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短編集 ちょっぴり異世界

永遠に覚めない夢を見る・前篇

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 彼女は、博物館の隅で眠っていた。
 静かに、眠り続けていた。
 永遠の眠り。
 誰ひとりとして関わることができず、ひっそりと息をひそめて、見守ることしか許されない。

 淡い光に照らされている彼女をはじめて見たのは、僕が七歳の頃だ。
 中世と呼ばれる時代の、キラキラした物があふれた特別展を見たいのだと、はずんだ様子の母に博物館へ連れて行かれた。
 走ってはいけないとか声を出してはいけないとか、禁止される行動ばかり言いつけられてしまい、遊びたい盛りの子供だった僕にとって、博物館はハッキリ言って面白くない場所だった。

 どうでもいいな~と思っているうちに人の多さに流され、気が付いたら特別展の展示場から出ていた。
 特別展に再びはいることもできないし、あまりの人の多さに母を探しに突入する気にもなれなかった。
 どこか冷めていた僕は迷子になったと騒ぐ気にもなれず、地域の常設展にフラリと入った。
 博物館になんてまるで興味ないから、自分でもどういう気まぐれかはわからない。
 ただ、目の前に入口があった。人も少なかった。
 その程度の理由だったと思う。

 案の定、常設展にも僕の興味を引く物はなかった。
 たまに響くアナウンスや、ざわついた閲覧者の声や、そういうものをうっとうしいなぁと思いながら、ただブラブラと歩いた。
 時々は綺麗だなぁと思うものもあったけれど触れる訳でもないし、貴重なんだと言われてもよくわからない。
 退屈だと思いながら適当に見て回り、そろそろ母を探そうかと悩みつつ角を回ったとき。
 ありえない光景に出合ったのだ。
 その瞬間、周りの音が消えた、

 人だった。
 ガラス越しに展示されているのは、普通の人だった。
 僕は動揺し、最初は眠っているのかと思った。
 生きている人ではないとわかるまで、どれぐらいかかったかわからない。
 あたりまえだ。
 生きている人間が博物館に飾られる訳がない。
 そんなことは、いくら僕が子供でも知っている。
 人形ではなく死体なんだと理解するまで、更に時間を要した。
 それでも生きていると誤解しても不思議はないほど、美しい死体だった。

 透きとおるような青白い肌。
 ふっくらとした頬。
 物憂げにひそめられた眉。
 わずかに開いた口元は、微笑んでいるようにも、ため息をこぼしたばかりのようにも見える。
 触れたらやわらかくてふんわり暖かなのではないかと思わせる、きめの細やかな白い肌。

 身にまとっている服は、祖母か曽祖母の若い頃の写真のような、今では見ることもない感じの服だったけれど、その姿はまるで生きているみたいだった。
 今この瞬間に目を開けて、微笑んだって僕は驚かない。

 僕は茫然とした。
 こんな綺麗な死体がこの世にあるなんて。
 すぐに僕は傍らの掲示板を見上げたけれど、彼女の名前も解説も読めなかった。
 シンとした静寂の中で、傍らに置かれた阿弥陀像にその身をゆだねていた。
 その阿弥陀像が模造品であることは知っていたけれど、そんなことは関係ないほど厳粛な光景だった。

 淡い光の中で眠り続ける彼女を見ていると、なぜか涙がこぼれた。
 理由はわからない。
 ただ、静かに泣きながら、彼女を見つめた。
 迷子になった僕を、博物館の職員が母に引き合わせてくれるまで、泣くことしかできなかった。


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