短編集 ちょっぴり異世界

Love Hunter 2

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 僕? 僕はルート。
 黒猫と呼ばれる怪盗だ。
 生粋の人類猫族の獣人。
 獣人が珍しい? 獣化ができるだけで、君らと同じ人類なのに?
 もちろん社会的にも生物学的にも「人」そのものだと認知されてるからね。
 人間亜種ではなくて、少数民族なのさ。
 仲間はいないよ。
 だって、猫族は羊族みたいに群れたりしないから、同族が出会うことは少ない。

 今頃対策本部ではハルカの上司である頭の薄いおじさんが、現在置を割り出せと、他の連中を怒鳴りちらしているだろう。
 GPSの探知は妨害しているから、僕たちの居場所はわからないはず。
 誰にも邪魔されたくないからね。
 これは二人きりの大切な時間だから。

 勢いよくひっそりと静まり返った路地裏を、二人で駆け抜ける。
 今日こそは捕まえると息巻いて、僕からわずかに遅れてハルカが追いかけてくる。
「いいかげん捕まれ!」
 キッと眼差しをとがらせている。
 ひっつめた髪を風になびかせながら、いつものごとく全力疾走だ。
 強い意志を秘めた瞳が、燃えるようにきらめいている。
 命の輝きそのものみたいで、本当に綺麗な瞳は僕のお気に入り。
「そっちこそあきらめたら?」

 アハハッと笑うと、ハルカはキリリと唇をかみしめる。
 追いつけない、この私の足でも。
 悔しい、悔しい、と顔に書いてある。
 でも、すごいね。人族なのに、まだ息もきらしてないよ。
 ビルからビルへ飛び移ることだって、ためらいもしない。
 ほんの少し届かなかっただけで、ハルカは落下し地面に叩きつけられて、あえなくお陀仏だろうに怖がりもしない。
 普通の人の運動能力をはるかに凌駕している。
 強化薬の匂いはしないから、彼女自身の力だ。
 どんな鍛え方をしてるんだろう?

 伸びてくるハルカの手が、僕の腕に触れそうだ。
 ほんの数センチ差でかすめる指先。
 何度も何度も、あきらめずに手を伸ばしてくる。
 触れそうで触れない感覚にゾクゾクする。
 でも、簡単には捕まってあげないよ。

 ほんの少し、意識を僕自身の身体に向ける。
 特別な手順は何一ついらない。
 ただそれだけで、もう一つの身体に僕は変化する。
 まるで違う姿だけど、これもまた僕本来の形。
 人の身体から、しなやかな身体へと。
 ビロードに似た毛並み、細身の長い尻尾、金の虹彩を持つ獣。
 サイズは人の時と変わらないけど、能力はまるで違う。
 僕の目に映る夜の色が変わり、熱い力が血管を駆けめぐるんだ。
 沸き立つような血が、余すところなく身体の隅々にまで行きわたっていく。
 四足で駆ける僕に追いつける人間はいない。
 裏路地に飛び込むと、あっという間にハルカを引き離す。

「お待ち!」
 待てと言われても、待つ訳がない。
「この化け猫!」
 口惜しそうに、ハルカが叫んだ。
 いくら駿足を誇っても人族と、獣化した猫族ではそもそもの身体能力が違う。
 どれだけ努力しても種族としての能力は越えられない。
 遠ざかる悔しげな声だけが、僕を追いかけてきた。

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~ Comment ~

NoTitle 

生粋の人類猫族ってwwww

思わず「どんな生粋ww」って突っ込んじゃったよ。(笑)

Re: NoTitle 

そう、そのあたりは深夜、締め切り寸前の焦りから来る勢いです゜(+・`ω・´)ノ
一応獣化できる人を生粋の動物族と呼んでますが、まだ設定が不安定ですね←オイ
羊族の彼女なんていたら癒されそう(//▽//)~♪
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