短編集 ちょっぴり異世界

言祝ぎを 3

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 また、少々度の過ぎたいたずらなどをすると、納屋の奥にある穴に入れられました。
 冷気に当たると腐るサツマイモなどを貯蔵するために掘られている穴です。
 それはけっこうな大きさで、弟は暗闇と閉所恐怖症になりました。
 成人になるまでは、トイレの扉を閉めることやエレベーターなども調子の悪い時は恐怖の対象で、気分が悪くなったそうです。
 弟が怖がりだった訳ではありません。
 今、覗いてみれば昼でも恐ろしげな穴ですから、普通の反応です。
 そんなところは、子供ならば普通は怖がって罰になるものです。
 
 私はなぜかケロッとしている。
 自分から入ろうとすることもあるので、不思議に思って母は私を仕置きする日に納屋を覗いたそうです。
 そうすると、穴の中からキャッキャと楽しそうな笑い声がする。
 誰と話しているのかわからないけれど、一人遊びにしては会話にも聞こえるし、かといって声をかけると仕置きの意味もなくなる。
 悶々としながらその場を去って、静まった夜中にそっと穴を覗いたそうです。
 
 クークーと寝ている私の上に、子供の腕ほどの太さのある白い蛇がいて、クルリと振り向いたとか。
 真っ赤な目がジーッと凍りついた母を見つめて、悠々と穴の奥に消えたそうです。
 ギャーッと叫んで私を部屋に連れ帰り、その話をしたら曽祖母や祖父はケロッとしていたそうです。
 それは家の守り神様だから、別にいいじゃないか。
 神様に遊んでもらえてよかったねぇなどと言われても、そうだねなどと簡単に信じられないのが現代です。
 それからいたずらをしても、あの穴に入れられることはなくなりました。
 喜ぶばかりで、罰にならないとの判断もあったのでしょう。
 
 白い蛇は覚えていませんし、爬虫類は苦手です。
 だけど、どこかツルリと堅いモノがふんわりと覆いかぶさる、不思議な感覚は残っているのです。
 それに穴の中は真っ暗闇ではなく、ぼんやりとランプの炎が揺らめくような薄明るさで、ただあたたかかった記憶もあるのです。
 灯りなど、何一つない場所なのに。
 暗闇はどこか温かい記憶に満ちて、私は安らぐのです。
 
 そういう不思議なモノは平気なのに、幽霊の類は非常に恐い。
 まるで別のもので、頭皮の奥からキンと突き刺さって感覚が凍りそうになる。
 旅行先などいけません。
 広島のホテルで一番角の部屋なのに、非常階段しかない方向から、一晩中ポタポタと水の滴る音と女の人の泣き声が聞こえたりする。
 五階の窓の外から笑い声が聞こえたり、カーテンを閉めても外が一晩中ボーっと明るかったり。
 とにかく、なんだろうと確かめたりすると憑かれてしまいますから、見えない、聞こえない、気にしないと唱えるしかありません。
 払う方法も知らないのですから、自分から関わらないのが一番なのです。
 
 幸いなのか、災難なのかはわかりませんが、数年前に病にかかりました。
 それからは不思議と見えないモノにはちょっかいをかけられません。
 まったく感じないし、記憶や体験が欠けることもない。
 感じる力が落ちたのか、不健康な者は助けにならないとわかるのか。
 どちらにせよ、お互いにとって今は平和な状態です。


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