「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第84話 絶体絶命ってこんな感じ・・・・・・? 3

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 おや、食いついてきた。
 ラクシは不思議な感慨を抱いた。
 ずっとこちらの隙を伺うばかりのはしっこいガキに見えていたのに、教えを請う生徒のような顔になっている。
 隠していても聡明なのだとその眼差しに思う。

「神官交代の奉納戯曲にしか出てこない、陽月の神と冥暗の神を繋ぐ使者さ。現世にはフクロウの姿で現れ、神と人も繋ぎ、この世の理を守る。生も死も、正義も悪も、彼次第だろうよ」
 数年どころか数十年に一度ぐらいしか催されない神殿内部だけの戯曲だし、神話に出てくる記述もほんの少しだけだ。
 逆に、オルランドの名前や姿を知っているなら信仰深い勉強家の証になるほどだ。
 そんなふうに説明されたものだから。

 さすがにオルランドも絶句してしまった。

 本当に意味合いが大仰だった。
 考え方を変えれば、死神より性質が悪い。
 弟みたいと両手を叩いて喜ぶような、気軽な名前の類では絶対になかった。

「……もう、なんでそんな名前にするかなぁ」
 オルランドはチラッと外を見た。
 ミレーヌはギャーギャーと叫びながら、オルランド! と、こりもせず連呼して助けを求めている。
 中庭に入った黒熊隊の双剣持ちも見えているはずなのに、他の名前は一度も呼んでいない。

 本当に困ったお姉さんだとあきれるしかない。
 どう動くか、ひどく迷ってしまった。

「どうする? この先は通行止めだ」

 ラクシにニヤッと笑われて、オルランドもニコッと笑い返した。
 本当に進めそうにない。

「行きたいな、僕は」
「越えてみるか? 俺を」

 同時に動いた。
 地を蹴ってまっすぐ向かってきたラクシに、剣豪の技の見よう見まねで双剣流の風の刃を出した。
 そのままオルランドは、窓の外へと身を躍らせる。

 ラクシは簡単にその真空の刃をはじいたが、オルランドを斬り殺す気はなかったのか、奥義技をかけなかった。

 小さな鉤のついたロープを屋根に引っ掛けて、オルランドは上空へ身体を引きあげる。
 それと同時に、オルランドは腰から出した携帯食の包みを解き窓へと投げいれた。
 匂いにつられて、魔鳥が食べ物を追って窓へと入るのと入れ違いに、屋根の上に跳んだ。

 少しはラクシの足止めになるだろう。
 逃げられないなら、次を考えるしかない。

 手間はかかっても安全を確保する方法は一つ。
 自分のことを可愛い子供だと勘違いをしている、のんきなミレーヌが役に立ってくれる。
 彼女に「死神からは危害はくわえられなかった」と証言をしてもらえばいいのだ。

 そんなことを考えながら。
 風のように屋根の上を駆け抜けた。


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~ Comment ~

NoTitle 

ほぉぉぉ・・。
確かに凄いお人の名前だ。
でも不思議とぴったりのような気がする。(笑)
「チッ、まったくやってらんねぇぜぇ・・」なんてぼやきながらも
「ハァ・・しょうがねぇなぁ・・」なんて言いながら
結局自分の使命を果たすような。
そんな、不完全で完璧な使者・・。

もはや自分で言ってて意味がわからなくなってきたけど気にしないww

そろそろミレーユの出番かしら♪

NoTitle 

「オルランド」という名前自体は重いはずなのに、扱いが軽っww
さすがミレーヌ様です(笑)
まさかのラクシ登場回。
やっぱり伝説持ちは一味違いますね。ガラルドと並ぶと、そんなに強くないのかなぁとか思っちゃうけど、やっぱりこの人たち只者じゃない。
デュランにしてもラクシにしても、苦労している姿を見ていたせいか強いってことを忘れちゃうんですよね(笑)
続き、楽しみにしてます♪

Re: NoTitle 

こんにちは(^o^)丿

やっとミレーヌ様の出番です(笑)
オルランドも頑張ります(笑)
この二人の掛け合い、凸凹ぶりがかなり気に入ってます♪

Re: NoTitle 

デジャブさん、こんにちは(^o^)丿

ミレーヌ様はどこまでいってもミレーヌ様ですね(笑)

兄貴たちも強い人たちなのですが、ガラルドさんがあまりにアレなので、ただの苦労性にしか見えないという(苦笑)
あんまり書き込めなかったけど、一人いれば騎士団の出番がないぐらい強いんです~ここからは伏線の回収に入ります☆
最後まで楽しんでくださいね♪


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