「ミルキィ☆ロール」
ホワイト・ノエル

第67話 ホワイトノエル

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「聞いてただろ? 鍵」
「鍵?」

 キョトンとしてしまう。
 自分の思考に没頭していて、まったく聞いていなかった。
「ゴメン、寝てた」
 適当な言い訳を作ると、西条は軽く肩をすくめた。
「俺の仕事は午後からだし、今から少しでも寝る。まる美は出勤するんだから、開けっぱなしはいけないだろ?」

 ポロリ、と私の口からフォークがこぼれ落ちた。
 お皿の上で、カラカラと音を立てて回っている。
 なんだかありえないことを言われてしまった。
 私の聞き間違い、とかならどんなにいいだろう?

 その音が止まる頃、恐る恐る聞いてみる。
「寝るって、うちで? 私、仕事なんだけど」
「だから、合鍵。戸締りしとくから」
 なんて恐ろしいことを言いだすのか!
 泊っただけでは飽き足らず、不法滞在なの?

「じ、自分の家に帰って寝なさいよ」
「だから、遠いんだよ。寝る時間がなくなるだろ?」
 うわ、開き直った。
 しかしここは、断固拒否したい。

「私だって寝る時間減らされてるんだから、我慢しなさいよ~布団だって貸してあげたのに、なんで寝てないのよ」
「寝ぼけて襲ったら、まる美が怒るからに決まってるだろ?」
 これでも健康には自信があるから、なんて頬を染めて妙に視線を泳がせたので、私の方が動揺してしまった。

 あの西条が、赤面?
 気がつくと大人事情と言う状況にならないよう、理性を働かせて我慢していたというのは本当だったらしい。
 その辺りの分別はあるんだ。
 いや、私のことを本当に女だと思っていたとは……知らなかった。
 なんだか身体がむずがゆいような、気恥かしい気分だ。

 我慢してくださってありがとうなんて言うのも変だから、ミルクティーを飲んで深呼吸をする。
「……泊った時点で、怒ってると思わないの?」
 ツンとした口調でチクッと我ながら可愛くないことを言うと、ふわっと西条は微笑んだ。
「なら、お泊り以外は怒ってないんだ」
 よかったと続けたその鮮やかな微笑みは本気に見えて、返す言葉を失ってしまった。
 なんでそんなに嬉しそうなのよ?

 怒りの矛先をどこに向ければいいのか、すっかりわからなくなる。

 確かに私は、怒ってない、かもしれない。
 眠たいからイラつく、なんて言い訳でしかないんだ。
 私の愛してやまないホワイトノエルを手放しで褒めてくれたから、ガッツポーズ取りたい気分だったのも確かだし。
 お泊りなんてなかったら、もっとよかったのにとぼやきつつ、こうして朝食を摂りながら向き合うのは嫌じゃない。


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