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短編集 ちょっぴり異世界

ふわふわのしっぽと不幸な僕

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 土曜日の朝。
 できたてほやほやの彼女から、メールが入った。
 どうしても家から出られない事情があるから、彼女の代わりに買い物をしてほしいといった内容だった。

 断る理由なんて、僕にはない。
 むしろ、彼女の自宅にどうどうと乗り込める理由までできるのだから、こんなラッキーは普通なら簡単には転がってこないはずだ。

 あれ? でも、家族と同居だって言ってなかったっけ?

 珠美は年上の彼女で、友人・高志の姉だ。
 高志とは友人だが、親友と言っていいのかどうか、実はわからない。
 高校三年生になるとやっぱり進路も決めることになるし、僕の行きたい大学に通っている姉がいると噂で聞いて、リサーチしたくて声をかけたのだ。
 そうしたら姉である珠美にも話を通したうえに、ファミレスで会うセッティングしてくれたのだが、一目ぼれに近かった僕の縁結びまでした気前のいい奴だ。
 うん、高志とはこれからもっと仲良くなれると思う。

 珠美は二つ年上の大学生だ。
 母親は早くに亡くなって、父親と高志の三人で自宅に暮らしているはず。
 高志は県外の大学受験のリサーチに今週は出かけているはずだから、父親と二人でいるかもしれない。

 まぁ、大学生にもなれば、父親に買い物なんて頼んだりしないか。
 そういえば「お父さんは自宅で仕事をしているの」と言っていた気がする。

 しばし悩む。
 彼女の家に行くということは。
 父親がいる可能性が高い。
 買い物を感謝されるかもしれないが、失敗すれば印象が最悪?

 ウワァ大変じゃないか、今後の付き合いに影響が出るかも。

 緊張しながらもATMによってお金をおろし、頼まれた物をそろえていく。
 う~ん、それにしてもよくわからない。
 メール内容を確認して、僕はうなってしまった。
 女物だけではなく、男物もあるから、父親の必要とする物も含まれているのだろう。

 でも、取り合わせが非常に謎だ。
 ロング丈のセーター。
 ニーハイソックスの男物と、女物。
 まぁ、冬だからこれはわかる。
 腹巻。まぁ、寒いし、腹巻はまだ理解の範疇だ。

 しかし、しかしだ!
 サイドリボンのTバックショーツに、ふんどし。
 Tバックにいけない妄想をふくらましたかったのに、引っかかってしまった。

 ふんどしって?
 なぜここでふんどしが出てくる?

 わからない、彼女の事が、非常にわからない。
 いや、ふんどしはこの流れでいくと、お父さんのか?

 付き合って二週間の彼氏に、父親のふんどしを頼む彼女。

 遠い目になって空を見つめる。
 いや、これはきっと心を許してくれている証だ。
 うん、そう思おう。
 そう思うのが僕の幸せなのだと自分に言い聞かせながら、自転車をこいで彼女の家に向かった。

 想像以上に大きな家だった。
 昔ながらの旧家ってこんな感じだろう。
 門から玄関まで石畳がつながって、距離が長い。
 両脇にあるのは整えられた庭園風の樹木類。
 歩くのにも、なんだか場違いな気がして、キュッと心臓が縮んだ。
 敷地に入っていいとメールにあったので、僕はそのまま中に足を踏み入れたものの、なんだか落ち着かない。

 珠美って、めちゃくちゃお嬢様?

 玄関も普通の家とは違って、引き戸も特別制なのか大きめである。
 でも備え付けられているのは、なじみ深いインターフォンでなんだかほっとする。
 これで昔懐かしい呼び鈴とか銅鑼がかかっていたら、本気で逃げたくなっただろう。

 ピンポンとインターフォンの軽い音に続いて、彼女の足音が聞こえた。
 でも、扉はすぐに開かなかった。
 堅く閉じたまま、かぼそい珠美の声が届いた。

「和也君、ムリを言ったのに本当にありがとう。でも、ちょっと今、すごい恰好なんだけど大丈夫かなぁ? 驚かないでくれる?」
「ん? なに? 風邪引いて寝てた? 大丈夫?」
「ううん、ホントに驚かないでね」

 もしかして、パジャマ?
 それはそれで、ドキドキするのだけど!
 なんて淡い期待をした僕の予想は、次の瞬間に大きく裏切られるのだった。


 恥かしそうに両手で頭を押さえている珠美が現れた。
 頭を押さえている……と言うよりも、その可愛い手の下にあるのは。
 猫耳だった。

 そう、立派な猫耳ではないか!

