「短編集 ちょっぴり異世界」
風のように鳥のように

第10話 岬の魔女 4

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「では、喜んでなんとする?」
「それは……申し訳ない。そこまで考えていませんでした」
 思わず頭をかいて苦笑いになった私を、魔女はヒタと見据えた。

「知識は尊い。しかし知は己の無知を暴き、時に絶望を与える。ペレウスよ。それでも、この婆を知りたいかえ?」

「それが、魔女と呼ばれる理由ですか?」
 ほう? と魔女は面白げに首をかしげた。

「神殿の長が言っていました。希望を呼び起こす言葉を選べば聖女となり、絶望を知らしめる言葉を選べば魔女になる。どちらが真実に近いか、誰にもわからないと」

 ゆっくりと魔女はまばたきした。
 小さく口元が動き、声は聞こえなかったけれど、なるほど、とつぶやいた気がした。
「神官の受け売りにしては芯がある。ペレウスよ、何を求めてここに来た?」
 私に対する興味が、変化するのを感じる。
 適当にいなして帰そうとしていた軽い雰囲気ではなく、グッと迫る強い眼差しに見つめられ、私は一つ息をのみ込んだ。

 英知をたたえた瞳が続きを促していた。
 ここで適当な嘘を口にすると、魔女は私と本気で話すことは二度とないだろう。
 なんとなくそう感じてしまう。
 どう言えば魔女の気をひけるか色々と思考を巡らせたけれど、結局肩を落とすしかなかった。
 適当な嘘は何を言っても通じない気がした。

「たぶん、私は確かめたいのだと思います。あなたの言う、希望と絶望の持つ意味を」
 同じことについて語っても、大きな差が生まれるのは何故なのか。
 いままで神官の言葉しか聴く機会がなかったから、魔女の噂にも惹かれたのだろう。
 かといって、なにがなんでも聞いてやろうと強い思いを持って、ここに来たわけでもないのが弱い部分だけれど。

「たぶん、かえ?」
 正直に心情を吐露すると、ホッと声をあげて魔女はおかしそうに笑った。
 それが悪感情ではなく、いまだに向き合っている気配も感じたので、私は胸を張った。
「たぶん、です」
 一拍の間があったけれど、魔女は納得したようだった。


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