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風の顎(かぜのあぎと)

第一話

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 オウルには翼がなかった。
 それは「翼種族」として致命的な欠陥だった。

 翼種族は人と同じ姿で誕生するが、大きな差異があり背中に翼の種が埋まっている。
 通常なら乳児期が終わるあたりで、翼の種が発芽する。
 肩甲骨のあたりから芽吹く大きな翼はとても美しく優雅で、険しい山岳の奥深くにひっそりと住まう神秘の一族に相応しい姿だった。

 ただ、オウルの種は発芽しなかった。
 理由はわからない。
 今もまだ鳥の卵ぐらいの大きさの種が、背中に埋まっている。

 こんなことはとても珍しい。
 種を持たずに生まれる者の先例はあるけれど、発芽しないというような不具の例は過去になかった。
 触れるとかすかに脈動して種が生きていることを伝えてくるので、ほんのわずかだが翼が生える可能性は残っている。

 飛べない者は山の神への生贄となるのが通例だったが、種が発芽するわずかな可能性とたった一つの特技のおかげで、オウルはまだ生かされていた。
 本来なら翼がなければ生きていけない厳しい環境の中で、司祭の保護のもとで歳月を重ねながら、今年で十二歳になる。
 沈んだ眼差しは既にさめきっていて、希望に満ちた少年の物ではなかった。

 オウル自身は、司祭の語る発芽の可能性などカケラも信じていない。
 多分、この先も飛べないまま生きていくのだろう。
 そんなふうに思いながら、オウルは星空を見上げた。

 星見台にいるのは、オウル一人だ。
 きらめく星が空いっぱいに広がっているはずなのにおぼろにゆらいでいる。
 ふもとから吹きあがってくる霞のせいか、ひどくくすんでいる気がした。
 それでもオウルは、にじんだ星の姿をハッキリととらえることができるし、闇の中でも草の葉が風に揺れる様子や、小さな虫が露を飲む姿を見ることができた。
 これが、たったひとつの特技だ。

 闇夜の中でも鮮明に世界を見ることができる能力は、一族の中では貴重な異端だった。
 翼種族は夜目が利かないので、闇の中でも動ける者はオウルの他にいない。
 そのおかげで永遠に翼が芽吹かなくても、神の声を聞くために必要な星の動きを記載する役目を果たせるし、そのためだけに生かされるだろう。

 喜ぶべきか、悲しむべきか、オウルにはわからなかった。
 死にたい訳ではない。
 それでも翼のない姿のままでは、生きている意味が見つけられない場所に住んでいることは否めなかった。

 他の誰にも果たせない役割を与えられているはずなのに、ここは自分の居場所ではないとどこか気持ちは沈んでいく。
 切り立った崖の下に広がる深淵と、吹きすさぶ強風の悲鳴だけが、くすんだ星空をさらに暗くよどませていた。


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