「短編集 ちょっぴり異世界」
風のように鳥のように

第18話 自由の翼 1

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「おい、なんだあれ?」
「気味が悪いな、囲まれてるぞ」
 そんな声が聞こえて、ハッと私は正気に戻った。
 いつのまにか、過去へと心を飛ばしていたようだ。
 死んだはずのナナと魔女の記憶は、私にとっては衝撃が大きかったようだ。

 甲板上にいる人々がなぜか船縁に集まり、身をのりだすようにして海面を見下ろしている。
 イルカの声もいつのまにか途絶えているし、もしイルカの群れであれば禍事のように騒ぎ立てるはずがない。

 何をそれほど怯えているのだろう?
 不思議に思って私も船縁に歩み寄り、海面を見下ろしてギョッとした。
 三角の背びれを見せながら、大きな魚影が無数にいた。
 サメだ。
 それも小舟に見紛うほどで、人よりも確実に大きい。
 何匹いるのだろう?
 私が乗っているのは巨大な船だが、すっかり囲まれている。

 もっとも海に落ちない限り、サメに脅かされることもないが。
 確かに気味は悪いが、騒ぎ立てるほどではないだろう。
 数えるのも嫌になって、船室に戻ろうかと思案する。
 陸地もすでに見えなくなっている。
 海はサファイアの青さに輝いているが、それをまばゆいと思える心境ではなかった。

 船縁を離れかけたとき、再びざわめきが起こった。
「あれを見ろ」
「近づいてくるぞ」
 次から次へとあがる悲鳴に似た声に、騒がしいなと思いながら騒ぎの元である船尾に近づき、乗客たちが指差している方向を見た。

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