短編集 恋の卵

これも一つの愛の形 最終話

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「貸して」
 私は手を差し伸べて、将也から櫂を奪った。
 こぐのは僕の役目だよ、と子犬みたいな情けない顔をするので、フッと鼻で笑ってやる。
「この寒空で、ただ座ってるだけなんて、私のやることじゃないわ。大人しく譲りなさい」
 え~と不満そうな声をあげたけれど、問答無用で私はこぎ始めた。
 もちろん陸地に向かって。
 真冬の池の上にいるなんて、どんな理由があろうと凍死への道まっしぐらだ。
 とにかく動いて、凍えた身体を温めなくては。

 せっせと忙しくこぎ続ける私に、将也はショボンと肩を落とした。
「今日は僕がエスコートしようと思っていたのに……」
 気にしないの、と私は笑った。
「こんな寒い場所にいたんだから、風邪でも引いたら看病してちょうだい」
 今は一人暮らしだから頼るわよ、と付け足すと、将也はパッと顔を輝かせた。
「うん、任せて! 僕、看病は得意なんだ」

 よしよし、そうやってわんこみたいに笑ってなさい。
 任せるわ、と私も笑ってあげるから。

 可愛い奴め、と思ったけれど。
 翌日から熱を出したのは、将也だったりする。
 大好きなプリンを買って看病に通うのは私の役目。
 ごめんねごめんねって、熱っぽいうるんだ目で見上げながら私の手を握る。

 私? 私は当然ながらピンピンした健康体だ。
 免疫機能が最強だと、子供のころから自慢できるほど病気には縁がない。
 それに、寝込んでる場合じゃないし。
 将也の面倒を見れるのは、私しかいないもの。
 ホント、ほっとけない奴なんだから。
 かわいいけどね、まったくもう。

 これも一つの愛の形。
 そういうことにしといて。

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