短編集 ちょっぴり異世界

Love Hunter 3

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 地面を蹴ると壁から壁へと跳ね上がり、すぐさまハルカのいる辺りにとって返す。
 いた。屋根の上から見下ろした。
 すぐにあきらめたりせず、細い裏路地を走りまわっている。
 ふふ、負けず嫌いだから応援も頼まず、一人で頑張ってる。
 闇にまぎれた黒猫を探し出せるもんか。
 後できっと怒られるのに、懲りないなぁ。

 やっぱり、期待には応えないとね。
 そろそろと忍び足で、後ろからハルカに近づいた。
 入り込んだ路地が袋小路だとわかって、抜け道はないかとキョロキョロとあたりを見回しているけど、捜すことに夢中で背中がお留守だ。
 身を低くかがめ、僕の追跡をあきらめる、その時を待つ。

 ハルカがハァ~とため息をついて振り向いた瞬間。
 トウッと飛びかかって、そのまま押し倒す。
 驚いた顔は一瞬だけで、地面に背中が着く直前、ハルカは腰にある手錠を引きぬいた。
 僕を捕獲しようと動いた右手を、間髪いれず鋭く払った。
 はじかれた手錠は、カラカラと音を立ててアスファルトを転がっていく。
 この! とひるむことなく飛んできた左ストレートを、僕は右腕で押さえこんだ。
 グイッと強くその手を踏みつけると、ハウッとハルカは妙な息の飲み方をした。

 理由はわかっている。
 猫化しているから、僕の肉球が直に触れて気持ちいいのだ。
 面倒だとかやってらんないとか公言するくせに、こっそり公園で野良猫をなでたりして、デレッとしている。
 実は動物好きなのだ。どうやら他人にはキャラが違うと突っ込まれるのが怖くて、ばれないように隠密行動しているつもりらしいけど、本物の猫は僕ら猫族とも親しいからよく知っている。

 ほれほれとばかりにフミフミと繰り返すと、ちょっとコラやめて、などとかすれた声でハルカは妙な焦り方をした。
「これ、好きだろ?」
 プニプニの肉球でいたるところを按摩よろしく踏んでみると、もう駄目~やめて~離して~離してよ、などとひどくてんぱっている。この感覚にはそうとう弱いみたいだ。
 もうひと押しで、素の表情を見れるはず。
 ペロン、とざらついた舌でハルカの頬をなめてみた。

 効果てきめん。
 キャーっと悲鳴が上がった。
 ハルカは真っ赤になって、 すっかり警官という職業を忘れている。
 身もだえしている、普通の女の子でしかない。
 そして、僕を捕獲するという本来の目的すら忘れていた。

「ま、またしても~この、ケダモノのくせに気安くなめるな!」
「ふぅん、人間ならいいんだ?」
 スウッと人の姿に戻って、先程と同じように頬をなめてみる。

 ペロン。
 フォッとかウハッとか、およそ普通の女の子の驚き方からかけ離れた絶句の仕方で、目を白黒させている。
 やっぱり人の姿の方が、刺激が強いみたいだ。
 動揺して汗が噴き出し、実に面白い。
 本当に飽きないというか、おかしくてたまらないよね。
 つかんでいる腕から、ハルカの鼓動が直に伝わってくる。
 すごい、心臓が爆発しそうだ。
 耳も頬も指先までも、真っ赤になって反応がかわいかったりする。
 こういうところは純情すぎる女の子だよな~と思う。
 うん、いいもの見た。

「ごちそうさま」
 ペロッとサービスで鼻先をなめてあげたら、ハルカはものすごい勢いで僕を押しのけると跳ぶように離れた。
「なななな、なにすんのよ……!
 路地裏の壁に背中をくっつけ、赤くなったり青くなったりしている。
 男社会に爪先から頭の先まで浸っているせいで、同僚としてなら意識しないようだけど、恋愛となるとまるで免疫がないのだ。
 かわいいというかなんというか。
 ハルカは本当に飽きないよね。

 残念なことに、そろそろ遊びを終わりにする時間だ。
 アハハッと大笑いしながら、僕はハルカに背を向けた。
 歩きかけてちょっとだけ振り返り「またね!」とキスを指先で投げたら、ハルカはその場にヘタヘタと座り込んでしまった。
 腰が抜けたのかな~可愛いもんだ。
 なんて考えながら、悠々と歩いてその場を離れる。

 少しは気力が復活したのか、声だけが追いかけてきた。
「おまえなんか、大嫌いだー!」
 嫌いでけっこう。
 楽しくてたまらないけど、笑いながら僕は走りだす。
 正気に戻ったハルカが、上司に連絡して応援が来たら追いかけっこを再会することになり、せっかくの気分が台無しだ。
 ビルの谷間を、路地裏を、商店街の屋根を駆け抜ける。
「いつか絶対に捕まえてやるから~!」
 腰が抜けて座り込んだままで、しばらくハルカは叫んでいた。


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~ Comment ~

NoTitle 

>理由はわかっている。
 猫化しているから、僕の肉球が直に触れて気持ちいいのだ。


ぇぇぇええええ!! そこぉぉお?!
大爆笑ですからwwww

あ~
ハルカのハートもってかれちゃったのかなぁ・・(>_<)
苦労するわぁ、きっと。(笑)

Re: NoTitle 

やっぱり猫とくれば肉球ですよwww
あの何とも言えないプニプニ感と言ったら!!!
大きな肉球にフミフミされちゃったら、間違いなく腰砕けです!
うらやましすぎるww d(>∇<*) οκ♪


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