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短編集 恋の卵

夜間水泳 第三話

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 七月七日。
 時間なんてあっという間に過ぎる。
 指定された二十三時まで、あと十分!

 そういえば、今夜は新月だっけ?
 月がないから真っ暗だ。
 こんな時間に出歩くだけで、いつもの私じゃない。
 何かあったら佐久間を恨んでやる。

 なんて思いながらも。
 誰にも会いませんようにと願いながら、自転車を全力でこぐ。
 水着の上にパーカーとショートパンツを着こんで、深夜に疾走するとは思わなかった。
 バーカバーカと百回言っても足りないのは、佐久間じゃなくて私かもしれない。

 知らず、笑いだしそうになっていた。
 変態に出会ったとしても、降りきれるぐらいの猛スピードで夜を自転車で疾走するなんて。
 そのありえなさが中学時代のあの頃にタイムスリップしたみたいで、楽しいとキラキラとで埋まっていく感じ。
 真夜中のプールに忍び込んで水泳大会をしても、見つかるわけがないと信じていた、あの無謀な冒険心に似た気持ちがムクムク湧いてくる。

 もちろん、そんな奇跡が起こるわけもなく。
 しっかり宿直の先生に見つかって、こってり絞られたのは痛い記憶だ。
 夏休みを棒に振ってしまうありえない体験になったのに、俺たちは休みでも離ればなれにならない無敵のクラスだなんて、調子のいいことを言う佐久間を恨む奴はいなかった。
 やっちゃった、とか、ばれちゃった、とかそのていどの認識で、運命共同体になったおかげかクラス全 体が妙に仲良くなった気がする。

 真夜中のプール。
 懐かしいけど、ドキドキする。
 佐久間の奴、四年前から全く成長してないなんて。
 この角を曲がって、坂道を登れば、中学校だ。
 ダメよ。ここで爆笑したら、私が変態そのもの。
 さぁ、あともう少し!

 坂道を登りきり、固く閉ざされた校門が見えた。
 そのままフェンス沿いに自転車を走らせる。
 きっと、プール横にみんな集まっているはず。

 私の予想は、見事に当たった。
 懐中電灯がこっちだというようにチカチカと点滅するので、そちらに向かう。
 声をひそめていたけれど、結構な数の人影が闇の中にいた。
 クラスの半分とまではいかなくても、四割ぐらいは集まっているみたい。
 懐かしい顔ぶれ……のはずだけど、明かりがないので顔が見えない。
 それに大人サイズに育っているから、誰が誰だか体格では判別できないし。

「遅いぞ、今すぐ怖がれ」
 懐中電灯を顔の下から照らして怒った顔を作る、ベタな佐久間の子供じみた行動にバカじゃないのと思わずつぶやいた。
 言動に成長がないので、変な顔としか思えなかった。
「勝手なことばっかり言わないで。待ち合わせまであと二分あるもの」
 ほら、とスマホを取り出して時間を見せつけると、ブーッと佐久間は拗ねた。
「だって、おまえが最後なんだもん」

 あのね……だもんって。
 私よりもはるかに背も高くて、明らかにいかつい大人顔に成長した奴が、くねくねと身をよじっても、気持ち悪いだけだから。
 理性を総動員して、そんなとがったつぶやきを私は封印する。

 久しぶり、とひとまずそろった面々とあいさつを交わす。
 ちょくちょく会う子もいたけれど、数年ぶりに再会する子も結構いた。
「もしかして地元に残った子、全員集まった?」
 そう聞いたら、うんそう、となんでもないことのように返事が返ってきた。
 それって、もしかしなくてもすごいことだよね。
 なんだか感動してしまった。
 ただ、小さな懐中電灯を回しながら自己紹介をする形なので、怪談とか肝試しに似て妙に落ち着かない。

「聞くだけムダかもしれないけど、ちゃんと、許可取った?」
 その答えによっては、これからの行動が変わってくる。
 なんて思っていたら。
 ブフッといくつもの吹きだす音と、やっぱり、という声がいくつも上がる。
「森ちゃん。今でも委員長やってるね~言うと思った」
 クスクスとさざめくようなたくさんの笑い声が非常にひそめられているから、私は肩をすくめるしかなかった。
「聞くだけムダだと思ってたけど、やっぱり許可、とってないんだ」
 バカじゃないの、と思わず本音が出ていた。

「許可なんてムリに決まってるだろ。まだ、夏休みにも入ってないんだぜ」
 言うだけムダムダと、妙に自信たっぷりで佐久間が胸を張るから、バカじゃないの、と連続で漏らしてしまう。

「いやだぜ、帰るなんて」
 ここまで来て引き下がれるか、なんて佐久間が言うので、わかってると私は答えた。
「いい? 飛び込み禁止。プールサイドには絶対座らないこと。とにかく水に同化。ゲームのミッションと同じだけど、リセットボタンはないからね。静かに決行するわよ。久しぶりに会ったからって羽目を外すと、私たち、見つかった時点で犯罪者だから」
 泳ぐのも音をたてず、歓声もあげず。
 密やかに水に同化するのよと、我ながらハードルの高い要求を述べてみる。

「いいじゃん、忍び込んだ時点で犯罪なんだから」
 けろっとしてそんなことを言ったのは佐久間だ。
 こいつ、やっぱりバカだ。
「よしてよ、騒ぐ気なら、私は帰る。犯罪者には一人でなって」
 ね? と周りに同意を求めると、集まっていた人たちがウンウンとうなずいた。
「捕まりたくないよな、さすがに」
「ちょっとスリルがあって、楽しければそれでいい」

 さすがは中学時代に夜間水泳をした仲間だ。
 誰一人帰ろうと言いださないし、私のむちゃな要求にも異議を唱えない。
 非難がましい声をあげているのは佐久間一人。
 ビーチボールを持ってきたのにと名残惜しそうにバックをなでているので、わざとらしく無視しておいた。 
 切り替えの早い奴だから、構うだけ無駄。

 行くわよと言ったとたん、よし! と先に立って歩き出すのは、やっぱり佐久間だった。
 変わらないね、と言うべきか、ポジティブだね、と言うべきかもわからなかったけれど、久しぶりに会った級友たちと苦笑したのは言うまでもない。

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