短編集 ちょっぴり異世界

道きり 第二話

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 講義を終えて、敦志と肩を並べて歩いていた。
「それにしても、柚香さんも相変わらずだよな」
 ククッと笑っている敦志に、俺も苦笑するしかない。
「まぁでも、おかげで意外なトリビアも聞けて楽しいじゃないか」

 トリビアねぇと敦志は肩をすくめる。
 もともと神秘には興味ない現実主義の奴だから、当然かもしれない。
 小学校も一緒だったが、真夏のオリエンテーリングの保護者主催の肝試しで、お化け役だった自分の親を見つけ、ここぞとばかりに箒でぶん殴ったアホだ。
 恐ろしいほどの非常識ぶりに、驚かない奴はいなかった。
 あの後、一週間ほどおやつを抜かれてさんざんだったと、当人は言っていたけど。
 問題点はそこじゃないのに、自分の親への不満を語るんだから、相当神経が太い。

 ほら、と敦志はポケットから出した物を俺に向かって投げた。
「やる」
 は? と思いながら受け取ると、柚香さんからもらったお守りだった。
 実のところ、俺ももらってるんだけどな。
 二個あっても仕方ない気がして敦志に返そうとしたけど、そのまま遠くに投げて捨てようとするので慌てて受け取った。
 目の前でお守りを捨てられるだなんて、神様を信じている訳ではないけど勘弁だ。

「この不埒者め。お前、いつか罰が当たるぞ」
「ないさ、神様なんて、嘘っぱちなんだよ。そんなもん、信じてるのは柚香さんだけだ」
「信じてないからって、粗末にすんなよ」
 俺はまったくもうとぼやきながら、敦志が捨てようとしたお守りをコートのポケットに入れた。

 ちなみに、俺自身がもらったお守りは、シャツの胸ポケットに大事にしまっている。
 理由はどうあれ、憧れ女子からもらったものを、心臓に近い場所に置いてなにが悪い。
 良くも悪くも、柚香さんは俺の憧れなんだ。
 それこそ雪の中の牡丹のように、離れた場所からじっくりと鑑賞したい。
 いつでも触れるほどすぐ側に、なんて、絶対に希望しないけどな。

「おまえなぁ~信じる信じないで、他人の気遣いを無下にするのもどうかと思うぞ」
「いらねぇって。そんなのただの布切れだろ? ありがたがるのもどうかしてるさ。もともと押し付けられただけだし。道切りだか鬼道だか知らないけどさ。本当にあるなら、見てみたいさ」

 ハンと鼻先で笑って、敦志は目の前を見た。
 目を細めて、黄昏時を楽しんでいるみたいだ。
 誰そ彼。
 なんて言葉がぴったりするぐらい、今はうすぼんやりとしたほの暗い世界。
 冬場のせいかもしれないが、空気もキンと冷えている。
 角を曲がると更に冷えて、背筋がゾクリとした。

「知ってるか? この道は大学からだと鬼門に当たるらしい」
「おまえなぁ……それでわざわざ遠回りしようって言いだしたのか? 意地になるなよ」
「何もなかったって証明すれば、柚香さんだって妙なことを言わなくなるさ」
「どうだか。バカね、確かめたの? なんて、軽蔑されて終わりだと思うけどな」
 あきれ返っている俺に、確かにそうかもしれないと思ったのか、敦志は黙った。


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