短編集 恋の卵

陽だまりマフィン 最終話

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「今、見んな」
 見るなって言われても、ムリ。
 しゃがみ込んで顔を覗いたら、ウッと息をつまらせる。
「先輩?」

「何、見てんだよ。あっちに行けっつ~か、いや行くなっつ~か、なんか訳わかんね~し」
 大きな身体をした伊達先輩が子供みたいに焦って、俺、何言ってんだ、なんて狼狽している。
 視線がウロウロと落ち着かなくって、私と空と床とを忙しく行き来している。
 目を合わせないというよりは、そんなこと恥ずかしくてとてもできないって感じの、真っ赤な顔。

 えっと、えっと、これってもしかして?

「先輩、私のこと、好き……とか?」

 感じたことをそのまま口にしてみると。
 ふぉっと妙な声を出して先輩はのけぞって、そのまま壁に頭をぶつける。
 ゴンッて音がした。
 痛そう。
 でも、私がぶつけた頭に触ろうとしたら、更にてんぱっている。

 うわ~真っ赤。
 かわいい、なんて言ったら怒られるかな?
 どうしよう?
 目つきは怖いけど、かわいい。

 その時、キンコンと予鈴が鳴った。
 いけない、このままじゃ次の授業に間に合わなくなってしまう。
「先輩、マフィン、食べてくださいね!」
 それじゃぁ、と私が身を翻した途端、手首をつかまれた。

「待て!」
 え? と振り返る。
 真っ赤だけど、伊達先輩が睨んでいた。

「このまま、放置なんて許さねぇぞ」
 放置?
 何のことかな~と思っていたら、伊達先輩は大きく深呼吸をして、重い口を開いた。
「今、お前のこと好きかって、言っただろ? ホントにそうだから」

 ああ、そういえば、そんなことを言ったような。
 あれ?
 好きって、好きって、もしかして?

 キャーッと私は叫びたくなった。
 意識せずにポロッと言ってしまっただけなのに、好きって?
 伊達先輩が、私のことを好きなの?
 嘘、本当に?

 今頃になって、とんでもないことを口にしたのだと気がついた。
 何を言ってるの、私は!
 サーッと頭から血の気が引いて行くのがわかる。
 どうしよう?

「お前、俺のこと、怖いか?」
 コクリ、と正直にうなずいてしまった。
 だって、伊達先輩は身体が大きいうえに、目が強い。

 私があんまり素直すぎたものだから、ウッと伊達先輩はひるんでいた。
「だから、言うつもりなんてなかったのに。それをお前が~いきなり、どうすんだよ」
 どうすんだよって、どうしよう?
 でも、伊達先輩。すごい、顔が真っ赤だ。
 私の手首をつかむ手まで赤くなって、プルプルしている。

 かわいい。その反応は、意外すぎてかわいいです。
 今までの姿とのギャップがたまらないかも、なんて思ってしまい。
「怖いけど……怖くない」
 ポツン、と口が勝手に付け足していた。

 でも、お互いに次の台詞が浮かばずに、黙りこんでしまう。
 うわ~ん、どうしよう?

 妙に気ばかり焦るのに、何をどうしていいのかわからなくてオロオロしているうちに、鮮やかな音で本鈴が鳴り響いた。
 ヤバい、授業が始まった!
 でも、今から走ってもすでに授業中。
 本格的なサボリだ。

 ガーンとショックを受けていたら。
伊達先輩はちょっと位置をずらして隣に座るように言った。
「こうなったら、さぼるしかないだろ?」
 伊達先輩、耳まで真っ赤だ。
 やわらかい髪がフワフワしながら、光に透けて明るく輝いている。

 オズオズと横に座って、妙にぎくしゃくとした先輩の意外な姿を見つつ。
 二人並んでマフィンを食べた。
 風が入ってこない陽だまりの隙間は、妙に暖かかった。

 いつから私のことを好きだったのか聞いてみると、先輩はゴフッと喉をつまらせた。
「お前、無邪気になんつーことを……」
「だって、私、先輩のこと、まだ好きかどうかわかんないもん」
 話すのも、今が初めてだし、なんて思いながら伊達先輩を見ると。
 無言のままだったけど、ズコーンと肩を落としていた。
 あ、へこんでる。すっごいへこんでる。

「あ、でもでも、これからちょっとづつ知っていくのって、素敵だと思うの」
「あ~まぁ、嫌われてないなら、それでよしにする」

 横を向いて、妹ってのは恐ろしいものだと聞いてたけどここまでとは、なんてお兄ちゃんと同じことをブツブツとつぶやいている。
「先輩、元気出してくださいね」と言ったら「誰のせいだよ」なんてすねるのが、また意外すぎて胸がキュンとした。

 陽だまりの中でフワフワしたマフィンを食べつつ、よしよし、なんて。
 落ち込んでいる先輩の、フワフワした髪に触れてみる。
 やわらかくてあったかい。

 多分、私は先輩のことを好きになる。
 そんな予感がした。

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友達との「ふわふわ」企画で書きました❤
怖い顔をつくってないと、デレッてしまって女の子慣れしていないのがまるわかりの、ひたすら見た目と性格にギャップのある男子を書きたかったのです!
切りどころに悩んでしまうお話で、こんなところで終わりww←ヒドイ
最後までお付き合い、ありがとうでした~♪
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~ Comment ~

NoTitle 

まさしく「ふわふわ」だったよ~♪

私はきっとこの人を好きになる。
そんな予感って確かにあって。
けど、そう感じた瞬間には
もぅ恋の卵にヒビが入っているのかもね^^

Re: NoTitle 

akoさん、ありがとう(*^▽^*)

ちょっとした顔見知りにピピッとくる瞬間ってけっこう一瞬だけど、もうその頃には恋のヒヨコちゃんが顔を出す寸前だよね~❤
こういうふわふわした経験ってないな~もうちょっとしとけばよかったw
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