「短編集 ちょっぴり異世界」
風のように鳥のように

第3話 邂逅 3

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「そう見えるのかい?」
 手の中にある果実酒をゆらしながらなんとなく投げかけてみると、少年はマントの奥でひそやかに笑った。
 どうやら面白がっているらしい。
 楽しそうな調子で自分の酒をちょいちょいと口元に運びながら、給仕を呼びとめて果実酒の小壺を持ってこさせた。
 酒に強いのか、ゴブレットの中身が空になると、自分で継ぎ足している。
 ランプを背にしているせいで表情は垣間見ることもできなかったが、動作からイルカに似たのびのびとした印象をうける。

「君の夢は、変わってない?」
 ふいに問いかけられて、私は驚いてしまった。
「……夢?」

 ドキリとした。唐突過ぎて取り繕うことを忘れる。
 今、埒もない考えなのに捨てることもできず、グダグダとつい先ほどまで沈みこんでいた。
「夢って……君」
 戸惑いがそのまま言葉になった私に、ハハッと少年は声を立てて笑った。

「いつか海を越えて東に行くって、子供の頃の夢」
 その朗らかさに、私もつられて笑ってしまう。
 変わり映えのしない子供らしい夢だと思ったのだ。

「ああ、スズリアナ国の子供なら、誰だって夢に見る。東の国と交易する商人にあこがれるものさ」

「小さいなぁ」
 即座に私の言葉を切り捨てながら、少年は私のゴブレットに果実酒を注いだ。
 気にしていなかったが、いつのまにか飲み干していたらしい。
 あまり強くないのでためらいつつも、今日が最後だと思ってその酒を口に運んだ。
 私が飲んでいた酒よりも遥かに濃くて驚いた。
 アルコールがポッと喉の奥に軽い熱を生み、果実のほのかに甘い香りが身体を満たしていく。

「もっと大きな夢を見たくないの?」

 涼やかに斬りこんできた言葉は、悪魔のささやきに似ている。
 あきらめようと努力している部分に触れられ、ほのかに酔っていることも手伝って、つい睨みつけてしまった。
「君になにがわかる」

 ククッと少年は喉の奥で笑った。
「僕はね、まだ誰も見たことのない七つ目の大陸を探す」
 少年は手の中のゴブレットの中身を勢いよく飲みほした。
 ほろ酔い気分の私とは違って、酒に強いらしく先程からぐいぐい空けているのに、口調にも動きにも変化がない。
 実に気持ちのいい飲みっぷりで、フードで隠れているのは爽やかな表情だと、容易に想像できた。
「夢で終わらせない。たどりつくよ、必ずね」


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拍手お礼 1月23日 akoさま

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