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短編集 ちょっぴり異世界

言祝ぎを 1

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 私の生まれ育った家は、僻地と呼ぶに相応しい田舎にある、古い家です。
 辿ればとても古いとわかる家柄らしいのですが、気にしているのは祖父の代までで、亡くなった今では気楽なもの。
 母など嫁いだ当時は色々と嫌味を言われたそうですが、私などは畳の縁を踏んでも怒られませんでしたから、時代の変化があったのでしょう。

 私が生まれた時には、すでに栄華な暮らしの面影はなく、使用人の一人もいません。
 寝物語のように、そんな時代があったと聞くだけです。
 ただ、暮らす家自体も明治の始めに建築された、それなりに古い大きな家でした。
 家自体も修復にかけるだけの余裕がなくなり、だましだまし使っている状態でした。
 それでも、遊びに来た友人などは驚くのが常でした。
 明治か江戸に踏み込んだようだと。
 その意味がわかるのは、友人の家に遊びに行くようになってからでした。

 玄関を開ければ土間があり、お風呂は大きな鋼の五右衛門風呂。
 体重の軽い子供の頃は踏み板がなかなか沈まないので、フワフワ浮かぶばかりで湯につかるまでに少し時間がかかったものです。
 上手に真ん中に立たないと傾いて鋼に身体が当たって熱い思いもしますし、大人になればお風呂も簡単に入れるのになぁなどと考えたものです。

 囲炉裏はありませんでしたが、掘り炬燵はありました。
 台所にはかまどと細い煙突がありました。
 もちろん日常はガスを使っていましたけれど、筍をゆでるとか、おこわを作るとか、当たり前にかまどを使っていましたので、他の家にないことを知ったのは、ずいぶん大きくなってからの事です。

 大きな家は掃除一つでも家人の手にあまり、子供とはいえ毎日の仕事がありました。
 手伝いではありません。
 仕事のレベルで、手を抜くと食事を抜かれるなどのペナルティがあります。
 ただ食事がないだけではなく、皆が食べ終わるまで食卓に座り続けることは求められるので、子供にとっては精神的に痛い罰でした。
 罰が嫌で、それは一生懸命に取り組んだものです。

 私の仕事は薪を使ってお風呂を焚くことや土間の掃除。
 かまどの番も与えられていました。
 種火を絶やさぬように、ずっと火を守るのです。
 マッチもライターもありますし、なぜ火を絶やさないようにするのか、本当に不思議でした。

 ただ、火を消すとかまどが死ぬのだと、曽祖母に教えられた気がします。
 女の子は、火の神とかまどの神に好かれるといい事がある。
 かまどが死ねば、家も死ぬのだと、そんなふうに言っていました。
 私にはわかりませんでしたが、ただそういうものかと思ったのです。
 
 かまどの番とは、火の守をするだけではありません。
 かまどの神を祀る仕事と、炊きあがったばかりの白米を先祖に供えることも任されていました。
 頂き物をお供えするのも私の仕事。
 おかげをもらうと言って、供え物を引き下げて家族で分けるのも当たり前でした。

 ただ、私の役割は他の兄弟とは違って特殊なものなので、水には気をつけろときつく戒められました。
 火の神様につながる子供だから、家の裏の井戸や、庭の堀には近づいてはいけないと。
 川もせせらぐだけの小川ならいいけれど、大きな川に入ってはいけない。
 かまどの神様は幸い水の神様に嫌われていないので、水の恵みとおかげをもらえるけれど、火の神様だからね、水はいけない。
 恵みをくれる小さな水はいいけれど、大きな水はいけないのだと。

 よくはわかりませんが、ただ水は自分にとって悪いものだと意識づけされました。
 ですから初めての真夏のプールの授業に、ただただ怖いと泣き叫んで担任を困らせたそうです。
 まぁ、そうでしょう。
 この時代、火の神様や水の神様の話を持ちだしたり、私はかまどの神様と仲良しだからプールに入ると死んでしまうなんて言われて、納得する人はいません。
 結局は海よりプールは小さい水だと言い聞かせられ、実際に泳げるようになるまで数年かかりました。
 私自身もその認識の差が苦痛でしたが、先生方から見てもかなり毛色の変わった問題児だったと思います。

 当たり前が違うというのは恐ろしいものです。
 私の「当たり前」は他の人と違うモノばかりで、その理由も普通の「当たり前」を外す人と、まるで違うのだと知っていますけれど。
 今も昔も、その差は埋まることはないのです。

 そんな私も今では「当たり前」に、海や川に行きます。
 子供の頃の、あの緊迫した死に立ち向かうような決意はありません。
 でも、やはり水の中に沈むには妙な緊張感を持って、遊ぶにも浮き輪などのアイテムがないと落ち着きません。
 どうせ水につかるなら、温泉がいいと思ったりするのです。


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青木しょう様に捧げます。

2月に書いて、掲載を忘れていた作品です。
整理をしていて、見つけました(今頃;;)
エッセイと言っても誰も信じないと思う、ちょっぴり不思議な話です。たぶん。
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