短編集 恋の卵

陽だまりマフィン 第二話

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 伊達先輩は怖いけど、お礼も言わないなんて、絶対に嫌。
 うう、でもやっぱり怖いよう。
 いつも不機嫌そうに、私と目が合うとフイッと横を向く。
 私も逃げるけど、伊達先輩も目を合わせたりしない。
 嫌われてるのかも。
 というよりも、顔を見れば逃げてるんだから、すでに印象は最悪だろう。
 しだいに私の歩調はユルユルと遅くなってくる。
 でも、校内の広さなんて知れているから、すぐに目的の教室に辿り着いてしまった。

 廊下にいる先輩たちも、私を見てふわっと笑った。
「お兄さん、中にいるよ? 呼ぼうか?」
 お願いします、と私は頼んだ。
 気さくな感じで扉を開けて、お~いと彼女はお兄ちゃんの名前を呼ぶ。
「千佳ちゃんが御指名だよ」
 そう? なんて返事がして、すぐにお兄ちゃんが出てきた。

「どした? また辞書でも忘れたのか?」
 深呼吸して、違うの、と私は応える。
 ん? とお兄ちゃんはニコニコしているけど、よく考えたら私がお兄ちゃん以外の人を訪ねるのって、変かもしれない。
今更のように、そのことに気が付いた。
 でも、引っ込みもつかないから、ちょっと腕を引いて耳を貸してもらう。

「あのね、伊達先輩はどこにいるの?」
 は? とお兄ちゃんは目を丸くした。
 やっぱり、驚いている。

「伊達? 教室はうるさいって、屋上に逃げてるけど」
「屋上? 立ち入り禁止じゃないの?」
 ちょっとありえない場所だから、私はビックリしてしまった。
 立ち入り禁止って、入っちゃいけない場所なのに。
「それがいいんだってさ。鍵、壊れてるらしいし」
 そんなことより、と続けそうなお兄ちゃんの言葉を聞かずに、私は「またね」とピューッと逃げる。

「コラ、千佳!」なんてお兄ちゃんは呼んでたけど、今は無視だ。
 つかまったらお兄ちゃんは俺のマフィンがないって絶対に拗ねて、伊達先輩へのお礼どころではなくなってしまう。
 それに、たくさんいる人の前だとよけいに緊張して、お兄ちゃんの背中に隠れたくなるから、誰もいない所なら背水の陣みたいな覚悟で渡せそう。
 とにかく「ありがとう」って伊達先輩に言って、マフィンを渡すにはちょうどいいよね。

 屋上への階段を駆け上がる。
 息が苦しい。
 それでも、急いだかいもあって、それほど時間もかからずに屋上に辿り着いた。
 お兄ちゃんが言った通り、屋上への扉は鍵の部分が壊れていた。
 ロックをしてもバカになっているので、引っかかりもせずノブが回る。
 はずむ息を整えて、扉を開いた。

 頬を冷たい風がなでる。
 思わず身をすくませてしまう寒さに、今が二月だって身に染みた。
 ホントにこんな寒い中に、伊達先輩がいるのかな?
 ちょっと不安になったけど、屋上へと足を踏み出した。
 真っ青な空が、震える私を見降ろしていた。



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~ Comment ~

NoTitle 

こんなこと・・あったような・・。

ぃゃ、ないだろッッww 爆ww

千佳ちゃんのドキドキが伝わってきて
キュンキュンしちゃうよッ♪

Re: NoTitle 

こういうこと、ありそうでないよね~あってほしかった///

怖いもん、と言いながらも、マフィンを手作りするマメ(?)な千佳ちゃんですw
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