「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第93話 これから本番 1

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三人そろって、砦のつり橋へと向かう。
「足元に気をつけて」
 そんな注意をするキサルの背中を、ミレーヌは足早に追った。

 魔物の死体などが至る所に残っていて、さすがにビクビクしてしまう。
 ミレーヌは知らず知らずのうちに、グッとフライパンを握りしめていた。
 やはり持ち慣れた物を手にしていると、心が落ち着いてくる。
 それでも、ヒュウッと風が耳元をすぎるたびに、ヒッと小さな声を上げた。

「人並みに恐いの?」
 不思議そうにオルランドに問いかけられた。
「当たり前ですわよ」
 ミレーヌは口をとがらせる。

 文句が続きそうな気配に、その辺に転がっている死体を指差した。
「あ、動いた」

 キャーッと叫び声をあげて、ミレーヌはオルランドに飛びついた。
 首輪のせいでよけ損ねて、ガッチリとホールドされてオルランドはあせった。
 ジタバタしてもなぜか腕を外せない。
 身長差から大きな胸に顔を押し付けられて、窒息しそうになる。

 死ぬと騒いだが、声がくぐもった。
 耳元でキャ~キャ~と甲高い悲鳴まで聞く羽目になって、からかうのはやめときゃよかったと非常に後悔した。

「遊んでいる時間はないんだけどね」
 笑いをふくんだキサルの声にやっと腕が離れて、プハッと大きく息をついた。
 危うく酸欠になって、別世界に足を踏み入れるところだった。

 ゼェゼェと息をついているオルランドの頭を、涙目になったミレーヌがコツンと軽く小突いた。
「もぅ、いたずらはよして下さいな」

 叩かれた頭を、恐ろしげに押さえる。
 そんな慣れ合いはごめんなのでよけるつもりが、オルランドの体は動かなかった。

 このお姉さん、非常にやばいぞ。

 変だ変だとずっと思っていたが、普通に見えても何かが違っている。
 つい、目が座ってしまった。
 古い血は身体能力以外にも出てくるのだ。
 妙な力がありそうだといまさら警戒を始めたが、探ってもまったくそんな力は感じない。
 こんなのことは初めてなので気持ち悪かった。

 本当にどうしようもない! なんてプンプンしているミレーヌを、上目遣いで見る。
「お姉さん、僕が動けないと困ると思わない? 気安く触らないでよ」
 そんなふうに毒づいたが、ミレーヌはキョトンとする。
「あら、キサルがいますもの」

 オルランドは黙った。
 確かにそうだけど、逃げることもできないのは問題があると思うのだが。
 からかわれている訳ではなく、本気なのが怖い。

 キサルは「お任せを」なんて大笑いしている。
 二人とも会話が通じない相手だと感じて、オルランドはおとなしくついて歩いた。



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~ Comment ~

NoTitle 

ミレーヌVSガラルドはもぅすぐ目の前だねッ♪(≧∀≦)

楽しみだわ~ぁ♪

Re: NoTitle 

楽しみにしてくれてありがとう(*^▽^*)♪
ガラルド+熊さんズと合流したら、ミレーヌ様劇場にww
明るくてタフなミレーヌ様は私の憧れです///
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