短編集 ちょっぴり異世界

道きり 第三話

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 中途半端な郊外だから電柱と民家ばかりで、シンと静まり返っていた。
 目の前をどこかの飼いネコが歩いている。
 首に鈴をつけているので、飼いネコなのは間違いない。
 放し飼いって飼い主は気楽に考えているみたいだけど、他人の家や庭に侵入するだけでなく排泄して回ったりするから、非常に性質が悪いと個人的に思うけどな。
 本当に可愛いと思っているなら家猫に徹底するとか、犬みたいに散歩してやればいいのに。
 追い回される猫が非常にかわいそうだ。

 そんな他愛のないことを考えながら、ひたすら歩いた。
 敦志も俺も、妙に無口だった。
 チリチリなっている猫の鈴だけが、聞こえてくる音。
 人通りのない通りとはいえ、異様に静かだった。
 話題がないというより、なんだか落ち着かなくて話題を見つけられない。
 そんな感じだ。

「なぁ……こんなに、この道、長かったか?」
 不意に口を開いた敦志に、実は俺もそう思っていたのでうなずいてしまった。
「いや、五分も歩けば大きな通りに出たはずだ。いくらなんでもおかしくないか?」
 瞬間、二人して無口になってしまった。

 それにしても、寒い。
 陽が落ちたせいもあるが、急に冷え込んできた。

「おかしいよな?」
「おかしい、と思う」

 引き返そうか、と俺が言い出す前に。
 チリン、と鈴が鳴った。
 そのまま静寂が落ちる。
 目の前を歩いていた猫が角を回ったはずだったと、よせばいいのに俺たちは覗きに行った。

「う」
 どちらともなく俺たちは息をのんだ。
 袋小路だった。
 ただの袋小路なら、これほど驚かなかっただろうけど。

 小さな祠があった。
 元は白かっただろう紙垂は昔の面影もなく、雨風にさらされて汚れきった上に所々がちぎれていた。
 よく見かける切妻屋根に、観音開きの扉。
 たさ、その扉は蝶番が壊れているのか、片方が軽く斜めに傾いていた。
 うっすらと開いた隙間の奥がよどみ、闇よりも濃く感じられ他のは気のせいだろうか。

「おい、これって」
 俺が問いかけるよりも早く、敦志はズカズカと祠に近づいた。
 よせよ、と止める間もなかった。
 グルリと祠の周りをまわって、敦志は俺を見るとニッと笑った。
「一瞬ビビったけど、ただの祠だぜ。ほら、道きりにあるのは凄烈な祠だって言ってなかったか? これはもうボロボロで、風情もなんにもない」

 そういう問題か? なんて俺は言えなかった。
 ただ寒くて、とにかくゾクゾクが止まらない。
 恐ろしさで粟立つ、とはこんな感じかもしれない。

「どっちにしろ、気持ちのいいもんじゃない。帰ろうぜ」
「まぁ待てよ。本物かどうか確かめるチャンスじゃないか~なんだったかな~道きりに入る呪文かなんか、あっただろう?」
 俺は敦志の言葉に、ギョッとしてしまった。
 モノ好きだと笑うこともできず、とにかく眉根を寄せてしまう。
 なにしろ寒い。とにかく、ここはよくない気がする。

「よせって。そんなもんねぇよ」
「ああ、あれだ。柚香さん、名前を呼ぶとか言ってたな」
「呼んじゃいけないって言ったんだよ」
 帰るぞ、といって俺が背中を向けると、チッと敦志は舌打ちした。
「お前、マジでビビってんの?」
「やるなってことを、わざわざやるのはバカだ」
「へ~へ~わかりましたよ。道きりとか、鬼道とか、鬼来たれとか、言わなきゃいいんだろ?」
 思い切り禁句を口にしたので俺はギョッとしたが、へっといたずらに笑う敦志は悪びれた様子もない。

 アホか、口にしやがって。
 つける薬がないって、こいつのような性格のことだろう。
 俺はあきれ返ってしまった。

 そんなことより。
 さっきから気になっていることがあった。
「猫、いないな」
 ああ、と敦志は袋小路を囲んでいる塀を見た。
「どうせ、こっからどっかの庭に跳んだんだろう?」
 まぁな、と俺も塀を見上げながら、適当にうなずいた。
 塀を越えたなら、鈴の音は遠ざかったはずなのに、そんな物は聞こえなかった。
 あの時、鈴の音は不意に途切れたのだ。

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NoTitle 

実は怖いお話はチョット苦手で(;´Д`)ノ
でも、今日はこんな時間になるまでパソコンに触れなかったから
(休みの日の更新は予約投稿なのよ^^;)
今読みにきたのだけど・・
ぅぅ・・ ちゃんと眠れるだろか。(笑)

Re: NoTitle 

おはようございます(*^_^*)
苦手なのに読んでくれてありがとう♪

怖いの、私も苦手です。
このお話は昼に書きました!
夜は見直しもしませんw

苦手なジャンルなので怖い度が高いか低いか今一つわからなくて。
ちゃんと怖くなっているといいなぁ←

NoTitle 

猫は絶対、黒い毛だね!(笑)
更新お疲れ様です。

黒に鈴、薄ら寒い空気、更ける空・・・
いやん、ゾクゾクする(*゚∀゚)♪
禁句を口にした敦志グッジョブ!!

Re: NoTitle 

デジャブさん、コメントいつもありがとう(^▽^♪

猫さんはきっと、黒猫で、赤いリボンに金鈴ですね!!
禁句を口にした敦志君は、グッジョブの代償に~((><))ブルブル
時期外れのホラーも楽しいものです←怖がりのくせに怖いもの見たさでw
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