「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第88話 大したものだと言いたくなる 4

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「キサル、来てくださったのね! あの、その子は悪い子じゃありませんのよ? いい見本が周りに一つもなかっただけですの。本当よ?」
「魔鳥に囲まれても戻ってきてくれたし、いじめないでね」と、笑顔でお願いする。
 誰が現在の状態を招いたのか、ミレーヌはコロッと忘れているようだった。
「あの、小さな子供ですから、殺さないでくださいね」

 上目使いにお願いされ、ハイハイとキサルは愛想よくうなずいた。
 一三歳がほんの子供とは、ミレーヌ様はやっぱり大物だと思う。
 死神は大人と子供の微妙な年齢で、サイズはやせて小ぶりでも大人と変わらない。
 死神がヴィゼラル帝国やスカルロードで花街に普通に出入りしている話もキサルは知っていたが、カナルディア国育ちの娘では思いつかないらしいと想像するばかりだ。

 オルランドが戻ってきたのも、どうせ自分の罪を軽くするためだ。
 他に理由はない。
 あんまりわかりやすい行動だったから、オルランドの頭を小さく小突いた。

 が、言葉には出さなかった。
 悪知恵の働く素行がなっていない子でもミレーヌが懐くぐらいだから、根っからの悪人とは言い切れないのだろう。
 それだけに性質が悪いのだが、利用する方法もあるし、ここでは黙っておく。
「そうですか。本当はいい子なんですね~それなら立派に育つように、しつけが必要だ」
 ウンウンとうなずいて適当に話を合わせた。

「とにかく無事で何より。しばらくこの子を預かってもらえますかね?」
「もちろんですわ。オルランドがいれば、怖くありませんもの。優しい子でしてよ? でも、いい見本が目の前になければ、ガラルド様のような困った大人になってしまいそうですの」
「確かに! 困った大人が増えるのは勘弁だ」

 アッハッハッとキサルは笑う。
 のんきなようでも鋭いところを突いてくるのがおかしかった。
 ほったらかしておけば死神は、ガラルドよりも他人に迷惑をかける大人になることは間違いない。

 オルランドの首輪は犬の散歩綱のように細い紐がついていた。
 紐の先に手首に巻く止め具があった。
 ミレーヌは左手首に止め具をつけてもらう。
 革製で細かい文様があり、オシャレな腕輪みたいと素直に喜んだ。

 身体の上からキサルがどけたので、オルランドは地面に胡坐をかいて座った。
 グイグイと首輪を引っ張った。
 皮に見えても継ぎ目すらない魔法がかかった品で、異形をつなぐ特注品だった。
 魔物や精霊だって自力での解放は不可能だ。

 僕は人間だぞと心の中でぼやく。

 逃げるならミレーヌを担いで遁走することになるが、一生つながったままなのはゴメンだった。

 本格的に肩を落とした。
 これでは首輪から解き放たれるまで、ずっとミレーヌの犬でお散歩状態である。
 思い切り非戦闘員の飼い主と繋がっているから、この不自由な状態でも自分が善処するしかない。

 マジかよ。
 襲われたらお姉さんを担いだまま、戦わなくちゃいけないじゃないか。
 汚い真似しやがって。

 オルランドが口の中でブツブツとつぶやいている間も、キサルとミレーヌは日常のほのぼのした調子で会話をつづけていた。


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~ Comment ~

 

今日は朝からずっと家族サービスで、やっと今お布団に入って
愛しのミレーヌ様に会いにこられたゎ♪

Re: タイトルなし 

お疲れ様( ^^) _旦~~

と、とうとうミレーヌ様の出陣準備が始まります(笑)
最大の敵はやっぱり……って、いいのかなぁ~こんなお話なんだけど;;
笑って~この先は笑ってもらえればそれで本望ですww
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