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風の顎(かぜのあぎと)

第六話

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 真っ暗な闇の中。
 いつもならオウルだけの時間のはずだった。
 
 しかし、儀式の夜は特別なのだ。
 煌々と輝くいくつものかがり火は、低い位置でともされている。
 燃え盛る炎が風に乱されて踊り狂っていたが足元近い低い位置なので、かき乱されても消えることはなかった。

 崖から吹きあがる風に影響を受けないあたりに、幾何学的な文様が刺繍された白い布が敷きつめられている。
 星見台の近くに設置された祭壇を四人の司祭が囲んで膝まづき、司祭長が細い剣を胸にして歌うように聖句を唱えていた。
 一族の長を代表とする一〇名ほどがその布の上に座り、両手を祈りの形に組み合わせて頭をたれていた。

 大人ばかりのその中に、ポツンとオウルは混じっていた。
 同じ姿勢をとりながらも、顔をあげて執り行われる儀式を見ていた。
 硬く瞳を閉じて祈りをささげている大人たちは幸い気がついてないようで、戒める者はいなかった。

 視線はずっと、祭壇の上に横たわるベルを見ていた。
 白金の髪は細やかに編み込まれ、美しく花で飾られている。
 乳白色に淡く輝くやわらかなドレープが特徴的な衣裳も、その愛らしい容姿に良く似合っていた。
 ただ、いつもの笑顔はどこにもなかった。
 青空のような瞳は閉じられて、スゥスゥとやわらかな寝息を立てていた。
 薬を与えられて、深い眠りに落ちている。

 穏やかな寝息は風にまぎれて聞こえなくても、オウルは何も知らないまま眠り続けるベルが不憫で目をそらせなかった。
 司祭の聖句が止めば、あの細い剣がベルの命を絶つのだ。
 ゾクリ、とする。
 その瞬間を想像しただけで、背筋を冷たい汗が流れた。

 ベル。

 心の中で呼びかけた。

 僕は。
 僕は、君を失うことなんて。

 今にも「嫌だ」と叫び出しそうで、クッと唇をかみしめた。
 背中をなでた、あの優しいぬくもりがよみがえる。
 リンリンと言葉の代わりにならされる鈴の音も、笑い返してくる真っ青な瞳も、家路をたどる時につないだ手の暖かさも。
 その全てが、目の前で奪われようとしていた。

 こんな理不尽があっていいものか。
 怒りと憤りが、胸の奥からマグマに似た勢いでこみ上げる。

 司祭長の聖句が途切れた。
 かがり火に赤く照らされた剣が、テラテラと揺れる炎を映しながら闇に高く掲げられる。

 その時。
 パチリ、とベルの目が開いた。

 横たわったままで、真っ青な瞳は迷いもせずにオウルの姿を映す。
 小さな桜色の唇が、オウル、と声にならない声を紡いだ。
 視線がからむと、かすかに笑った。

 その瞬間、このまま何もできないのは嫌だと思った。
 知らず立ち上がり、オウルは駆けだしていた。

 そこから先は一瞬のことでも、コマ送りのように感じる。
 ふり降ろされる剣がベルの喉に届く前に、司祭長を突き飛ばした。
 いくつもの驚きの声が上がったけれど、深く祈りをささげていた大人たちが立ち上がるよりも早く、小さなベルの体を祭壇から抱き上げる。
 ベルはさらわれることに戸惑いもせず、オウルにしがみつく。
 遅ればせながら、祭壇脇にひかえていた司祭たちの捕まえようとする手から逃れて、暗い深淵に向かってオウルは走った。

 真っ暗な闇に向かって、そのまま加速する。
 ためらいは微塵もなかった。
 腕の中のベルを見た。

「一緒に逝こう」
 ずっと側にいるからと笑いかけたら、ベルもコクリとうなずいてオウルの背中に腕をしっかりと回した。
――ずっと一緒……

 音を持たない可憐な響きを持つ声が、オウルの脳裏に強く届いた。
 真っ青な瞳が喜びに輝き、燃えるように揺らめいていた。

 背中を追ってくるいくつもの声を振り切って勢いよく地面を蹴り、そのまま崖下へと身をおどらせる。
 あっという間に闇に飲みこまれる。

 ゴゥゴゥとすさまじい勢いで風が耳元をすぎ、翻弄される強さに引き離されないようにしっかりと抱き合った。
 暗闇へと、頭からまっさかさまに落ちていく。


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