短編集 恋の卵

陽だまりマフィン 第一話 (テーマ:別の日なのにバレンタイン風味)

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 どうしよう?
 ラッピングをしたチョコレートマフィンを胸に抱いて、私は三年生の教室に向かっていた。
 貴重なお昼休みだから、今しかないと思うんだけど。
 渡そうと思って作ったけど、やっぱり緊張する。
 何度も通っている廊下のはずなのに、今は足が震えてしかたない。
 でも、ちゃんとお礼を言って、渡さなくちゃ。

 伊達先輩。
 うちにもよく遊びに来る、お兄ちゃんと一番仲のいい人。
 お兄ちゃんと同じ三年生で、しかも席まで隣だって言っていた。
 でも、私は苦手だった。
 背も高いし体格もがっちりした大きい人だし、いつも厳しい表情をしているからなんだか怖くて、挨拶しかしない。
 ハッキリ言って見た目がかなり怖すぎて、ピューッと自分の部屋に逃げていた。

 なのに。
 先週、下校に助けてもらった。
 朝からだるいなと思っていたら風邪が悪化していて、電車に乗る頃には頭はボーっとするし、視界がフラフラしていて。
 一つも席が空いていないし、立つスペースも入り口横しかないぐらい人が乗車していたから足を踏ん張ったんだけど、私の体調はそれどころではなくて。
 頭の中と一緒に身体までフワフワして倒れそうになったところで、腕をつかまれた。

 驚いて見上げると、それは伊達先輩で。
 私の顔を見ただけで熱が出ていることまでわかったみたいで、小さく「もたれていい」って言って支えてくれた。
 大丈夫だって返事をしたかったけど、すでに私の意識は半分飛んでいたから。
 大きな身体や倒れないように支えてくれる手が気持ちいいな~と思った途端に、なんだか頭の中まで真っ白になっていた。

 そして。
 気がつくと、家だった。
 おまけに日付まで変わっていて、非常に驚いてしまった。
 だるいけど熱が下がっていたから、台所に行った。
 仕事を休んでいたお母さんに声をかけると、家に帰るまでの経緯を教えてくれた。

 あの後すぐに、電車の中で私は見事にひっくり返ったらしい。
 伊達先輩は親切にも私を背負って、うちまで運んでくれたそうだ。
 両親が共働きなのでお兄ちゃんに携帯で連絡して、帰ってくるまで玄関で私を背負ったまま待っていたとか。
「倒れるぐらい調子が悪いなら、お兄ちゃんと帰ってくればいいでしょう?」
 くどくどと始まったお母さんの小言を「ごめんなさい」と聞き流しながら、あまりの醜態ぶりに私は熱がぶり返すかと思った。
 ものすごく迷惑をかけてしまったんだ。
 でも、そのまま週末に突入し、伊達先輩にお礼も言わないまま、月曜の今日にいたる。

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~ Comment ~

NoTitle 

大好きな恋の卵シリーズだわッ♪

チョコレートマフィン^^
頑張~ぁぁあ♪

NoTitle 

おっ。タイトル、素敵だね。
なんだか、テンポの良い始まり方に惹かれてしまって、
その次も読んじゃうとおもう。
椿ちゃんの小説なかなか好きだよ^^

Re: NoTitle 

akoさん、いつもありがとう(*^_^*)

チョコレートマフィン、私も好き~❤
全部で4話の、とってもかわいいお話ですw

Re: NoTitle 

小林さん、こんにちは!

ありがとうございます! ありがとうございます!!
嬉しいけど恥ずかしいです(//-//)
椿ちゃんとは!゚+゚ キャ ─ (*ノωノ) ─ ッ ゚+゚
 ↑ そこかよw
10代に戻ったつもりで仕上げます!!
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