 ふわぁと僕は間抜けな声をあげてしまった。
 どこからどう見ても、黒猫そのものの見事な猫耳である。
 そして、フワフワとスカートを揺り動かしているのは、まぎれもない尻尾!

 尻尾、尻尾だよ、おい!

 訳もなく興奮してしまう。
 いや、落ち着け~顔だけでも冷静を装わなくては、嫌われてしまう。

 でも、そんな心配は無用だった。
 珠美はずっと、恥かしそうにうつむいていた。
「ごめんね、和也君。他に頼める人がいなかったから……お父さんが実験に失敗しちゃって……スカートはともかく、タイツもズボンも尻尾が邪魔で上手く着れなくて困ってたの」

 その突っ込みどころ満載の台詞すら、脳がいっぱいになっている僕には、どこからどうつついていいのかわからなかった。

 実験? 実験とは、何ぞや!

 ああでも、そのフリフリと動く尻尾がフワフワと珠美のスカートを持ちあげているのが、気になって仕方ない。
 僕の前を歩いてほしい、なんて言ったら変態だと思われるかもしれないが、それのどこが悪い。
 ズボンどころかタイツすらはけないんだぞ。
 Tバックは僕が手に持っている紙袋の中だ。
 もしかして、もしかするじゃないか!

 落ちつけ~自分。
 そう唱えながら、紙袋を手渡した。
 大変だね、と言ってみたけど声が上ずる。
 ああでも、半猫の彼女……かわいすぎる。
 尻尾や耳は毛皮だけど他は人間のままだし、これってある意味理想ですごくないか?

「ありがとう……お父さんいるけど、中、入る?」
 恥じらいながらそっと窺う上目使いに、逆らえる者がいるのか?
 そんな愛らしい彼女のお宅に、足を踏み入れたくない奴がいたら決闘してやる。
「お、お邪魔します」
 なんにも気にしてないフリをしてスマートに決めたかったのに、声が上ずってしまったのは許してほしい。
 ドキドキが止まらないんだから仕方ないのだ。

 珠美の後ろを歩いてみたいという僕の願いは、とてもむなしく叶わなかった。
 時々彼女の意思に反して、ピンっと跳ねあがる尻尾の動きは、とても魅惑的なのに。
 珠美は僕と肩を並べて歩きながら、片手でスカートの後ろを押さえている。
 うう~ん、やっぱりガードされてしまった。

 ひどく残念な気持ちのまま、居間に通された。
 床の間まである、純粋に豪華な和室だ。
 正座すると、足がしびれるんだけどな。

 ちょっと待っててね、と言い置いて、珠美は部屋から出て行った。
 多分、お茶でも持ってくるのだろう。
 もしかして、抹茶とか点てたりするのだろうか?
 ドキドキして待っていたら、紅茶だったのでちょっぴりがっかりした。

 残念、このチョイスは普通か。

 場違いな感想を抱いている僕に、珠美は猫耳になってしまった経緯を話してくれた。
 彼女の父親は、それなりに名の通った科学者らしい。
 ただ非常に変わった性格なので、企業などと契約しても研究所勤務にはならないそうだ。
 自宅で依頼を受けて実験を繰り返しているらしい。
 依頼されたケースだけではなく変な実験もしているが、まぁ趣味と実益を兼ねて楽しく暮らしているそうだ。

 その父親が作った薬が昨夜なぜだか暴走して、湧き上がった煙によって珠美と父親を猫化させてしまったらしい。

 へぇぇ~と僕はうなることしかできない。
 だって、実感がどうやっても持てない。
 純和風家屋のボンボンのくせに、マッドサイエンティスト。
 失敗した実験の煙で、魔法のように猫化するって、どうなんだ?

