短編集 ちょっぴり異世界

右手に銃を 左手に愛を  1

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 ここは、砂漠と海の国カタリーナ。
 月と闇の女神の名前をそのまま戴く、闇の領分に生きる国。
 砂漠と海しかなく、荒廃した土地が広がるばかりで、農業どころか緑の恵みに縁がない。
 よくこんなところに人が住む気になったとあきれるほどの土地柄だが、大陸同士をつなぐ半島にあり海峡の中心に位置しているので、カタリーナを中継しなければ交易が成り立たない。
 ただ自国で産業を興そうとしても環境が劣悪なので、人の持つ技術が主な収入源である。

 人の持つ技術。
 いい響きだと感心するようなら、カタリーナ国では生きていけない善人だ。
 もちろん表向きに派遣しているのは、医療、経済、魔術等にたけた人材である。
 観光にも力を入れているので、遊びに行くには最適だった。

 しかし、世界に誇るは裏街道。
 ひたすら口に出せない稼業をひた走るのだ。
 闇商人、間者、盗賊、暗殺者……とにかく、そういった闇社会の総元締めが国王だったりする。
 沈黙こそが美徳であり、それは公然の秘密。
 だから、いつも見せている綺麗な顔に騙されてはいけない。
 他人に厳しく、身内に甘い。
 そんな厄介な連中ばかりなのだから。



 繁華街の裏路地にある月影亭。
 料理自慢の居酒屋である。
 既に日は落ちて営業時間に入っていた。
 常連客がポツリポツリと現れ始めているのに、盛大な泣き声が響き渡る。
 手足をばたつかせて大粒の涙をふり撒きながら、店の床に子供が転がっていた。

「お誕生日――! アリスのお誕生日なのに――!」
 ウワ~ンッと派手な涙交じりの訴えに、店主である父親だけでなく常連客まで頭をかいた。
 アリスの癇癪が始まると、一時間や二時間では収まらない。
 フワフワフリルのワンピースや、白いレースのリボンで結んだ髪や、可愛らしく見せているその全てを武器に変えて、自らの要求を通そうとする。
 ただのわがままならおしりをピシピシと叩いて絶対に言うことなど聞かないのだが、今日に限っては父であるジークに落ち度があった。
 娘の誕生日を、来週だと勘違いしていたのだ。
 悪い悪いと謝ったからといって、娘のご機嫌が治るはずもない。
「まぁなんだ、明日で我慢しろ」
 今からじゃなんにもできないと胸を張る厳つい父親に、アリスは恨みがましい眼を向けて深く息を吸い込むと、更に大きな泣き声を上げた。
「お誕生日――!」

 実にうるさい。
 常連客はゲラゲラと笑っていたが、ジークは指で耳を塞いだ。
 誰に似たんだとぼやいたが、店内にいる全員が無言のままジークを指差すので、グッと口を引き結んだ。

 二年前に病死した奥方のティリアは異国の令嬢で、非常に物静かな女性だった。
 その可憐で華奢な容姿をそのまま受け継いでいるアリスだが、齢六歳にして中身はすっかりカタリーナ国に染まっていた。


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去年、友人の誕生日に向けて書きました~作品整理で出てきた♪
ブラックだけどハッピーという、妙な味付けを目指したと思います。
誕生日のお祝いに、なぜ私はブラックな設定ににこだわったのか……ちょっと思い出せない;;
ごめ~ん、でも好きに書けてスッキリした~ってお話ですw
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NoTitle 

ブラックだけどハッピー♪
楽しみだわぁ^^

もぅすぐ・・(と言っても5月だけど。笑)
私、誕生日だから
なんかチョット嬉しいわ^^

Re: NoTitle 

akoさんのお誕生日、5月なんですね~♪
風香るさわやかな季節でいいなぁ❀❀

癖と遊びの強いお話なので、楽しんでもらえるといいな~♪

いつもありがとう^^b
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