「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第101話 英雄のしつけかた 4

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 ミレーヌは額に浮かんだ汗をぬぐった。
 久々にスッキリとした心持で、いい汗をかいたと思う。

 ふと横を見て、茫然としているオルランドに気がついた。
 何事にも動じない子だと思っていたのに、口を開けたまま表情がない。

「あら? どうかしましたの?」
 大丈夫? と心配そうにのぞかれて、オルランドは乾いた笑みで思わず後ずさった。

 恐ろしすぎる。
 このほのぼのとした雰囲気に惑わされてはいけない。
 ミレーヌに対する言動から双剣の使徒でも若い娘には甘いと勘違いしていたが、ガラルドへの攻撃は心底怖かった。怖いと実感したのは、生まれて初めてかもしれない。
 世界最強の英雄をコテンパンにやっつけるなど、ただものではない。

 当のガラルドは起きあがったものの、相当恐ろしかったらしく何やらしょげている。
 気持ちはわかると思いながら、オルランドは指先で地面にのの字を書いた。

 僕、これからどうなるんだろう?

 牢屋にはいったほうが、楽なんだけど。
 ミレーヌはオルランドの身元引受人になると、嬉しそうにしていた。
 冗談じゃないけれど、強烈な攻撃を見た直後であるし恐ろしくて反抗できない。

 厄介な者に手を出したと後悔するばかりだ。

 渓谷の先で声がして、遠くから警備団が事後処理にやってくるのが見えた。
 5人は目配せをしあって、何もない普通の顔を装った。
 ついさっき目の前で起こったことは、記憶の奥に封印すると決めた。
 とりあえず、すべてうまく片付きそうだといいほうに考える。

 コホンと小さく咳をして、デュランがそっと切り出した。
「彼らに引き継げば、そろって皆で帰れますよ」
 そうですわね、とミレーヌは額の汗をぬぐってうなずいた。

「ミレーヌ様、そこの面倒な人にオムレツでも作ると約束してくれませんかね?」
 こそっとデュランに耳打ちされて、フフフとミレーヌは笑った。
「もちろんですわ! 朝のお楽しみですもの」

 静々としょげている背中に歩み寄る。
 ガラルド様と優しい口調で呼びかけた。
「帰ったら大好きなオムレツをたくさん召し上がれ」

 大きな仕事の後ですし食べ放題ですわと確約したら、コロッとガラルドは機嫌を直した。
 そうか? なんて即座に立ち上がって笑っている。
 実に切り替えの早い男である。


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