「ミルキィ☆ロール」
ホワイト・ノエル

第43話 ホワイトノエル

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 私がケーキ屋になりたいと思ったきっかけは、誕生日ケーキなのだ。
 ただいまって帰ってくるお父さんの手にケーキの箱があって、おかえりなんて家族で迎えて、ダイニングテーブルの真ん中にそっと置かれる。
 部屋の電気を消して、ろうそくに火をつけて、ハッピーバースディなんか歌って、気持ちが華やぐ瞬間にあるもの。
 特別ではあるけれど、そこにあるのは日常。

 誕生日じゃなくてもいい。
 頑張った時のご褒美とか、泣いた次の日にお土産になるとか。
 毎日の暮らしの中で、そっと目の前に置かれるような小さなご褒美。

 ふとした瞬間に傍らにあるような、そんなケーキが作りたい。
 家族の輪になるような、絆が深まるような、そんなふんわりと甘い時間が理想なのよ。
 西条の目指している物とは、百八十度向きが違う。

 今でもはっきりと覚えている。
 卒業制作で作っていたロールケーキに、私の手元を見た西条はフッと鼻で笑った。
「そんな、何も残らないモノに意味があるのか?」
 ええ、西条にとってはそうでしょうね。
 それがプロポーズの指輪と、日常のご褒美の差よ。

「私には意味があるからいいのよ。それにね、ちゃんと残るものもあるし。西条の特別は、私には意味がないわ。それと同じなの」
「特別は、特別だよ。その辺にあるものを作る意味があるのか? 本末転倒だろう?」
「ほっといて」

 説明しても、説明されても、そこはお互いに永遠に譲れない部分だって、いい加減に気がついてほしい。
 他の人には取り繕うくせに、私にはなぜか遠慮がないので、西条アレルギーにかかりそうな毎日だった。


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