「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第104話 還る場所 1

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 風呂場の前。
 ウロウロと、ガラルドは扉の前を左右に歩いては、時折耳をつけて中の様子に聞き耳を立てている。
「おのれ、小僧め」とか「あいつばかり良い目を見て」とか、ブツブツとつぶやいている。
「いやいや子供だ」とか「小僧でもわからん」とかとにかく独り言が絶えない。

 騎士団との会議から帰ってきたばかりのデュランとキサルがそれに気付いて、気味悪そうに廊下の角でUターンした。
 はちあわないように中庭を抜け、そっと台所に向かった。
 こういうときには裏口から入るに限る。
 食堂では警備に出た者の姿はなかったが、残った者がくつろぎながら談笑していたので問いかけた。

「なぁガラルドは一体どうしたんだ?」
 朝食をとっている時のご機嫌な顔を見て騎士団に出向いたので、非常に不可解だった。
 顔を見合わせたラルゴたちは一瞬沈黙したが、すぐに吹きだした。

「アレか? ミレーヌ様がな、小僧を磨いてんだ」
「ほら、呪具で繋いでるし、離れんからな」
「混浴がうらやましいんだとさ、あの熊も背中を流していただきたいらしいぞ」
「妬いてんだよ。帰って来たときに、サリ殿はガラルドの頭をなでただけなのに、オルランドの奴をお帰りとハグしたからな。あの熊、自分も抱っこされたかったようだぞ」

 着替えだって確かに男物ではあったが、レースやフリルのついたビラビラのおしゃれ着をミレーヌが用意しているのを見てしまった。
「そんなものをどうするんだ?」とちょっと引いていたようだが、それでも「服を見立ててやるのか」とうらやましがっていた。

 バカな奴だと爆笑するので、当然だとデュランとキサルも顔を見合わせた。
「いくらミレーヌ様でも、あんなでかい熊を風呂に入れて、着せ替え人形にして喜ばないさ」
「サリ殿が頭をなでてるだけでもメルヘンだぞ。充分甘やかしてもらってるのに、アホか」

 そう、ネコが熊をかまう図は絵本から抜け出たようにほのぼのしているのに。
 それだけでは足りないなんて、自分の年齢を考えろとぼやく。

「小僧の方がしっかりしてたぞ」
「僕はフロぐらい一人で大丈夫だとか、お姉さんぐらいの女はもう知ってるからほっといてくれとか、無駄な抵抗をしていたな」

 ただ、ミレーヌは無敵の天然だった。
「知ってるならちょうどいいわね♪ と本物のアライグマになっちまった。ミレーヌ様は、何を知ってると勘違いしたんだろうなぁ?」
 実に謎だ。

 遠い眼をしているラクシに、キサルがその流れはいかんとダメ出しをした。
「よせ、不潔なお花畑だと知れたら、今後の計画もパァだ。とうぶん小僧には清純派のお子様でいてもらわなきゃいけないんだぞ」
 そっち方面について自宅で口にするのは厳禁だと眉をしかめる。
「大丈夫さ。ガラルドがアケスケに言いすぎて、下品な戯言と勝手に信じてくださるさ」
 クックッとラルゴが肩を揺らした。
 ダテに扉に張り付いている訳ではない。

 ほら見ろ、と視線を扉に向けた。
 三人が帰ってきた。

「本当に大丈夫だったか」
「どこまでバカなんですの!」
 付きまとうガラルドを、ミレーヌが邪険にしていた。

 死神の経歴を知っている者からすれば当然の心配だが、この場合ガラルドの味方をする気にはなれなかった。
 確かにバカとしか言いようがない。


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~ Comment ~

NoTitle 

ガラルドwwww
心配性のやきもちやきの男。
キライじゃないですッ♪(笑)
むしろ嬉しいですッッ♪(爆)

ところで・・
ミレーヌ様はホントに何を知ってると勘違いしたんだろかぁ・・。
知ってるなら一緒に入っても恥ずかしくないわねッ♪
ってことだろかぁ?
謎だッ(;´Д`)ノ

Re: NoTitle 

ガラルドさん、心配性のやきもち焼きで、独占欲も強いですw
でもカラッとして、子供のようなやきもちなので執念深い追っかけもないです←ここ重要
相手にされないとす寝るだけなので、怖さがなくて可愛いと思うのw

ミレーヌさん、ほのぼの思考の家政婦さんですからねw
若い娘さんが美少年の坊ちゃまにいたせりつくせりの対応をする、過剰なお世話の焼き方を知っていると勘違いしています(笑)

そうそう、腕輪に綱がついてますから、今回のミレーヌ様は服が脱げませんよw
腕まくりにすそからげて、お背中ゴシゴシです♪
恥ずかしいのはオルランドだけでした~(>▽<)ノ♪
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