「短編集 ちょっぴり異世界」
風のように鳥のように

第11話 岬の魔女 5

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「では、確かめて、なんとする?」
「わかりません……ここに、また来てもいいですか?」
 きっと、いいよ、と了承を得られると思ったのに、私の想像は外れた。
 岬の魔女は、緩やかに首を横に振る。
「ならぬよ。魔女と呼ばれる者になど、関わらぬが得策」
 来てはいけないと強い口調で続けた。
 それがしゃくにさわって、ツンと顎をあげる。

「また来ます」
 強く私が言うと、少し魔女は困った顔をした。
「子供のようなことを……知恵はあっても愚か者よ」

「子供ですから、間違いなく」
 魔女は本格的に肩をすくめた。
 言っても聞かないとあきらめたのだろう。
 表情は薄かったが、それでも私に向ける感情が温度があったので、子供らしく「サヨナラ」と元気に手を振って別れた。
 魔女は手を振りかえすこともなかったが、入り江から出る時に軽く振り返ると、私に視線を当てていた。
 見送ってくれるのが嬉しくて、大きく手をふったのを覚えている。
 人に聞くよりもずっと親密感のある魔女と話せたことで、気持ちが高揚して楽しいばかりだった。
 新しい友を得た感覚で、馬の駆け足と同じく気持ちもリズムよく跳ねていたのだ。

 それから私は、時間があれば魔女の元へ通った。
 家をこっそりと抜けだすのも楽しかったし、魔女との時間は思考や知識を掘り下げる問答の時間で、私の好奇心を常に満たしていた。
 家庭教師などとすごすより、ずっと世界の真理に触れることができた。

 魔女は私との問答を嫌がりはしなかったが、喜びもしなかった。
 語っている間は楽しんでいる調子でも、帰る前には必ず「もうここにきてはいけない」と付け足すことを忘れなかった。
 それが何を意味しているか、物事にうとい私に推し量ることができなかったのが残念だ。

 本当に子供だったのだ。
 同年代の子よりも多く得ている知識ばかりに向けていた。
 自分が聡いと勘違いし、周りに目を配ることができないほど幼かったのだ。
 今となっては、言い訳にしかならないけれど。


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