「ミルキィ☆ロール」
ホワイト・ノエル

第65話 ホワイトノエル

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 それにしてもおいしそう。
 綺麗な指先の動きで作り出すのは、バターの香りが漂うふわりとしたフレンチトースト。
 疲れている時には甘いもの。
 そんなふうに笑いながら、トランクから冷蔵庫に移していた朝食の材料も次々に取り出したので、あきれる前に感心してしまった。
 本当に私の承諾もなく、泊ることを前提に用意していたらしい。

 自分勝手すぎると思いながらも、私の身体は匂いに正直に反応した。
 見事な黄金色のフレンチトーストが目の前で作られていくのだ。
 フルーツサラダなんてものも用意されて、完成までにあと少しだから、まさに犬の待て状態。
 お腹がクゥッとなって、少しでも早く口に入れたいと気持ちが先走る。
 気持ちがもやもやして仕方ないのに、香りだけで味まで想像できるのが憎らしい。
 た、食べたい。悔しいけど、餌付けと一緒だ。

「西条なんて、大嫌い」
 ポツッと小さくつぶやいたら、聞こえたらしくアハハッと西条は笑った。
「なら、本気でまずいと言えばいい。そうすれば、いくら俺でもあきらめるかもしれない」
「おいしい物はおいしいとしか言えないわよ」
「だろ? それがまる美なんだよ」
「なに、それ?」

 文句を思いつく前に、食べていい、と目の前に朝食セットを置かれた。
 うわ、でた! 食べる芸術……おいしそう。
 焼き色が光り輝くようなフレンチトーストは、食べてしまうのがもったいない。
 いただきます~と手を合わせたけど声が震える。
 顔がほころんでしまうのは、仕方ないよね。

 遠慮なく口に入れると、バターの香りと卵の甘さが口の中に広がった。
 マーマレードジャムまで添えられて、お疲れ仕様なのか全体的に甘めに仕上げてあるので、おかわりなんてしたら確実に太りそうだ。
 そのかわりといってはなんだが、ミルクティーは温めた牛乳の自然な甘さだけ。
 このオレンジマーマレードも、西条の手作りだ。
 香りが市販品ではないし、ほんの少しほろ苦い皮の食感も絶妙である。

 文句なくおいしいので思わず顔がほころんでしまい、ハッとする。
 ニヤニヤしてとろけた顔でいたら、西条をつけ上がらせるのでは?
 素直においしいと表せば、自分勝手な西条の行動も容認しているみたいな気がして、ちょっぴりムッとしてしまった。

 当然と言えば当然なんだけど。
 非常に機嫌の良さそうな西条は、私の苛立ちなんてまるで気にしてない。
 私の表情だけですべて読み取ったらしく、すっかり御満悦のようだ。


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