「短編集 ちょっぴり異世界」
風のように鳥のように

第22話 自由の翼 最終話

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 穏やかな状態だった巨大船とは違い、大きく上下に揺れる甲板に翻弄されながら、私はゆっくりと魔女へと近づいた。
 穏やかな瞳があの頃と変わらず、私を見つめていた。
「お元気で何よりです。ずっと、あなたにお会いしたかった」
 膝をついてゆっくり告げた私に、ホッと魔女は軽く笑った。
「あの程度の災禍、予知できぬわけがあるまい。我も侮られたものよ」
 なるほどと思ったけれど、変わらぬ口調に心がほころんだ。
 八年もたってすっかり大人になったつもりでいたが、やっぱり子供の頃と魔女に対する気持ちは変わっていないのだ。

「あなたは魔女ではなく、師であり友ですから」
「言うようになった」
 朗らかに魔女は笑った。
 何のためらいもなく笑う姿に、私もつられて笑った。
 船上にいたすべての人も私たちにつられたのか、なんのてらいもなく笑っていた。

 ここは初めての場所で、はじめて出会う人ばかりなのに。
 自分のいるべき場所に帰ってきたと、そう思った。

「親父、これからどこに行く?」
 ナナの気楽な問いかけに、大男が肩をすくめた。
「船長って呼べや、バカ野郎」
「おっさんだろ、ただの」
 うるせ~と大男はぼやいた。
 少しは敬いやがれと毒づきながら、迷いもなく太陽の昇る方向を指差した。
「東に決まってるだろ、バカ野郎が」
 そうだろ? と私に同意を求めるので、ハイ、と素直にうなずいた。

 素直で上等だと妙な喜び方をして、少し休んだら櫂と帆の扱いを教える、と彼は真顔で言った。
「悪いがおばあ以外は必須なんだ。一人きりでも船を動かせないと、全員が死ぬからな」
 それが海上の生活なのだ。
 私は緊張の面持ちでうなずいたけれど、朗らかなナナの笑いが吹き飛ばす。
「そんなの私がいくらでも教えてやるよ! 親父は教えるの、下手すぎるからさ」
 なんだとぅ~とムキになって言い返す男に、ナナが舌を出してからかっている。
 姿形は似ていないけれど、本当の親子みたいな掛け合いだった。
 思わず笑ってしまったが、いつものことなのか他の男たちは聞かないふりをして、それぞれの持ち場についていた。

 魔女がゆっくりと杖を置き、船員たちは手に手に櫂を持った。
 もう少し休めと言われたけれど、私もお願いして定位置につく。
 はじめの一漕ぎは、波頭を軽く削っただけだった。
 水をかくのは重く、リズムを合わせるだけでも難しい。
 それでも私は櫂を手に、今から自分の力で船を動かすのだ。

 七つ目の大陸を目指す。
 ナナの故郷を探すために。
 幼い頃からの夢を叶えるために。

 そして、私たちは冒険に旅をはじめる。
 海を渡る長い長い旅だ。
 どこまでも続く海の果てを探し、自由の翼を広げる。

 風のように、鳥のように。

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