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Making Twilight

「あなたなんて」

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「あなたなんて、死ねばいいのに……」

 ふっと洩らした言葉にも、彼は動揺すらしない。
 そんなことはわかりきっていたけれど、ほんの少しでいいから揺らげばいいのに。
 そう願う私の心は、銀の食台で揺れる淡い炎のようだ。

「どのような最期をお望みですか?」

 返ってきた聞きなれたセリフに、目を伏せることしかできない。
 あたりまえに答えるのは、彼が人ではないから。

 彼は我が家に伝わるオパールの腕環に棲む魔物だ。
 地位も名誉も財力も、我が家の持つ輝かしい栄光は、すべて彼の力。
 とても強い魔物であるはずなのに、私が生まれるずっとずっと前から契約を結び、私の一族に仕えていると言った。

 瞳は妖しく揺らめくオパール色。 
 艶のある黒髪に白い肌。黒い服に白い手袋。
 相反する色彩を鮮やかに見せるその表情は、冷淡でいてなまめかしい。
 おもわず見入ってしまいそうな美貌から、ついっと視線をそらせた。

 そんな私を気にすることもなく、彼は淡々と語り始める。

「例えば、赤い盃に血を満たし」
 透明なグラスに、芳醇な香りを放つ赤いワインがなみなみと注がれた。
 本物の血のように、濃厚なピジョンブラッドの色彩が闇の中で揺れる。

「銀のナイフで、この胸を切り裂くのもいい」
 何でもないことのように囁きながら、目の前でローストビーフを切り分けた。
 流れるように鮮やかな手並みで給仕をする彼は、一瞬すら手を止めることはなかった。

「それとも可憐なその唇で、この喉を食いちぎりますか?」
 ピクリ、ピクリ、と体を震わせる私に、チラリとまなざしを向ける。
 その表情には、酷薄な笑みが刻まれていた。

「やめて。死が何かも、理解できないくせに」
 ああ、やはり彼は魔物なのだと思い知る。
 やわらかな声音なのに、そら恐ろしく禍々しいことを平気で口にする。

「ご不満ですか? 死はなくとも、滅びはあるのですよ」

 優しく囁く調子の言葉に、おもわず細いため息が零れ落ちた。
 広すぎる食卓。
 家族などいない、ひとりきりの大きな館。
 没落したも同然の血筋なのに、どんな贅沢をしても使いきれないほどの財を、父が遺したのは彼の力だ。

 彼が滅びたら、私はどうなるのだろう? 

 豪勢な晩餐が用意されていても、まったく味がわからなくなってしまった。
 どれほど強い力を持っているのか、私には想像もつかないもの。 

「デザートは何をお持ちしましょう?」

 望みさえすれば、彼は何だって用意するけれど。
 願いにも望みにも代償が必要なのだ。
 運命を変えるほどの大きな願いには、それにふさわしいだけの贄。
 小さな願いには、それにふさわしいだけの痛みを。

「いらないわ」

 吐き捨てるように言い捨てて横を向いたけど、ふふっと彼は妖しく微笑んだ。

「晩餐からデザートを外す。それがあなたの望みなのですね?」
 違う、と言いかけたけれど、フッと近づいた影に言葉が凍りついた。

「それとも、別の甘さをお求めですか?」
 カァッと頬に血が上るのを止めることができなかった。

 冷たく長い指が、優雅なしぐさで私の顎に触れた。
 顔をそむけたかったのに、たやすく上を向いてしまう。
 ふがいないと自分の愚かさに唇をかむべきか、待ち焦がれるようにまぶたを閉じるべきか、しばらくの間動けなかった。

 彼の妖しく輝く瞳は簡単に、私の誇りも矜持も奪い取っていく。

 使役するのは私なのに、この美しい魔物に心を囚われていた。
 腕輪の主人として命じれば彼を思いのままに操れるけれど、彼にとってはただの主人でしかないことが口惜しい。
 なまじ近くにいるから翻弄されるばかりで、永遠に手に入れられない存在だと思い知るばかりだ。
 だけど彼は古い契約により、私の一族の血が続く限り永遠の下僕だという甘美な痛み。
 囚われているのも、縛られているのも、はたしてどちらなのだろう?

 淡い蝋燭の光の中で頼りなく揺れている。
 晩餐には不似合いな甘い香りを漂わせる白い花。
 花言葉は確か、危険な関係。

「あなたなんて……」

 言葉を奪う口付けを、甘く香るチューべローズの花だけが見ていた。


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