「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第102話 英雄のしつけかた 5

 ←第101話 英雄のしつけかた 4 →第103話 英雄のしつけかた 6
 オムレツの一言だけで、ガラルドは満面の笑みである。
 それだけ気に入っているのだろうが、ボコボコにされた影響がまるでない。
 あの直後で笑えるのか~と、つい白い眼でオルランドは見てしまった。
 ミレーヌは先程のフライパンでの打撃を忘れたように、これほどの魔物を討伐するなんて強いんですのねなんてガラルドをおだてていた。

 そうか? なんてさらに機嫌よくなるガラルドの単純さにあきれながらも、オルランドは首輪を気にしていた。
 すぐそこまで来ている騎士団で編成された警備隊に引き渡されるなら、東の国の法律にのっとった裁きを受けることができる。

 一週間かそこらで解放されるのだから、どうにかしてあちらに自首したいと知恵を巡らせていたら、甘いぞと耳元で小声でささやかれた。
 ギョッとして逃げようとしたら、ヘッドロックされた。
「お前だけは黒熊隊預かりだ。オルランド」
 ニヤニヤとキサルが笑っている。

 いつのまにか五人に囲まれていた。
 近くにいるミレーヌに聞こえないように、それぞれが小声でささやきかける。

「俺たち全員でかわいがってやる」
「心配するな、殺しやしない」
「まぁ逃げられると思うな」

 ラクシがニヤニヤしながら報告した。
「そういや、この小僧。片手剣でも飛燕剣舞を出したぞ。見よう見まねのくせに、器用だった」
 飛燕剣舞とは奥義技の一つである。

 へぇと全員が破顔した。
「そりゃ見込みがあるじゃないか」
「教えなくっても盗むぞ、こいつなら」
「今のままでも充分役に立つしな」
「若いのを探していたから手間がはぶけた」
「どうせ保護観察だしな。それも流派預かり」
「お前を引き取る名付け親がミレーヌ様で本当によかった」
 勝手に話を進めている。

「あんたたち、まさか……」
 双剣持ちに仕込む気だ。
 オルランドの全身から一気に血の気が引いていく。
 このままでは本当に一生逃げられない。

「嫌だ! 僕はまだ未成年だぞ!」
 叫んだが誰も聞いてなかった。

「忘れっぽい大将には財布や時計が必要だから、ちょうどいいな。なんせ、こいつは機転がきく」
「そうだな。財布なら、年齢は関係ないし」
「バ~カ、財布は小さい方が携帯しやすいから、おあつらえだろ?」

 オルランドは口を開けたまま、声を失った。
 それは、ガラルドの世話係ではなかろうか。

 チラリ、と大きな姿に目をやった。
 英雄談の正しさは、遠くから見る姿だけだった。
 あんな自分勝手な我儘で奔放に暴れる生き物をなだめ、時間通りに動かしたり持ち上げてうまく使うことなど、ものすごく大変な作業だ。
 勘弁してほしいと更に青ざめた。


にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ

関連記事
スポンサーサイト
総もくじ 3kaku_s_L.png 交換詩・贈答物語 七色の海
総もくじ 3kaku_s_L.png 英雄のしつけかた
総もくじ 3kaku_s_L.png 短編集 ちょっぴり異世界
総もくじ 3kaku_s_L.png ミルキィ☆ロール
総もくじ 3kaku_s_L.png 喫茶ペロリストシリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 短編集 恋の卵
もくじ  3kaku_s_L.png Making Twilight
もくじ  3kaku_s_L.png 詩集 kurayami
総もくじ  3kaku_s_L.png 交換詩・贈答物語 七色の海
もくじ  3kaku_s_L.png 潮騒の詩
総もくじ  3kaku_s_L.png 英雄のしつけかた
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編集 ちょっぴり異世界
総もくじ  3kaku_s_L.png ミルキィ☆ロール
総もくじ  3kaku_s_L.png 喫茶ペロリストシリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【第101話 英雄のしつけかた 4】へ
  • 【第103話 英雄のしつけかた 6】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【第101話 英雄のしつけかた 4】へ
  • 【第103話 英雄のしつけかた 6】へ