「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第109話 還る場所 6  (最終話)

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 暇つぶしの軽口に乗せられて、もっとミレーヌに軽蔑されるセリフを吐くところだったとあせりながら、ガラルドはそそくさと早足で逃げる。
 顔色が悪いので、更に怪しまれるなんてことは、自覚していない。
 どこまでもスットコドッコイなんだから、と口の中でうめいて、ミレーヌは声をとがらせる。

「なんですの? 大切な話が途中ですわよ! ガラルド様! 一体どれだけの心当たりがありますの!」
「ないない! 一つもない! 気にするな!」
「ないなら逃げる必要はありませんでしょう!」

 ミレーヌが長いワンピースのすそをからげてその背中を追うと、ガラルドが速度を上げて遁走する。

 ウワァっとオルランドは悲鳴を上げた。
 圧倒的にガラルドの力が強いので、引きずられてしまう。
「誰か助けて!」
 叫び声をあげながら、オルランドは二人に挟まれたままの状態で引っ張られる。
 犬も食わないケンカに巻き込まれるのはごめんだった。
 なのに、強い呪によってつながっているから逃げられない。
 今まで他人を翻弄するばかりだった死神も、英雄相手には無力なお子様でしかなかった。

「お待ちなさい!」
 ミレーヌがその後を走って追いかけていく。
「隠し子がいるなら引き取りなさい!」とか「いないと言っているだろうが、そんなものは!」などとムキになって言い合う声が、しだいに遠ざかっていく。
 とりあえず馬場や中庭など、家の敷地内を走り回っているようだった。

 残された者は顔を見合わせた後で、一斉に笑いだした。
 カッシュ要塞から早朝に帰宅したばかりなのに、剣豪のガラルドを追い回す元気があるなんて、ミレーヌもタフな女性である。

「もう大丈夫だよ。時間はかかってもあの子たちは、お互いにないものの補い方だって覚えていけるさ」
 きっと、かけ離れた他人との能力に振り回されることなく、当たり前の人とも協調して生きていける。

 ユラユラ揺れているサリの台詞に、素晴らしい日になったとみんな笑った。
「俺たちに足りないものを、サリ殿もミレーヌ様も持っているからな」
「あんたたち二人は還る場所に相応しい」
「まさか王都で還る場所を見つけるとは」
「それも俺たち全員で共有か?」
「まぁな。めったにないことだが、別にいいさ」

「あらあら。こんなおばあちゃんで悪いねぇ」
 いい女に年齢は関係ないさと笑い声がはじけた。

「なぁサリ殿。ミレーヌ様にはしばらく黙っておいてくれないか?」
「俺たちの還る場所だなんて、言えるもんか」
「説明したって、気にしない子だけどねぇ」
「まぁな。でも照れ臭いじゃないか。嫁さんでもない女に、口にする台詞じゃないさ」
 そうだそうだと、そろって笑った。

 サリとミレーヌが、今の還るべき場所だった。
 自分たちの帰りを待つ人が存在する限り、困難が起きても大切な人に会いたいと強く願い、生きて帰ると誓って剣を振るう。
 例え災禍で館を失ったとしてもお帰りと迎えてくれる者を護るためであれば、幾度となく立ち上がり、恐れることなく前へと進むだろう。
 自らの命と魂をかけるに値する存在のことを、流派の使徒は還る場所と呼ぶのだ。

 ここにいる全員が知っていた。
 穏やかな時間は永遠に続かない。
 だからこそ流派が生まれ、連綿と長きに渡り継続されてきたのだ。

 それでも、午後の時間には笑い声が満ちていた。


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やっと迎えた最終回!
長い長い大団円までのお付き合い、本当にありがとうございました!

非常に癖の強い連中の掛け合いでしたが、皆様の笑顔の時間につながりますように(^人^)♥
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~ Comment ~

NoTitle 

ぁぅぁぅ・・。
ホントに終わっちゃうのねぇぇ(´;ω;`)

最終話は微笑ましくほっこりと読ませてもらいました^^

人はみんな還る場所を探しながら旅してるんだろうね。
それが、このお話にはギュッとつまってると思う。

その後のミレーヌ様とガラルドのお話とか
オルランド視点での続編とか。
勝手に楽しみに待ってま~すww
もちろん新しい小説もねッ♪

これからも私を夢中にさせてね♪(笑)

完結おめでとう! 

最後まで楽しませて頂きました^^
既に完結済みとはいえ、ここまでお疲れ様です。

オルランドが最後まで不憫だったところに笑ってしまいました(笑)
ガラルドとミレーヌの関係はまだまだ恋には発展しなさそう?
意識はし始めているんでしょうけれど、何かが足りない感じw
それなのに追い討ちをかけるように「隠し子」疑惑が出てきて、この二人は大丈夫かしら?笑

とにかく最後まで楽しかったです!
素敵な作品をありがとう♪

Re: NoTitle 

akoさん、最後までお付き合いありがとう(*^▽^*)

ここで終わるの~って感じですが、還る場所があるんだってみんな笑ってるところが書きたかったので、私的には大満足でしたw

かなりハイテンションのときでないとこの人たちはないので、がんばって楽しいこと探しをしますw

これからもよろしくね~まずは別サイトのRの鳥さんからですね(//▽//)エヘ

Re: 完結おめでとう! 

デジャブさん、最後まで付き合ってくれてありがとう(//▽//)♥

オルランドは強い子ですから、ハードな愛に耐えることでしょう(笑)
身も心も頑丈に育ったりしてw
ガラルドさんは大きな子供だから、ミレーヌさんも恋じゃなく母の気分かも(笑)

「俺にはお前しかいない!」
「そういうことは、服を脱ぎ散らかす前に言ってくださいな!」
なんて、毎日のように玄関ですったもんだしてたりしてw

この二人、甘くなる日が来れば面白いけど、当分先でしょうねw

楽しんでもらえてよかったです~癖の強い話だからw
いつもいつも、本当にありがとう!
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