短編集 ちょっぴり異世界

右手に銃を 左手に愛を 5

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 赤や金の色とりどりの紙吹雪が降り注ぎ、視界を覆った。
 何が起こったのかはハーディにわからなくても、生きていることだけはわかった。
 破裂音は横からしたとチラリと目をやり、栗色の髪をした美少女が口をとがらせているのに気がつく。

 アリスのその手には、大きな使用済みのクラッカーが握られていた。
「……お誕生日……」
 こんなところで使う気はなかったのにと、不満タラタラの様子だ。
 ハァァ~と長い気の抜けた声をもらして、くたくたとハーディは座りこんだ。

「バカねぇいくらカタリーナでも、居酒屋を血で汚す訳ないでしょう?」
 ルヴィは床に両手をついて茫然自失としているハーディのシルクの上着で銃口を綺麗にふくと、ドレスのスリットをちょいと引きあげて隠してあるホルスタ―に戻した。
 もぎ取ったハーディのリボルバーを右手にかまえ、わりといい感じねと目を細める。

 と、そのとき。
 ゴツッと鈍い音がして、ハーディが床に倒れた。

「なんだ、このおっさん?」
 帰ってきたジークである。
 右手にケーキを、左手に花束を抱えているので、入り口をふさいでいたハーディを蹴飛ばしたのだ。
 チラリと店内を見回し、目をウロウロさせるアリスの挙動不審に目をすがめる。
だいたいの事情は想像したのか、はぁとため息をついた。
「だから、怪盗ゴッコはやめろっつっただろ? 十年早いんだよ」

 コンコンと説教を始めようとするので、ルヴィが軽蔑の眼差しを向けた。
「どうでもいいけど、そのおっさん踏んづけたままはよしなさいよ」
 あん? と自分の右足の下でピクピクしている気の毒な中年男を見つめて、ジークは肩をすくめた。

 面倒だなぁ~とぼやくので、常連の一人が立ちあがった。
 表通りに捨てて来ると気安く請け負われ、頼むといって足をどける。
 表通りなら財布を抜かれるぐらいで、命までは失わない。

 ハーディをつれだす男がその懐から財布を抜き、ポイとルヴィに投げた。
「迷惑料っつうことでもらっとけ」
 いいわね、と笑ったけれど、その財布をアリスに渡す。

「あのおじさんからの誕生日プレゼントみたいよ」
 そう、と受け取りながらも、アリスは口をとがらせた。
「ありがとうなんて言わないからね」

 ツ~ンと横を向いて、あきれた顔でいるジークにまとわりついた。
 お帰りパパ! と満面の笑みに、本当に誰に似たんだかなぁとジークはため息をついた。
 もちろん全員が、一斉にジークを指差さした。


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