいと言ったら、大げさかもしれないけれど。

 財閥を成している大きなグループの、唯一の跡取りが普段の私なのだ。
 ずっと欧州で過ごしていたけれど、祖父のたっての希望で中学入学時期に日本にやってきた。
 お母様は日本人だし、日本語もずっと学んでいたから生活に不便は何もないけれど。
 次期当主と言われて、系列会社の一覧を見たときに、将来の自分が抱える重さにクラリとしたのも記憶に新しい。
 ずっと家庭教師だったから同年代の子と関わる時間が今まで少なくて、ほのかに期待しながら入学した学園では、その生い立ちに一歩だけ引かれてしまって友達らしい友達ができずにいた。

 それほど大きかったのだ。
 私が未来に背負うグループの存在は。
 周囲との距離感は、何不自由ない生活と生まれの代償だと納得はしている。
 そう、納得はしているつもりだったけれど、心に乗る重石を感じてしまう。

 だけど。
 今の私は、いつもの私ではなかった。
 身体になじんだシルクやレースで豪奢に飾られたワンピースやパンプスと違い、初めて身に付けたシンプルなシャツとジーンズはすごく動きやすい。
 特にスニーカーはとても身軽で軽やかで、歩くだけで心が浮き立つ。

「楽しいか、ネコ?」
 まだ聞き慣れない呼び名に思わずきょとんとしてしまったけれど、それが私のことだとすぐに思い出して大きくうなずいた。
「ええ、とても楽しいですわ。政おじさま、本当にありがとう」
 こうして遊園地に来ることができるなんて、本当に夢みたいだ。

「そうかい」
 私の横に歩調を合わせながら泰然と微笑む政さんを、私は不思議な心持で見つめる。
 遊園地がまったく似合わない人だけど、暮れかけた太陽が染める赤い空が似合っていた。
 夕日の赤が綺麗で、その赤に染まる政さんも大きな空に同化して見えて、おじい様と呼ぶ年齢の人なのに、おじさまとつい呼びかけてしまうほどだ。

 短く刈り込んだ髪に、粋な着流し姿。
 初老のはずなのに動きは機敏だし、しなやかな青竹のようにピンと背を伸ばして、肩で風を切っている様は威圧感を醸し出している。
 普通の人ではないのはわかっている。
 その左頬に残る一筋の傷や鷹のようなまなざしが、大っぴらに語れるような人生を送っていないと物語っているから。

 初めて公園で出会ったときにヴィクトニアだと名乗ったら、古風な日本人らしくVの発音で思い切り舌を噛み、うざってぇ名だとつぶやいた正直さも懐かしい。

「わけわかんねぇ名前はどうでもいいから、お嬢はネコでいいな」
 さすがに驚いて「え?」とはしたない声をあげてしまったけれど、俺は政だと名乗った後にニヤリと口元に笑みを浮かべた。
「お嬢はどうせすぐニャーニャー鳴くんだろ? 目もでけぇし、ネコが似合いじゃねぇか」

 有無を言わせぬ雰囲気は少し怖かったけど、その眼差しがどこか温かいから私はうなずいた。
 ヴィクトニアという名前は呼びにくいと自覚があったし、ヴィッキーさんとかトニアさんとか好きに呼ばれているから、性格に名前を呼ばれなくても抵抗はない。
 むしろ政さんと私だけに通じる、ネコって呼び方はとても親しみを感じて嬉しかったのだ。

 政さんは私の唯一の友達だ。
 年齢は祖父と同じぐらいらしいから、随分と離れているけれど。
 学園を昼休みに抜け出した公園で出会った、歳の離れた大切なお友達。

 学校に行っても友達を作るって難しいねってこぼしたら、俺がいるだろうと笑った人。
 気ままな話し相手って感覚だったけれど、遊園地に行ったことがないともらしたら、行きてぇか? と尋ねられ、うなずいたら小指を差し出してきた人。

「遊園地ぐらい、俺が叶えてやらぁ」

 ほれ、とあたりまえに差し出された小指は実直だ。
 約束なんてしたことがないから、思わずその小指を私は見つめてしまった。
 太い節くれだった手も指もしわが刻まれ、生きていた年月を物語っている。
 行きたいけれど、気楽な調子を信じるのが怖かった。
 恐る恐る小指を差し出すと、性急に近付いてグイと絡められ、強く上下に振られた。

「嘘ついたら、針千本、ネコのために飲んでやる」
 驚いて顔を見つめると、政さんはニヤリと笑った。
 力強い笑顔だった。
 本当は泣きたくなったけれど、つられて笑ってしまうぐらい鷹揚な笑みだった。

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とにあさん向け「ジジプラス」のキャストは『執事:北川米彦さ、親分:肝付兼太さん、祖父の弟さん:矢田稔さん、公園で佇む老紳士:八奈見乗児さん、学生時代の校長先生:家弓家正さん』です。 http://shindanmaker.com/481762? 声優はよくわからぬがプチ萌え


↑ 診断メーカー「ジジプラス」の診断結果(しかも友人の!)より。
ジジ萌えゲーム設定を作る電波の結果からひたすら妄想。
全4話と長い、とんでもクオリティ(汗)
脳内妄想飛ばしてますが、まぁ、趣味で楽しくやるとこうなるのです;;
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