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短編集 恋の卵

金魚姫 2

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 天は無類の才能を、八重に与えた。
 画才だ。
 皮肉な話だけど、生来の人見知りが才能の開花を早めたように思う。
 外で走り回って泥だらけになるなんて論外で、屋外に出ても絵を描いていたから。

 八重の描く物は身近な題材が多いのに、とにかく色調が多彩でハッするほど綺麗だ。
 どこにでもあるものばかりなのに、そこから目が離せなくなる。
 この金魚みたいに、捜せば近くにあるものばかりだけど。
 それなのに特別な物に出会った気持ちになるのは何故だろう?
 こんな色をしていたっけ?
 なんて現物を後から見直すこともある。

 それでもジーッと見つめていると絵にある情景と同じ一瞬が、まどから射し込む風や光の具合で確かに見えた。
 これが八重の見ている世界なんだと思うたびに、胸が詰まるような感覚を覚える。
 何の変哲もない陶器のカップが光に溶ける瞬間をとらえるなんて、その眼差しが羨ましくて仕方ない。
 光があふれるような明るい絵は、油彩にはありえない透明感を持っているうえにやわらかな印象だし、天才ってこういうことだろうなんて美的センスのない僕でも思う。

 ふと気付く。
 アレ、この服。
 なんだか見覚えがある。
 空に溶けるような発色を気にいりすぎてしまい、子供らしい執着心を発揮して「そろそろあきらめて」という母さんの忠告も聞かず、色あせてピチピチになるまで着ていた。
 左肩のマークの色も形も同じだ。
 うん、間違いない。
 金魚を抱えているこの男の子、僕だ。

 一瞬、胸の奥がチリッとした。

「翔ちゃん、もう絵が描けないよ。どうしよう?」
 そんなふうに、八重が泣いたのはいつだったろう?

 まだ日は高いのに、泣いてる八重。
 地面に散らばった絵の具。
 僕は赤と青と黄色を拾いあげて……公園、だった?

 今、大事なことを思い出しかけた気がする。
 膨らんでくる落ち着かない感じに、ウロウロとしかけて、ふと気付く。
 あれ?
 そういえば、相手と付きあうとは言ってなかったような?
 もしかして……いや、そんなはずない。

 美大に通う八重に比べて、僕はただの凡人だろう。
 取り上げられる特技もなければ欠点もない。
 特徴?
 そんな物があれば教えてほしいぐらいだ。
 一つぐらいは自慢できる事があればいいんだけどなぁ。
 なんてぐだぐだ考えながら、毎日をやり過ごすだけ。
 幼馴染のお兄さんだから会話をしてもらえるけど、八重に相手にされる訳がない。
 でも、もしかして、だったら。

 なんだか心がざわついて、息がつまりそうになり、僕は窓を開けた。
 庭に目をやって、ドキリとする。
 八重と目があった。
 うちの庭にいること自体は、別に珍しいことじゃない。
 母さんの趣味である園芸の最大の理解者は八重だ。
 僕の目にはありふれた花壇なのだが、なんでも別世界に変えてしまう八重は気にいっているようで、よくスケッチに来ている。
 だけど、こうして目が合うのは珍しい。
 花じゃなくて、僕の部屋を見ていたのだろう。

 物言いたげに小さな口は動いたけど声にならず、視線はフイッとそらされた。
 僕は窓を閉めて、階下に降りる。
 胸の奥がざわついて仕方ない。
 この落ち着きのなさ正体が何なのか知りたかった。

「八重」
 呼びかけると、ビクッとして八重は振り向いた。
 両手に何か握りしめている。
「八重」
 もう一度呼ぶと、うん、と小さく返事が返ってきた。
 そして、沈黙が落ちる。

 何をどう切り出せばいいのかもわからなくて気ばかり焦る僕の前で、八重はキュッと唇をかんだ。
「翔ちゃん。これ、覚えてる?」
 差し出された手の中には、三色の古い絵の具があった。
 さっき記憶に引っかかった赤と青と黄色。
 うん、と僕はうなずいていた。

 ふわっと八重の口元に微笑みが浮かんだ。
「いじわるな子にからかわれて絵の具を箱ごと盗られちゃった時、翔ちゃんが必死になって取りかえしてくれたの」
 必死だったかどうかは記憶にないが、確かにそういう事実はあったはずだ。

「結局、箱の中身は全部地面に散らばって、踏まれて半分ぐらいダメになったっけ?」
 うん、と八重は懐かしそうに手の中の絵の具を見つめていた。
「あの日、あたしがすごく泣いたよね。もう絵が描けないって」
「あったな、そんなこと」
 なんだか懐かしくて、話しているうちにくっきりと思い出してきた。


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