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短編集 ちょっぴり異世界

はじまりの終わり 1

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「よく見ておけ。お前の帰る場所はない」
 静かな声にうながされた方向に目を向けて、カティアは息をのんだ。
 漆黒の夜の帳の中。
 紅蓮の炎が空を赤く焦がしていた。

 夜風が頬をなでていきすぎる中、ただ見つめることしかできない。
 毛皮の外套は必要のない季節なのに、染み込んでくる死の気配に身体の芯から凍えていく。
 遠く離れているから、燃え落ちる城の音も怒号も届かない。
 しかし、確かな滅びの情景が、そこにはあった。
「……お父様の城が……」
 かすれた声がこぼれ落ちる。

 冬は少し長いけれど、森の女神の恩恵を受ける、緑の恵みの多い祝福された国だった。
 小さくても微笑みの絶えない国だと周辺諸国からも友好的な見解を持たれ、およそ戦の不安がない国だった。
 永遠など誰も信じてはいなかったけれど、それと等しく滅びの時が来ることを想像すらできなかった。
 凍りつくカティアの目の前で、朝と夕に祈りの時を知らせる女神の鐘楼が、ゆっくりと崩れ落ちた。

 今、確かに一つの国が滅びた。
 その現実に、カティアは肩を抱いた。
 これが悪い夢ならばいいのに。
 それでも、冷たい風が無情に頬をなでてすぎるばかりだ。
 どれだけのあいだ、そうして立ち尽くしていただろう。
 ほんの数呼吸の間にも、数十分のようにも感じられた。
 カティアの感覚は、ありえない情景に狂いを生じているようだった。

 ふと気がついたように、カティアは傍らに立つ男を見上げた。
 数日前に父王を訪ねてきた男で、会話どころか近づくことさえこれが初めてだった。
 グリフォン、と父王が呼んでいた。
 褐色の肌と黒みをおびた赤毛が西の国の生まれを示している。
 射るような碧眼は猛禽類を思い起こさせるが、左の眉から頬にかけて鋭利な刀傷がある。
 失った左目を緑色の魔石で補っているため、更に凄愴に見せていた。
 スラリとした長身の男で、口元を布で覆っているため面差しも年齢もわからない。
 腰に帯びた双剣は使いこまれ、戦いを生業としていることだけは一目でわかる。
 カティアは身なりから傭兵だと思ったけれど、父王は違うと言っていた。
 詳しいことは話せないと言っていたので、謎に満ちた得体のしれない男だ。
 どちらにしろ十歳を過ぎたばかりのカティアには、恐ろしい大人の男だとしか思えないのだが。

「お父様とお母様は?」
 わずかな期待を込めて問いかけたけれど、さぁな、とグリフォンの返事は冷たいものだった。
「知らん」
 唇を噛みしめてキッと眼差しをとがらせたカティアに、言葉足らずだったと思ったらしいグリフォンは淡々と語りかける。
「俺はお前を生かすだけだ。それがお前の父との誓約」
「私を生かす?」
 カティアはわずかな引っかかりを感じて、崩れゆく城からグリフォンへと視線を移した。
 父王に「お前が男だったらなぁ」と言わしめた頭脳は、既に十歳という年齢を越えて働いている。
「お前の父には、命の恩がある。その代価としてお前をの命を預かった」
 カティアはその言葉を反芻する。
 数日前に現れたグリフォンと直接語ることはなかったが、初日に父とじっくり話したその後から彼は常にカティアの視界に入る場所にいた気がする。
 それが意味することと言えば、それほど多くはない。
 火竜が王都を囲み暴虐を尽くし始めてすぐ、グリフォンはカティアの部屋の扉を破って現れた。
夜半だというのに亡命するための装備を完全に整えた姿で。

「もしかして、襲撃を受けることを知っていましたの?」
 確信はあったものの、直接口に出すと声が震えた。
 グリフォンは元々の性格なのかカティアの幼い姿を侮ることなく、隠すこともせずに静かにうなずいた。

「お前の父にも知らせた。あの時ならばお前たち全員を落ちのびさせることは可能だった。一度は国を捨てても、命さえあれば再建できると俺は言った。だが、お前の父は命ある限り王であることを選んだ。お前の母も同じ」
「どうして……どうして……わたくしだって一緒に……」
 口惜しげに城を見た。
 すでに半分以上が燃え落ちて、美しかった面影すらない。
 城だけではなく城壁までも赤い炎が舐めるように燃え盛っている。
 もう帰ることができない自分の故郷をまっすぐに見据えて、ひどい、とカティアは小さくもらした。
 握りしめた拳がブルブルと震えている。
 恐れのためではなく、両親や国と運命を望まぬ形で分かたれたためだ。

 その眼差しの強さに、グリフォンは肩をすくめた。
 俺には王族の誇りなど理解できんが、と前置きしたうえでポツリとつぶやく。
「お前も人の親になればわかる」
 慰める調子はなかったけれど、カティアはキッと眼差しをとがらせた。
「わかりません。わかりたくはありません。ひどいことをおっしゃらないで」
 自分に矛先といら立ちが全て向きそうな気配に、グリフォンも強い眼差しで見つめ返す。
 相手が子供だからとはいえ、なぁなぁで適当に丸め込むような性格ではなかった。


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~ Comment ~

NoTitle 

お久しぶりです^^
ファンタジー来ましたね!
ワクワクする始まり方で、テンション上がる♪
気の強い女の子大好き☆

Re: NoTitle 

おひさしぶりですヽ(*´∇`)ノ゚.:。+

このところファンタジー書きたい病です(笑)
なかなか長編を書く時間が取れないので、短編に走ってしまいましたw
私も気の強い女の子、好きなんです~しかも今回はお姫様♪
らしくない姫ですけどねw
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