「短編集 ちょっぴり異世界」
風のように鳥のように

第13話 ナナ2

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 私は思わず息をのんだ。
 現れたのは一人の少女だった。
 私とそれほど歳は変わらないだろう。
 人形かと思ったが、軽く胸が上下していることで、眠っているとわかった。
 薄紅色の花びらを重ねたような見たこともない衣装をまとっている。
 ワインのような赤い髪が目に鮮やかだった。
 白い肌は肌理が細やかで、胸の上で両手を軽く指を組み、そっとまぶたを閉じていた。

 魔女はしばらく思案していたが、私に家に帰るように命じた。
 追い払おうとしている気配を感じ、この子をどうするのかと食い下がると、軽く肩をすくめた。
「この婆に任せよ。よいか、誰にも言ってはならぬ」
 ピリリと空気が張り詰めている。
 さぁ、と帰るように強くうながされた。

 いつになく鋭い魔女の視線に気おされてしまい、私はただうなずくしかなかった。
 このとき、はじめて魔女のことを、恐ろしいと思った。
 言葉を塞ぐ緊迫した空気がたちこめ、反論はなに一つ思い浮かばなかった。
 とぼとぼと砂浜を離れ、馬に乗る。
 駆ける前に振り返った。

 魔女は眠る少女の横に立ち、沖を見つめていた。
 背を向けているので表情はわからない。
 自分以外の全てを排除するような空気に、思わず身を震わせる。
 冬は遠いのに、なぜか寒くて仕方なかった。
 魔女が別れる瞬間に私を見ないのも、はじめてのことだ。
 海に目をやり、遠く遠く遥か彼方に心まで飛ばしているようだった。


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