 面白い情景だが、リアルからはかけ離れている。
 ただ、困った顔でポツポツと説明を続ける珠美は、深刻な顔をしていた。
「どうしてこうなっちゃったかわからないから、いつもとに戻れるのかわからないの」

 うう~と半べそだけれど、彼女が話すたびにふりふり~ふわふわ~と尻尾とスカートが動くものだから、僕は気になって仕方ない。
 正座している。正座しているんだけどさ。
 もうちょっとで見えそうなんだ。
 どこが? なんて聞かないでくれ。

 ドキドキを止めることもできない僕の耳に、ダンダンダンと威勢のいい足音が届いた。
 やたら元気よく走る勢いで近づいてきたかと思うと、ガラリ、とふすまが開いた。
「やぁ、明智君、よく来たね!」
「お父さん、赤城君だよ」
「うん、そうか! 鋭い突っ込み、ありがとう」

 現れたのはハッハッハッなどと笑う、やたら元気がいいおっさん……だと思う。
 誰? なんて聞かなくても、異様な姿からさりげなく目をそらす珠美の表情がとても慣れた物だったから、父親だとわかった。
「買い物、ご苦労! 助かったよ、明智君」
「赤城君だよ。せっかく耳が大きくなったのに、聞こえてないんだから」

 全然、性格が似てない。
 まぁ、姿は似る訳ないか。
 現れたおっさん。もとい珠美のお父さんは、完璧な人間大の白猫だった。
 見事な獣人、いや二本脚歩行のできる巨大猫。
 ピクピクしているひげや、形を変えて細くとがった虹彩が、サイズがでかくなるとかわいくない。
 中身がおっさんだとわかっているから、なおさらだ。
 握手を求められた右手の肉球が、なにげにシュールなのだが。

 それ以上に気になるのは、白衣の下からニョッキリと伸びた二本の脚。
 ソックスの切れ目から、白衣まで続くのは見事な毛皮。
 買ったばかりのふんどしは、珠美の後ろにある紙袋の中だ。

 もしかして、もしかするかもしれない想像に。
 僕が真っ青になって吐きそうになり、トイレの場所を聞きたくなったのも仕方ないだろう。

 お父さん、そのまま立ち続けて、座らないでくれ!

 勢いよく動く尻尾が白衣の裾を忙しく動かすので、僕は非常に目のやり場に困るんだけど。
 珠美もよく見れば、そっと庭へと視線を移している。
 その哀愁の漂った背中に、なぜだかホロリとした。
 うん、親子って大変だな~逃げ場がどこにもない。

 でも、お父さんは、そんな微妙な空気なんてまるで読まなかった。
「では明智君。お近づきの印といってはなんだが、さっそくこれをつけたまえ」
「こ、これは一体……?」
 ポイッと軽く渡された物に僕は唖然とする。
 テレビなどで毒ガス騒動の時に活躍する部隊が使用している、防毒マスクではなかろうか?

「うむ、珠美が嫌がるので、純粋に手が足りないのだ。この肉球が邪魔で、薬品がうまく扱えん」
 つかめないのだよ、薬瓶が! などと熱を入れて語っている白猫父は非常に嬉しそうに、天の助けだなんて喜んでいるけれど。
「ええ~っと、それってもしかして……」
 僕に手伝えってことなのかな~?
 え~本気かよ?

 嫌だよと思いながら僕がズサッと後ずさったことも気にせず、お父さんはハッハッハッと笑いながらふんぞり返った。
「大丈夫だ! 吸い込みさえしなければ、君まで猫になることはない!」
 いや、そういう問題ではなくて、なぜ、僕が助手?

「和也君、ダメかな?」
 ああ、珠美のその上目使いは甘い凶器だ。
「ちょっちょっとだけなら」

 よせ、僕の口!
 そう思っていたけれど、ごつい肉球の手がふわふわ毛皮とは思えない強靭さで、僕の腕をつかんだ。
「ちょっとなどと遠慮せず、ガッツリ来たまえ! 行くぞ、明智君!」
「お父さん、赤城君だから」

 いや、問題点はそんな小さなことではないんだけれど。
 ひえぇぇぇ~と思いながらも防毒マスクを装着させられた僕は、白猫父の禁断の実験部屋に連れ込まれたのだった。

 その後、どうなったのか?
 解毒剤ができるまで、一週間かかった。
 一週間も実験とハイパー変人の珠美の父親に、関わることになってしまった。

 お父さんには気にいってもらえたようだけど、次は何日に来たまえ! なんて僕の都合も聞かずに予定を組んでいる。
 嬉々としたその背中を見つつ、逃げたいと思いながらも、珠美の「ありがとう」なんて可愛い笑顔を見ていると、何も言えなくなって。

 高志が家を出て、県外の大学に通うと決めた理由が身に染みた。
 この家にいたら、まともな生活から遠ざかってしまう。

 どうしよう、僕の進路は珠美も通う地元の大学なのだが。
 自己中心的な珠美の父親の魔の手から逃げる手段を考えなくては、しょっちゅう授業をさぼることになってしまいそうだ。

 僕は来年から、まともに大学に通えるのだろうか?

 それより先に、入試まで落ち着いて勉強できるかも謎だ。
 僕の未来は不安に染まっていると思いながら、空を見るしかなかった。

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~ Comment ~

NoTitle 

クンクン、おやぢ臭かぎにきたよ~ぉ!!
(変態かッ!!w)

ッテカ、私も猫耳とふわふわ尻尾欲し~ぃ(≧∀≦)ノ

NoTitle 

新作、お疲れ様でした♪
短編集とのことで、これからの作品も楽しみです(*´∀`∩)
お父さん、猫になるくらいなら“どこでもdoor”創ってください(笑)
珠美ちゃんは、白い入浴剤が入ったお風呂で待機してください。
このカップルはお父さんに振り回されて、なかなか甘い雰囲気に突入できなさそうですね。

Re: NoTitle 

akoさん、いらっしゃい~♪

オヤジ臭でしょうww??
個性の強い猫オヤジでしょう??
私、なにを間違ってこんなものを描いたのやら(*ノ▽ノ)ハズカシイ

猫耳としっぽって、ほしいよね~なんかそそられる~♪

Re: NoTitle 

デジャブさん、いつもありがとう(*^▽^*)♪

こういった変態チックなものや、怖いものや、「恋の卵シリーズ」とは雰囲気の違うものを、ちょっとづつ息抜きにかけたらいいな~と野望を抱いて「短編集」などとつけてしまいました―☆
そのうちお嫁に行けそうなものも書いてみたいですw! ←?!

このお父さんは空気がまるで読めないので、甘い雰囲気になっていても「来たまえ!」とか、拉致しそうだよね(笑)
幸せはいずこにww??

おおう! 素晴らしいぞ!! 

なんとも言えず、彼女が可愛くって、お父さんが豪快で。
ものすごく微笑ましくても羨ましいような、ご愁傷さまです、と言いたいような(^^;

でも、こんな世界あったら楽しいだろうな、というピンポイントに素晴らしい物語で、純粋に楽しむことが出来ました♪

設定が普通の人間たちであって、その「実験」に寄る異常事態、というのはある意味すごくわかり易い。
するりと世界に入り込んで、主人公目線で一緒にその「ちょっとオカシナ」世界を覗き見ることが出来ました(^^)

ありがとうございます(*^_^*) 

朱鷺様、いつもありがとうございます♪

ほのぼのと見せかけて、かなり濃いお話だと自覚していますので、冒険心で書き上げた気がします(汗)
萌えと妄想で成り立つ世界ですから、書いた後からドキドキが止まりせん。

純粋に楽しんでいただけて、とてもうれしいです(*ノωノ)

素敵なメッセージと感想をありがとうございました☆
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